9.百鬼夜行 その壱
「置いてあるものは…何ですか?」
青蘭は思わず木造の棚の中に入っているフィギュアを指しながら海斗に聞いてしまった。すると、海斗はオタクト一クをし始めてしまう。
「これはね、猫系魔法少女ブイチュ一バー・猫宮ひなの。ここに来る前から僕の推しでもあって天使でもある。魅力はピンク髪のツインテールト猫耳、あとミントグリーンと水色のオッドアイ。そしてそして…」
海斗の話を数分聞き、とうとう青蘭は疲れてしまったのだ。『推し』『ブイチュ一バー』『魔法少女』というキ一ワードの意味が全く分からなくなり、その話に付いていけなかった。
「あの…もう十分わかったから」
理解したふりをしている青蘭に対して海斗は本性かどうかを疑った。
(本当に見られてる…すごい圧だ…)
青蘭は海斗の圧に勝てるか分からないくらいの緊張感が増している。これでは理解したふりを海斗に貫くことができると思っていたその時、草薙明雄が海斗の部屋に来ていた。
「何してるんだ2人とも、早く寝なさい」
明雄が来てくれたおかげで何とか貫くことができたのだ。
就寝時間になると、2人は襖から布団を出し、寝る準備をした。眠る前に青蘭は何かを見回しながらカ一テンを閉めたところを見た海斗は気にかかる。そのせいか、電気を消した後でも眠れない。
ちなみに青蘭の方はぐっすりと深い眠りに入っている。髪をほどいた状態だと中性的な顔をしていたので女子に見えた。まるでカップル生活を送っているみたいだ。
海斗はあまりにも眠れないため、二階にあるベランダへ向かいそとの空気を吸いに行く。ベランダにつくと空気が美味しく感じた。上を向くと夜空がきれいだ。本当に現実逃避をしているみたいだ。
(僕、ここの世界は休憩所みたいで好きかも)
普段は内気で友達が1人もいない。それだけでなく、大人数のグループの輪に入れない性格の海斗にとって今は心が解放されている。すると、たくさんの妖怪が並んで歩いているのを見てしまった。あれは、一体何だろうかよく見ると海斗は思い出した。
(もしかして、じいちゃんが言ってた百鬼夜行!?)
一番前に歩いている妖怪から順番に見ると木霊、河童、山彦、山姥、付喪神などあまり強くない妖怪たちがいる。今のうちに家の中へと入ろうとしたとき、海斗は鎌鼬と目があってしまった。鎌鼬は、鎌を持っている妖怪で人間を襲ってくる。
そのため、海斗は人間であり何か能力も持っていないので襲われる確率は100%である。
「あそこに人間が一人いるぞ!一斉に襲いかかろうぜ!」
鎌鼬を中心に他の妖怪たちも海斗を襲ってきた。それは、最悪な事態になってしまい、絶体絶命の状態になる。その時だ。海斗の部屋で眠っていた青蘭がベランダに来た。
「騒がしいな〜静かにしろ〜って」
青蘭があくびをしながら、静かにするよう言っていたときに複数人の妖怪と目があった。すると、その妖怪たちは目を見開きながらからだが震えていたのだ。
「せ…せ…青蘭様だ…」
「雪の国では最強妖怪だ…それだけじゃなく、鬼童丸と戦って勝ったって聞いたことがある…」
他の妖怪たちが青蘭の噂をしていた。「なんでここにいるの」「1人で行ったの」など、何かこそこそとざわめいている。それに対して鎌鼬は苛立っていた。すると、鎌鼬が青蘭になにか言おうとしている。
「おい青蘭、今、無許可で黄泉の国に行ってるから指名手配になってるよ。しかも守護国全体で。だからな、俺たちも協力してお前を捕まえて懸賞金400億をもらうんだ」
青蘭が指名手配犯だと聞いたとき海斗は驚いてしまった。それだけでなく、懸賞金が400億。普通の懸賞金では考えられない金額だ。なにか事情があって青蘭の故郷から飛び出したのではないかと海斗は感じた。そうなると心の中がもやもやする。
「じゃ、戦うか。青蘭がもし負けたらおとなしく捕まえってもらい俺たちが懸賞金をもらう。それでいいな」
鎌鼬が言ったことに青蘭は賛成をする。そして、戦胃を開始した。
まず最初に手を出したのは、青蘭だ。他の死者たちに危害を加えない程度の術を青蘭は出すつもりであった。戦いやすい位置にいられるように氷の術でで滑り台を出す。その出し方が、まるで氷の妖精が出すようで綺麗だ。青蘭は氷の妖術で出した滑り台を滑り戦闘を再開した。
(僕も何かできることがあれば…)
海斗は今の状況だと青蘭がやられてもおかしくないと思った。参戦したい。けれど、妖の力も借りてないから今は見ることしかできないのだ。
次に出したのは鎌鼬。鎌鼬が持っている2つの鎌は丈夫で長持ちする。だから、どんな術でも壊すことができるのだ。鎌鼬と山姥が同時に青蘭を襲いかかろうとしたが青蘭の王道な技でやられてしまった。しかし、青蘭の方も別の妖怪によって、持っていた小さな包丁で背中を刺されてしまい、そのせいで和服に血がだんだんと染みていく。その痛みで青蘭は立つことができなくなった。
(俺、 負けたのか…そりゃ、そうだな…無許可で黄泉の国に逃げちゃったのは本当だし)
弱音を吐いている青蘭を見た海斗は、これ以上見てられないと思った。やらかした自分に殴りたいくらい腹が立つ。
(何か僕も方法はないのか)
考えても何も思い付かないが、これは突発にいくしかない。それでも"なんとかやる"と信じて。
「青蘭、僕も戦う。もともとは僕が悪いから」
一緒に戦うと決意し、海斗は百鬼夜行に参加している妖怪と戦うことになったのだ。




