表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
最終戦線の老兵 ―JZ-65伝説―  作者: ちょいシン


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

17/37

第四章・第一節 開戦前夜

大会前夜――孫と仲間、そして亡き妻に誓うじいじ。

ちゃぶ台は今、静かな“戦場”へと変わろうとしていた。

 夜のちゃぶ台には、湯飲みとマウス、そしていつもの老眼鏡。

 窓の外は虫の声。

 重蔵はその音を聞きながら、画面に向かって深呼吸をした。


「いよいよ明日が本戦か……」

 つぶやきながら、盆栽の葉を軽く撫でる。

 長年の趣味であるその松は、妻・春子が大切にしていたものだ。


「見ておるか、春子。わし、明日は戦場に立つぞ」


 写真立てに微笑む妻の笑顔。

 その前に、娘の真理が静かにお茶を置く。


「お母さんも、きっと応援してるよ」

「うむ。あの人は昔から、わしが無茶すると笑ってた」

「今もきっと笑ってるね。“重蔵、またやってるわね”って」


 二人の笑い声が、優しく重なる。


 居間の奥では、美羽と翔、TACTが集まり、最終チェックをしていた。

「じいじ、マイク動作OK!」「ネット回線も安定してます!」

「作戦名“ちゃぶ台フォーメーション”、最終確認!」

「なぜちゃぶ台……?」TACTが苦笑する。

「だって、じいじの戦場はここだもん!」


 重蔵が笑ってうなずく。

「ふむ、ならばこの四畳半が、わしの要塞じゃな」


 TACTが腕を組む。

「JZさん、明日は緊張すると思います。でも――」

「でも?」

「緊張しても、声を出して。あの“ボイチャ談義”が、チームの武器っすから」

「声は武器、か……なるほど、口は災いの元にもなるが、福も呼ぶ」

「それです!」


 夜更け。

 皆が帰り、静けさが戻ると、重蔵はひとりヘッドセットを手に取った。

 ディスプレイには《大会公式サーバー:接続準備中》の文字。

 その青白い光が、彼のしわだらけの頬を優しく照らしていた。


 盆栽の松が、夜風に揺れる。

 まるで小さな戦友のように。


「明日は孫と仲間と、全力で笑う。それで十分じゃ」


 重蔵は、静かにパソコンの電源を落とした。

 その背中には、老兵の誇りと優しさが、確かに灯っていた。

老兵、明日より参戦す。

勝っても負けても、戦う理由はただ一つ――「誰かを笑顔にするため」。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ