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川の流れのように  作者: 田宮 謙二


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俺は世間知らず、だから旅に出た


『なるほど、三十五年間ろくに働かず就活もせず国の規制で家を出ていく事になったと...。それで今後も働いて生活していくくらいなら、無職のまま旅人として放浪して生きていく方がマシだと...。つまり、自由こそが正義だと...』。


「そういう事っす」。


自信満々にそう答えたカンジを見てアージェは呆れた様子で小さくため息をついた。


『あの、スライムの俺が言うのもなんですけど...』。


「うん」。


『アンタ、色々と終わってますね』。


アージェがそう言うも、カンジは気にもしていない様子で首を横に振った。


「終わりじゃない、冒険の始まりだ」。


カンジが自信満々にそう答えると、アージェは呆れた様子で小さくため息をついた。


『それで、カンジさんはこれからどうするんですか? 』。


「とりあえず、ザッツ町に向かって教会に食い物とかねだって...そっからは宿屋で部屋借りて色々考える」。


カンジがそう言うとアージェは再び呆れた様子でため息をついた。


『初手から物乞いですか...。何かツテとかはないんですか? 』。


「え? 」。


『いや、え?...じゃなくて。ほら、その町に知り合いとか友人とか親戚とか...』。


「いや、いないですよ。なんだったら友達一人もいないし」。


『...え?? 』。


アージェはカンジの言葉に驚愕した。


「さっき自分が無職でずっと引きこもりだっていったじゃないですか。そんな人間に人脈なんてありませんよ」。


『い、いや...。学生時代の友達とか...』。


「同級生とかはもう普通に働いて結婚して家庭持ってるんじゃないですか? よく分からないっすけど...」。


『よ、よく分からない? 』。


「『アンタの同級生結婚したらしいよ』とか、『隣町に引っ越したらしい』とかは親からちょいちょいは聞いてましたけど...俺はあんまし興味ないし。同級生の名前なんかも忘れちゃったし、連絡先も当然知らないし」。


『えぇ...』。


「学校とかに通ってる時も、自分は話しかけるタイプじゃないんで友達らしい友達なんていなかったんですよ。休み時間とか一人で机に顔突っ伏して寝てる奴みたいな。それに部活動もやりたくなかったんで、授業終わったらさっさと帰るみたいな。あ、仮病使ってよく早退とかもしてたな」。


『は、はぁ...』。


「この歳になってこのままあの町で暮らしてもお先真っ暗だし、父親の家業なんて継ぎたくないし」。


『お父さんは何されてるんですか? 』。


「司法書士」。


『え、立派な職業じゃないですか』。


「周りから見ればね、でも俺はその資格持ってないし勉強したくないし...。親父の仕事手伝ってた時期はあったけど、その仕事を続けながらあの町で一生暮らしたくないなって思ったから出ていったのさ。これからは誰にも縛られず、旅人として一生を過ごしていくのさっ! 」。


カンジは力強くそう言うと、アージェに向けて自信満々に親指を立てた。


(...なんか反抗期迎えてる学生が家出してるみたいなノリだな)。


アージェは呆れ果てた様子でカンジを見ながらそう思っていた。



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