7.青蘭の作戦
「その前にちょっといいか。みんなはここから逃げろ。ここは危ないから」
青蘭は目撃者に逃げ出すよう伝え、一気に逃げていた。海斗もその近くにいる鬼女と一緒に逃げようとしたが動けないため逃げることができない。そこで海斗は、雑貨屋の中から見て、青蘭の動きを観察をすることにした。
「ようし、そろそろできるか」
「いいよ。じゃあ、かかってこい」
最初に男性はパ一カ一のポケットから刃物を出した。それを見て海斗もさすがにまずいと思い、体中が痛くて動けなくても必死に鬼女と逃げることにする。
「すみません、今のうちに逃げましょう。僕もまだ身体中が痛いけれど頑張っていくので」
その言葉を聞き、鬼女も「はい、わかりました」と言った。2人は男性に気付かれないよう、こっそり逃げることに成功したのだ。しかし、どこの店で隠れさせてもらう場所がわからない。そのせいで、また男性に見つかったらさらに鬼女がひどい目に遭ってしまう。そうならないよう、海斗は鬼女を連れ出し探しまくることにする。
一方、青蘭のほうは男性と勝負を始めた。男性が刃物を振り回しているのを青蘭は避けながら戦っている。
(妖術を使いたいがここでは人間もいる。だから使えない。今は刀も何も持ってないしどうする…)
青蘭がどうすれば倒せるか考えながら刃物から避けているとなかなか倒すことができない。なぜなら、男性より握力が弱いからだ。その代わり、スピードが早い、妖術、変身、刀を使うことができる。
「どうする?お前、何も持ってなかったら何もできねえからこれで終わりだ!」
青蘭は無言になる。男性が刃物をまた振り回す。そのとき、青蘭があることを思い付いた。
それは、青蘭が逃げ、男性が追いかける作戦にすることだ。あの男性は冷静に欠けている。それだけでなく、この街の全体を見てない。そのため、方向がわからない。男性は人間の死者だから、全力で走り続けると次第に疲れてくる。この作戦ならいけるかもしれない。
「ねえ、やっぱ戦うのをやめて鬼ごっこをしないか?俺、自信あるから。もちろんあなたが鬼で」
その誘いに男性も「ああ、もちろんいいぜ」と言った。青蘭はその男性を見て自信満々そうに見える。
この街並みの中での鬼ごっこを始める。男性は10秒数えている間に青蘭は近く店へと逃げていく。男性が数え終わると探し始め、街中を歩いた。しかし、男性にあっけなく見つかられてしまい、青蘭は逃げることにする。この2人はまだ体力に余裕があるため、男性は捕まえるまで走り続け、青蘭は男性の体力がなくなるまで逃げ回った。
(まだだ。この男性は体力が非常にある。でも、俺を見失っちゃうとあの鬼女を探し出すかもしれない)
それでも、街中を逃げ続けたが、お面屋のところを右に曲がるとそこには海斗と鬼女がいたのだ。左に曲がろうとしても男性が右を向いたら鬼女の存在が気付かれるかもしれない。これは、どうするか困惑してしまう。とそのときだった。
「あの、すみません…僕たちには構わずに逃げて…くだ…さい…お願い…します」
海斗が苦しながら青蘭にお願いをした。けれど、青蘭はそうはいかないと思った。
「そうはいきません。俺は、あなたたちも含め人間の死者や妖を救う仕事をしています。だから、見捨てるわけにはいきません。もう、後悔はしたくないので」
青蘭の言葉で海斗は何となく理解した。この人は立派だ。邪悪な妖怪ではない。まるでアニメに出てくる勇者が放った言葉みたいで根は優しい妖怪だ。それに比べ、海斗は今まで本当の家族と過ごしていない孤独な生活を送ってきた。そのため、誰かを救ったりなどしてこなかった。
今回のことで海斗は理解したのだ。誰かを救う理由が。
「わかった。じゃあ、俺はこの人を守ります。だから、あなたは追いかけてくる男性をお願いします」
そのお願いに青蘭は「なるほど、そういうことか」と心の中で思いながら理解をした。しかし、話していると追いかけてくる男性が近くまできてしまったのだ。
「てめえ、俺様を騙したな。しかも、この女から守るためによ~」
男性は青蘭に向かって怒りながら言った。これは最悪な事態になってしまうことになる。もうここで終わりだと思った次の瞬間だ。男性の背後から歩いてくる杖を持っている老人と可愛らしい小さな男の子が歩いていた。その老人は男性の背中を杖で強く叩く。
「痛ってえよ、俺様の背中に叩きやがって。なんだ、爺さんかよ」
「その言い方。失礼じゃな」
今度は老人を殴ろうとしたとたん、その老人があっという間に男性をコテンパンにした。
「参りました~もうここから出ていきますしこの女を連れ去ったりしません」
男性は負けを認めた。その後、獄卒が来て男性は地獄行きになる。しかし、鬼女のほうはどこへ行ってしまったのかは分からないのだ。
海斗は男性をコテンパンにした老人と可愛らしい男の子を見て、名前がわかったのだ。海斗の祖父・草薙明雄と海斗の弟の日陽くんだった。
「もしかして…海斗か?」
言ったっていたのは明雄だ。その質問に反応した海斗は「そうだよ。僕だよ。海斗だよ。」と答えた。
「大きくなったな…海斗…わしがここに来た時、海斗がまた新しい家族で暮らすことになって心配したんじゃ…」
海斗と明雄が涙を流して話しているのを見た日陽は2人の頭を撫でた。
草薙家が再開しているところを見た青蘭は家族のことを少し思い出す。
「青蘭、大きくなったね」
「大丈夫。そのままでいいのよ。だって私はあなたの味方だよ」
誰が言った言葉だろうか。とても優しい声をしていた。それだけでなく、あたたかかった。けれど思い出せない。




