第一章・第三節 じいじ、練習でまた爆発
孫の手ほどきで練習を始める重蔵。走れば壁に激突、ジャンプで土下座、銃を撃てば味方に誤射――。失敗続きでも、孫との笑顔が何よりのご褒美だ。
「じいじ、まずは“走る”の練習だよ!」
美羽が隣でコントローラーを握り、キャラクターを軽やかに走らせてみせる。
重蔵も真似をしてスティックを倒す――が。
「おお……速い! わし、こんなに足速かったかのう!」
「じいじの足じゃなくてキャラだから!」
そのまま勢い余って壁に突進。
ガンッ、と派手な音が響き、キャラクターが鼻をぶつけるように停止した。
「わしの頭が痛い気がするんじゃが……」
「気のせいだよ!」
次はジャンプ。
「ここで“×”押して!」
「おう、任せとけ!」
――ポチッ。
キャラクターは跳ぶどころか、しゃがんで床を這い始めた。
「……じいじ、なんでジャンプで土下座してるの?」
「う、うむ……ゾンビに情けをかけておるのかもしれん……」
笑いすぎて肩を震わせる美羽を横目に、重蔵は真剣な顔で次の課題へ。
今度は銃を撃つ練習だ。
「照準を合わせて、このボタンを押すんだよ!」
「なるほど、わかった!」
ズドンッ!
……弾丸はゾンビをかすめ、後ろにいた味方NPCの背中に命中。
画面に冷酷なメッセージが表示される。
《仲間を誤射しました》
「じ、じいじ……まだ一発も敵に当たってないのに……」
「わ、わしも驚いとる……!」
何度目かの誤爆のあと、二人は同時に大笑いした。
重蔵は涙を拭いながら、胸の奥がほんのり熱くなるのを感じていた。
――こんな時間が、ずっと続けばいい。
孫の笑顔に囲まれる日々が、妻のいない寂しさを埋めてくれる。
「よし、美羽! わし、もっと強くなってみせるぞ!」
「うん! じいじなら絶対できる!」
ポンコツ老兵の練習は続く。
失敗しても、爆発しても、二人で笑える限り――。
爆発しても、誤射しても、笑い合える時間がある。孫との絆を胸に、老兵はさらに前へ。次回、思わぬきっかけで世界が彼に気づき始める――。




