チンピラのたまり場
『さっきの人怖かったですね~』。
アージェはリュックから顔を出して歩いているカンジに話しかけてきた。
「あんなおっかない神官なんて考えられないな~。いや、もしかしたら教会のお手伝いさんとかかな? あ、ここだ」。
カンジは教会からしばらく歩いた建物の前に立っていた。
その建物の屋根には『酒場』と書かれた看板が設置されていた。
「ここがあのオバさんが言ってた酒場か。とりあえず、中に入ってみよう」。
カンジは酒場に入ると、多人数の屈強そうな男達が食事をしたり談笑したりしていた。
みんな剣や鈍器、いかにも武闘派といったようなガラの悪い容姿にカンジは顔を引きつらせた。
(うわ、初めて酒場に入ったけどなんだこりゃ...。まるでチンピラのたまり場じゃないか...)。
そんなカンジに両耳に複数のピアスを着けた一人の大柄なスキンヘッドの男が近づいてきた。
「いらっしゃい、何名? 」。
男に話しかけられたカンジは我に返り、慌ただしく話し始めた。
「あ、あのっ! 教会の方にここへ行くようにって言われたんですけどっ! 」。
カンジがそう言うと、男は察したように小さく頷いた。
「あ~、ベスター神官からは聞いてるよ。しかし...」。
眼つきの鋭い男は茶色いコートを羽織ったカンジの身体をまじまじと見つめた。
「フィジカルは強くなさそうだな、魔法とかは使えるのかい? 」。
「い、いえ」。
「じゃあ、剣術とか武術とかは? 」。
「いえ、使えないです」。
「...じゃあ、遊び人かなんかか? 」。
「え~と、まぁそんな感じです」。
カンジがそう答えると、男は小さくため息をついた。
「またあの人は厄介な事を押し付けてきやがるな...。アンタ、旅を始めたもの最近なんだろ? 」。
「はい、てか今日始めました」。
「悪い事は言わねえ、絶対死ぬから自分の町へ帰れ。今まで依頼やらグループ組ませたり流れてきた奴のサポートしてきたが、お前みたいな遊び人とか浮浪者が生きていけるほどこの町は甘くねぇ。いいか? この町にずっと留まりたいんだったら、魔物や襲撃してくる山賊に対抗できる能力のある奴じゃねぇと仕事がもらえねぇんだよ。アンタ、魔獣との戦った経験もねぇだろ? 」。
「...はい」。
カンジは自信の無い様子で男に答えた。
「それじゃ、無駄死にするよりか故郷に帰った方が良いと思うけどね。まぁ、おたくの人生だから俺は関係ないけどさ。え~と...」。
男はそう言いながら自身に着けた腕時計を眺めた。
「今は昼だからパーティー募集してる奴がいないけど、もし旅を続けるんなら夜にまたここへ来い。考えが変わったら、明るいうちに帰るんだな。まだ魔獣もそんなに活動してないし」。
「...」。
男にそう言われたカンジは、うつむき気味で黙り込んだ。




