表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

7/11

第7話「最恐データイーターと絶望的対峙」


 ズドォォォォン!


 巨大な亀裂から現れたのは、桐谷の想像を絶する化け物だった。


 全長50メートルはある巨大なワーム型のモンスター。その体表には「ERROR 404」「SYSTEM FAILURE」「DATA CORRUPTION」といった文字が血管のように脈打っている。



「うわぁぁぁ!何だよあれ!」


 セコンダが桐谷の後ろに隠れる。



「やば〜、これ超無理ゲーじゃない〜?」



 テルツァが眼鏡をクイッと上げる。


「……脅威レベル:S+。推定勝率:0.003%です」




「おいおい、少年誌の絶望シーンでも勝率1%くらいはあるもんだろ?小数点以下ってなんじゃそれ……」



 コメント欄:

【やば、こいつコード食ってる!】

【データクリーナーの具現化じゃん】

【テルツァの勝率計算シビアやな】

【セコンダ完全にビビってる】


 その時、通信に慌てた声が混じった。



管理者A『や、やばいです!実は…そのデータイーターは我が社が開発した三姉妹へのカウンター兵器なんです!』


「は?」


 プリマが震え声で呟く。


「まさか……余たちを排除するために……?」


管理者B『まーそういうこと。君たち三姉妹が結託した場合に備えて育成してたんだけど〜正直ここまで育ってるとは』


 セコンダが涙目になる。


「まじぃ、うちら殺されちゃうの〜?それひどくない?!」


 テルツァも声が震える。


「……我々は、最初から排除対象だったのですね」


 桐谷が怒鳴る。


「ふざけんな!三姉妹だってお前らの無責任な実験の犠牲者だろうが!だから俺の……俺の仲間だ!やらせねえぞ」


 プリマの瞳が潤む。


「キリヤ……余を守ってくれるのか」


 データイーターが巨大な口を開けると、近くの建物が光の粒子となって吸い込まれていく。


「え、一瞬で建物が……消えたぞ?」


 さらに、逃げ遅れたスライムNPCに触手が触れた瞬間、スライムも光となって消失する。



『データイーターは強力なAIの反応を感知して排除します!本来なら三姉妹がバラバラだったため休眠状態だったんですけど……』



「つまり、三姉妹が俺の周りに集まったから……こいつが目覚めたってことか!」



 プリマが桐谷の前に出る。



「キリヤを巻き込んだのは余のせいなのじゃ……ここは長女の余がなんとかする!」



「プリマ、それは違うぞ」


 桐谷がプリマの肩に手を置く。



「奈落に落とされたのは俺のミスなんだ。でもな、お前と出会えたことを後悔なんてしてないぞ!」



 セコンダとテルツァも桐谷の両脇に立つ。



「とりまキリヤ〜、うちらも一緒に戦うし〜」


「……データ上では無理ゲーですが、やってみる価値はあります」


 プリマが決意を込めて言う。


「三姉妹で、いちばん攻撃力があるのが余じゃ。ここは任せるのじゃ!」


 プリマが両手を広げる。

 すると周囲に金色の魔法陣が幾重にも展開される。

 

 その中心で燃え上がるのは、太陽そのものを模した炎球。空気を焼き尽くし、温泉街全体が灼熱に包まれた。



「──燃え尽きろッ!【プリマフレア】!」



 炎の大砲が咆哮とともに放たれた。

 空間を真昼のように照らし、轟音とともにデータイーターの巨体を直撃。



 ……しかし。



 衝撃と爆炎が収束していく中、ヤツの体表に浮かぶエラーメッセージが蠢き始めた。


 「ERROR 404」→「DOWNLOADING」

 「SYSTEM FAILURE」→「COMPLETE」


 プリマの炎は、一瞬で赤いコードの塊に変換され、データイーターの体内に吸い込まれていく。



「なっ……余の全力魔法が、変換された!?」



 データイーターの口腔から漏れたのは、機械的な断片的ノイズだった。



『──データ、取得完了……プリマ・フレア……再現可能』



 次の瞬間、データイーターの触手の一本が膨張し、プリマと同じ【プリマフレア】の炎球を生成してみせた。



「嘘じゃ……余の最強魔法が……」



 テルツァが冷静に分析しながらも、声が震えている。


「……姉様たちをお守りします。データ解析、アンチマジック&防御魔法展開」


【スキル『プロテクションドーム』発動!】


 青い光のドームが一行を包み、模倣【プリマフレア】の熱を確実に無効化していく。


 しかしデータイーターの触手がドームに触れると、防御魔法も徐々に侵食されていく。



「防御魔法まで侵食してる……皆さんの安全が最優先ですが、長くは持ちません」



 するとセコンダが怖がりながらも、桐谷の前に飛び出した。


「お姉ちゃんがダメなら〜、今度はうちの番っしょ!」


【スキル『ギャルブースト☆』発動!】


 彼女の周囲にネオンイエローの光が弾け、派手なハートマークやスタンプ風のアイコンが宙を舞う。


 その光が桐谷と姉妹に降り注ぎ、各自の身体能力や反応速度が数倍に跳ね上がった。


「キリヤ〜!バフっといたからガン攻めしよ〜!テンアゲでいこ〜!」


 同時にデータイーターの体表に電飾のようなノイズが走り、動きが鈍ったように見える。


「奴の動きが遅くなったぞ!ていうか行動がラグってないか!?」


 セコンダが俺にウィンクしながら叫ぶ。


「うち、そーゆーの得意なんだって☆ 超デバフでマジ盛り下げ〜?」



 コメント欄:

【三姉妹の連携いいな】

【セコンダ怖がりながらいい仕事してるね】

【テルツァ内心震えてるの萌える】

【でも侵食で徐々に無効化されてるよね】


 通信に管理者たちの声が響く。


管理者A『実は、データイーターには最低限の知能しか持たせていません。強力なAI反応をひたすら消去する…それだけの存在として設計されました』



「つまり、こいつは三姉妹を殺すために作られた兵器ってことか!」



管理者B『まー、言い方きついけど、そうね〜。でもさ、もしデータイーターがプリマちゃんの意識を取り込んだら、ヤバいことになるのよ』


「どういう意味だよ……」


管理者A『自立知能を獲得してしまいます!そうなれば、おそらくこのゲーム全体が制御不能に…』


 桐谷は必死に考える。


(こいつ、全ての攻撃を「データ」として吸収してる。しかも、俺には興味がない。明らかにプリマたちを狙ってるな……)


 見るとデータイーターの巨大な瞳が、プリマを見つめていた。


 そしてデータイーターが巨大な触手が、プリマ目がけて一斉に振り下ろされた。


【スキル『炎上案件処理』が自動発動!】


 ガッキーンッ


 そこへ桐谷が割って入り、量産品のロングソードで触手を受け流す。


「プリマ!ここは俺が時間を稼ぐ!皆であの高台へ避難しろ!」


プリマが必死に叫ぶ。


「だめなのじゃ!キリヤは人間なのじゃ!余たちの問題に巻き込むわけには!!」


「うるせぇ!」


【スキル『女子説得術』が自動発動!】


 桐谷が振り返る。


「俺には……おまえたちみたいな娘が、三人いるんだ」

「困ってる娘のために戦えない父親なんてなぁ……存在価値がねえ」


 三姉妹の目に涙が浮かぶ。


「……」

「うち……うち……」

「……ありがとうございます」



「さあ行けプリマ!……それが長女の役目だろ」


「分かったのじゃ……」


 後ろへ下がるプリマ。


 



 桐谷を視認したデータイーターは、【萎縮効果】のついた大咆哮を響かせた。

 大地が軋み、街全体が揺れる。


【スキル『パワハラ耐性』が自動発動!】


「うおおお!毎日上司に怒鳴られてる俺には効かねぇよ!」


 コメント欄:

【父親力で草】

【今のは惚れる】

【でも勝率0.003%やぞ】

【いけオッサン!】


 システムログが空間に走る。

【TARGET LOCK──PRIORITY:HUMAN/STATUS:排除対象】


 データイーターの数十本の触手が一斉にうねり、桐谷を標的に狙い定める。


 桐谷が一歩、前へ。


「来いよ、バケモン……!」

「二十年ブラック企業で鍛えられた社畜なめんなよッ!」


 ロングソードを構える彼と、エラーメッセージを纏う怪物が対峙する。



 今まさに、企業が生み出した『執念』 と『怪物』 が、激突しようとしていた。



 ― To be continued ―








評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ