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妖の追凶〜time of hell〜  作者: 羽波紫希
守護国覇王戦・冷気の怪物編
83/83

81.新幹線襲撃事件

海斗が黄泉の国へ連れていかれる約二年前の2023年。


(京都で歴史的な建物を見たし、お菓子も美味しかったし最高の気分だった)


新幹線の中で一人で座っている"麗羅(れいら)"という少女は景色を見ながら満足していた。京都での旅行からの帰りだ。黒髪で少し高めの一つ結びに結んでいる。前髪も重めのぱっつん。真っ赤なコートを着ていた。


(景色が最高。富士山だ)


この頃は秋だ。そのおかげで外に出たときには涼しく感じる。景色は富士山が見えた。


(ん?あの人たちは誰だ?)


麗羅が座っていた座席の右斜めにいたのは二人の男。日本人二人だ。一人目は普通の黒髪の男性。二人目は金髪で二重の男性だ。二人とも40代くらいの男だった。


「どうしますか~?あの子、カワイイと思いませんか?」


金髪の男性がアメリカ人の日本語の話し方で言っていた。


「確かにな。一人だけならナンパしても大丈夫だろう。だってこの席、俺たちとあの可愛い女しかいないじゃん。だったら人質にしてもいいんじゃね」


あの可愛い女は麗羅だろう。二人の男は人質を取るつもりだ。ひそひそと静かに話している声が聞こえた。


(そういうことね。なるほど)


麗羅はなんとなく二人の男の目的を分かってしまった。すると、その男たちは麗羅が座っている座席のところへと来た。


「おい、そこのお嬢さん。手を上げろ、さもないと殺すぞ」


一人目の男がボールペンを麗羅の首に刺そうとしている。先端は針だ。黒インクはない。だとするとボールペンではなく、針で刺す武器なのかもしれない。


(あ、そういうことか。この男たちは私を人質にするつもりか)


麗羅は仕方なく手を上げた。すると、「ちょっとたんま」と言う。


「私、ちょっとトイレに行ってくる。今、私とあなたたち以外誰もいないでしょ。だからそこで化粧を整え直してくる。スーツケースの中に入ってるから」


そういうと麗羅はスーツケース置き場からスーツケースを取り出した。そこから化粧品を取り出そうとしたそのときだ。


(ん?何だあれは)


二人目の男が見ていたのは本物の十字架だ。それと新約聖書だ。


麗羅(こいつ)は本当にキリスト教の信者だ)


二人目の男は自称アメリカ人。本当は日本人だ。


「ねえ君さ、本当にアメリカ人でいるあなたは本当は英語を話せるの?」


その事に対して、二人目の男はどう言い返せばいいか分からなくなった。そのせいか汗をかいている。


「ちなみに聞くけど、あなたの本当の名前は?」

「本当は…」


麗羅は二人目の男の目をじっと見る。


「本当は…」

「本当は?」


鋭い目付きで二人目の男に聞く。


「本当は庄次伸生(しょうじのぶお)です」


二人目の男が正直に本名を言い出した。


「なるほど、以外と大したことがない名前ね。確かに見た目がおぢな君にはぴったりだね」


"おぢ"という言葉に一人目の男があることを思い出す。


(もしかして…この女は地雷系か!?)


伸生は麗羅のことを普通の人ではないと確信した。地雷少女の格好はしていないが、地雷少女が使いそうな語句で分かった。


(この女がトイレに行こうとしたときに刺せば)


麗羅がトイレに行こうとした瞬間に一人目の男が持っているボールペンを麗羅の首に刺そうとしたときだった。


(これで完璧だ)


と、そのときだ。麗羅が一人目の男が履いていた黒のスニーカーを思いっきり踏む。それが骨折するような痛みなので悲鳴を上げた。


「いって〜!!」


そのせいか一人目の男はボールペンを落としてしまった。


「君、本当の名は?」

「本当は…本澤宏(もとさわひろし)です」

「やっぱおぢじゃん。二人ともやっぱり大したことないんだね」


すると、「てめぇ」という伸生の罵声を浴びた。


「よくも親友を!その綺麗な顔をぐちゃぐちゃにしてやる!」


宏が後ろから殴ろうとしたとき、麗羅はさっと座席から降りてしゃがんだ。


「あっぶな~。おぢ2人めっちゃ強いじゃん。すご~い!私だったらこんなのはできないよ」


麗羅は二人を見下すような言い方で褒めた。だが、二人は頭に血が上り始めていた。


「ほぉ~。お嬢さんは俺たちのことを強そうだと思ってるんだ。今しゃがんでるうちに俺たちが後始末を打つとするか」

「さっすが!伸生、いいアイデアだな。やっぱりキリスト教の信者であっても戦闘力がなきゃ意味がないんすよ」


二人は冷笑を浮かべながらズボンのポケットからナイフを取りだした。麗羅のことを女子と見ている。すると、麗羅は立ち上がった。


「何?お嬢さん、なにか言いたいことがあったら今のうちだぞ」


伸生が言ったあと二人は豪快に笑いだしたときだった。突然、宏のほうにある異変を感じたのだ。


「あ…なにこれ。手が紫になってる」

「あ~~~~!俺も俺も」


二人の両手が紫色に変色していることに気付く。すると、手が震えだした。ナイフを持つことさえできなくなり、落としてしまった。


「この男二人に罪の償いを与えよ」


何か言葉を告げていた。首に着けている十字架のネックレスを出し、伸生と宏に向けて祈った。


「てめぇ~!俺たちに痛目に合いてえのか!」


二人が麗羅に襲いかかろうとしたときだ。


匡救(きょうきゅう)博愛平等(はくあいびょうどう)


すると、新幹線の中が時間停止のように止まっていると感じる。伸生と宏はその事に戸惑っていた。


(何だこれ…時間が停止してるの?)


伸生はまるで異世界に連れていかれたように感じている。そのせいか訳が分からないでいた。すると麗羅は二人のところまで前にすたすたと進む。


「君たちさ、今まで何の罪のない人たちに手を出したことあるでしょう」


右足を強く踏まれて動けない状態でいる伸生。まだ動けるが体が全く言うことを聞かないでいる宏。


「あと言うけど二人はだんだん年、取ってくるよ?そしたら女子たちにも見向きしないよ」


二人は麗羅はに対して反撃をしたいが何をされるか分からないため何も返すことができない。すると、麗羅は歩くことをやめ、ぴたりと止まった。不気味な笑みを浮かべながら二人に何か言おうとしていた。


「だからさ、君たちは私にナンパするより自分磨きと見た目磨きをした方がいいんじゃない?お・ぢ・さ・ん」


二人は土下座をしながら「すみませんでした」と謝った。



その後、二人はなぜか元の場所に座っていた座席に大人しく座った。


麗羅はイメチェンとメイクをするためにメイクポーチとコスプレセットを持って化粧室へと向かった。


(あの男らは面倒でよかった。もし、うちが伸生と宏というやつを殴ったら逮捕されるし面倒。あのナンパは正直に気色悪いけど)


麗羅は心の中では愚痴を言っていた。だが、それも飽きたので切り替えをした。


(手っ取り早して化粧をしますか)


麗羅は早速準備をした。


(まずはウィッグ用のアンダーネットを被る。次にファンデ、アイシャドウ、アイライナー、チークを付ける。ついでにそばかすも)


メイクポーチから茶色のアイライナーを出した。そのアイライナーでそばかすを描いた。


(それだけでなく、このウィッグも)


コスプレセットから取り出したのは金髪のショートパーマのウィッグ。それを上から被る。


(何だか暑くなった)


暑がりでもあるため赤いコートを脱ぎ、そのまま化粧室で捨てた。



化粧室から戻ると、二人の男は大人しく元の座っていた。麗羅が本物のキリスト教の信者だと知り、偽ったことに二人は恥ずかしくなった。


「ねえ、おぢさんたち。このことは誰にも話さない方がいいよ。本当のことを言うと、私、死者の人間だから」


麗羅の目は笑っていなかった。ナンパしたこと。麗羅の存在。


「あと、今の私は外国人という設定にしているから。ちなみにエリザベスという名前だ。このことも言わないでね」


麗羅はエリザベスという名前でしばらく偽ることにした。それに対し、二人は「はい…」と仕方なく返す。



しばらくもとの座席に座って新幹線が走行しているうちに東京駅に着いた。新幹線の中は壊れていない。破壊した形跡もない。事件までは行かなかったが麗羅自身の中では襲撃事件だと感じている。


(サングラスも付けなきゃ)


麗羅はコスプレセットからサングラスを取り出す。付けたあと急いでスーツケースにコスプレセットを入れる。片付けたあとスーツケースを持ち急いで新幹線から降りた。

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