Q.はじめからスタートしますか?A.Yesだ…!
「はぁ~~……疲れた」
私の名は藤原玲香、ごくごく普通の独身女性会社員だ。ちなみに今年で27だ。……彼氏いない歴=年齢でもある。
まあまあの大学に行き、決して大手とは言えないそこそこの会社に就職し、両親のことを自分より要領のいい一つ上の兄に任せて気ままに一人暮らししている。
あと別にモテない訳じゃない、男にモテないだけだ。……もう一度言おう男にモテないだけだ。
身長も170はあるし顔も…自分で言うのもなんだがクール系でカッコイイ、と思う。多分。
多分それが原因だろ、というツッコミは置いておく。
そんなことを帰宅途中に考えている私はもう手遅れなのかもしれない。
今日も書類を黙々と処理して、なぜか自分のデスクに置かれていた後輩の分の書類も処理して……気が付けば夜も遅くなっていた。…まあ自称連勤術師の先輩よかましか…
両脇には仕事終わりの大人たちが居酒屋に入っていく様子が見える。そういえば私の記憶が正しければもうすぐ給料日だった気がする、少し気が楽になってきたなぁ。
そんなことを考えながら横断歩道を渡ろうとした時
遠くからタイヤのこすれる特有の高い音が聞こえた。
音の方向を見ると明らかに制御を失っている自動車が突っ込んで来ている。
突っ込む先には前を歩いていた杖を突いた若い女性…
若い女性?
「危ないっ!!」
考える間もなく、気が付けば私はその女性を突き飛ばしていた。
時間がまるでスローモーションのように流れ、すぐ右には突っ込んで来たあの車
これが最期か……
はぁ……くそったれが
鉄の塊がコンクリートに衝突した衝撃音が辺りに響く。
人が集まってくるのがぼんやりとだが見える。不思議と痛みはあまりなかった。
私が突き飛ばした女性に人が駆け寄っている。そっか…無事で……良かった…
あぁ…両親は…悲しんでくれるかな…こんなことになるなら……もっと親孝行しておけば良かったなぁ。
昔っから全部押し付けて…兄ぃには…悪いことしたなぁ……
もっと…もっと色んなこと…したかったなぁ。
やっぱり…死にたく…な…い
《リトライ中……リトライ出来ません。もう一度リトライ申請を行いますか?》
はは…幻聴まで…聞こえてきちゃったや…
《リトライ申請を取り消しました。はじめからスタートしますか?》
はじめ…から…?
《はじめからスタートを選択すると、二度とこのデータから再開出来ません。それでもよろしいですか?》
なんだよ…それ、そんなの…
「Yes…だ!」
ぐちゃぐちゃになった喉で最後の力を振り絞り、そう呟いた。
《了解しました。はじめからスタートします》
その瞬間にとうとう私は意識を手放した。




