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最終戦線の老兵 ―JZ-65伝説―  作者: ちょいシン


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第一章・第二節 じいじ、爆誕

孫の誘いでついにゲームを始める重蔵。だが最新機器に慣れぬ手は暴走し、狙い撃つは味方、拾えば爆発。伝説のポンコツじいじが誕生する瞬間――。

 リビングに据え置かれた最新型ゲーム機。

 重蔵にとって、それはまるで宇宙船の操縦桿だった。


「じいじ、まずはここ押して!」

 美羽がリモコンを操作し、画面にタイトルロゴが現れる。

 赤黒い文字――『ゾンビ・オブ・パニック:最終戦線』。

 重蔵はごくりと唾をのんだ。


「うむ……なんだか物騒ないくさの予感がするのう」


 キャラクター作成画面で、名前入力が始まる。

 美羽が「じいじの名前どうする?」と尋ねると、重蔵は少し考えて、こう答えた。


「……じゃあ、“JZ-65”でどうじゃ」

「じぇーじーろくじゅうご?」

「重蔵、六十五歳じゃ。わかりやすかろう」


 その瞬間、ネットに伝説が誕生するとは、まだ誰も知らない。


 操作説明を受けるも、重蔵はすでに混乱していた。

「この“ジャンプ”と“しゃがむ”が逆なのはどういう了見じゃ?」

「逆じゃないよ! 慣れるんだよ!」

「わしの頭の中じゃ、上が△で下が×なんじゃ!」


 チュートリアルが始まる。

 敵はゆらゆらと歩くゾンビ一体――だが。


「とりゃあっ!」

 飛び出した重蔵は、銃を構えるはずが、なぜかボタンを連打。

 キャラクターが突如、味方NPCに向かってパンチを繰り出し始めた。


「じいじ! 敵はあっち! なんで仲間殴ってるの!」

「む、すまん! こやつ、ゾンビに見えてのう!」


 次の瞬間、画面に赤い文字が躍る。

《味方を攻撃しました》

《信頼度が下がりました》


「じ、じいじ……ゲームで友達減らすの初めて見た……」


 そして決定打。

 回復アイテムを拾った重蔵、説明を誤って読み――


「“使用する”じゃな? よし、押すぞ!」

 ――爆音。画面が真っ白になった。


《グレネードを自分に使用しました》

《GAME OVER》


 リビングは一瞬静まり返る。

 美羽が固唾をのんで祖父を見つめる。

 しかし次の瞬間、二人同時に吹き出した。


「じ、じいじ! なんで回復しようとして爆発するの!」

「わ、わからん……! わしにも何が起きたのか……!」


 笑いすぎて床に転げる孫を見て、重蔵の胸に温かいものが灯る。

 ――妻がいなくなってから、こんなに心から笑ったのはいつぶりだろう。


 孫の笑顔のためなら、多少の恥はどうでもいい。

 重蔵はそっと、コントローラーを握り直した。


「よし……もう一度やってみるかの」


 その背中に、ほんの少しだけ“老兵の誇り”がにじんでいた。

失敗続きでも、孫と笑い合う時間はかけがえのない宝物。老兵の新たな挑戦はまだ始まったばかり。次回、予期せぬ“バズ”が二人を待つ。

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