第三章・第三節 地獄のチーム練習
チーム《じいじ’s Rage》、ついに実戦練習! だが、照準よりも哲学が深い!? 笑いと反射神経が交錯する回。
日曜の午前。ちゃぶ台の上にノートパソコン三台、そしてお茶とせんべい。
重蔵、美羽、翔、タクト――伝説(?)のチーム《じいじ’s Rage》が集結した。
「さて、今日からチーム練習を開始します!」
美羽が元気よく号令をかける。
重蔵はというと、マウスを両手で持ちながら神妙な面持ちでうなずいていた。
「じいじ、まずは“Wキー”で前進、“Sキー”で後ろ、“A・D”で横に動くの!」
「ふむ……“わし進む”の“W”、覚えたぞ」
「違うよじいじ! “わし”じゃなくて“ダブリュー”!!」
翔が吹き出す。
「じいじ、それ“わし進む”って読んでる時点で強キャラ感ある!」
「強キャラ……褒め言葉と受け取ってよいかの?」
その横で、タクトが真面目に解説を続ける。
「敵を狙う時は画面の真ん中に“照準レティクル”が出てます。それを敵に合わせて、左クリックで射撃」
「なるほど、これが“照準”か……」
「で、Shiftキーを長押しすると照準が絞られて、命中率が上がります」
「ふむ……シフトとは、つまり“変化”じゃな。人生にも必要じゃ」
「いや、哲学じゃなくて練習して!」翔のツッコミが飛ぶ。
重蔵はゆっくりとマウスを動かした。
レティクルがふらふらと宙を泳ぐ。
「これで敵を狙うのか……ふむ……よし!」
――パンッ!
次の瞬間、翔のキャラが宙を舞った。
「じいじーー! 味方撃ってるーー!!」
「おお!? わしが!? いや、誤射じゃ! たぶん風のせいじゃ!」
「屋内マップだから風関係ないよ!?」
重蔵は慌ててShiftキーを押しっぱなしにするが、
照準は小さくなりすぎて地面を凝視する形に。
「おお、これでは土の模様まで見える! 繊細じゃな!」
「じいじ、照準って土観察用じゃないの!」
美羽が笑い転げ、翔は倒れこむ。
だが、タクトは目を細めて呟いた。
「……じいじ、マウスの動き、悪くない」
「えっ?」翔が顔を上げる。
「たまに合ってる。敵が飛び出す方向に、自然と反応してるんだ」
「盆栽の枝が落ちる前に受け止めるのが得意でな」
「それ反射神経の出どころ!?」
ちゃぶ台の上に笑いと湯気が広がる。
けれど重蔵の瞳は、真剣そのものだった。
(わし、まだ……戦えるかもしれんのう)
モニターに映る戦場の光が、老兵の顔をやわらかく照らしていた。
照準はブレても、心はまっすぐ。孫と仲間に囲まれ、老兵の“第2の青春”が静かに動き始める。




