61.食い道楽の旅人
「では、あの事件のことを話そうか」
すると、珠璃は神楽坂での失踪事件のことを話そうとしている。真実を知っているのか全てを話すことにしたのだ。
彼女は藍と同じ金髪をしている狐妖怪だ。だが、瞳は紫色の尖晶石のような色をしていた。美形に整っている顔立ち。海斗から見たら珠璃の年齢は30代後半くらいに見えた。
(一体何を話すのだろう…珠璃さんはあの失踪事件のことは知ってるの?)
海斗は神楽坂での失踪事件のことで気になっていることを思い出した。お花、心路、早知が証言をしていたことを。
(確か…お金を稼がないとあの人に殺される…とか言っていたな)
そのことを記憶していたのだ。3人の子供妖怪が言っていたあの人とは一体誰だろうか。海斗はそう思っている。
「最近、神楽坂で失踪事件が起こっているのは知ってるか」
珠璃が3人に聞いた。口調が少し悪かった。
「はい。もちろん、知っています」
「私も藍さんからの手紙で知りました」
「僕も…です」
3人ともその事件のことは知っていた。
「そうか。じゃあ、これからあたいはあの失踪した事件の始まりを話すわ」
目を細めながら言った。その事件の始まりを知ることができるのだ。
「あの事件の始まりにはきっかけがある。それにはある食い道楽の旅人がいたんだ。その話も神楽坂の人たちから聞いた話だ」
珠璃はその話をまだ続けている。4人は真剣な目で聞いていた。
▽▲▽▲
それは、ある日の夜だった。この頃はまだ藍が幼少のときだ。
「すいません。この店におすすめの食い物ってありますか?」
「あ、流華さん!もちろんありますよ!当店のおすすめ商品」
今、店員におすすめの商品があるかを聞いている。店員は自信満々に対応をしているところだ。
その人の名前は流華だった。蘇芳色の髪色を、下に纏めて束ねている猫妖怪だ。卯の花色の長袖のチャイナドレスにガウチョパンツを履いている。手で持っているのは刃先が曲がっている巨大な矛だった。
「あの人…武器持ってる…」
「俺たちを殺すつもりか…」
当然周辺の妖怪たちには恐れられていた。流華は堂々とその鉾を持っていたからだ。すると、流華が後ろを向き、「すみませんね」と一言言った。
「驚かせちゃってごめ〜んなさ〜い。貴方たちを殺すつもりはないから、安心してくださ〜い」
その言い方が反省してないように見える。のんびりしている喋り方だった。だが、目は笑っていない。
「これ、確かにあたしが持ってるのは武器なんですけど、絶対に殺したりなんかしませんよ〜」
そのことを聞き、周辺の人たちは安心した。
流華はおすすめの商品がまだ来ないか待っている。食べることが好きな彼女は現在、食い道楽の旅をしているのだ。
「お待たせしました〜!今回のおすすめ商品はカステラだよ」
笹の葉の上で渡されたとき、カステラの上には大根おろしがかけられていた。
(これは…何だ…独特な見た目だな…)
流華はカステラをじっと見つめながら疑問に思っている。カステラと言う食べ物を知らなかった。その上に大根おろしをかける食べ物があるのは初めて知った。
「どうした?口に合わなかった?」
「いえいえ、全然大丈夫ですよ。食い物を食う旅をしてるので、嫌いにはなりませんよ」
「それはよかった〜」
店員は安心した顔を見せる。
「でも、この街の人って独特な食べ物とかを作れるんですね」
「いやいや〜そんなことないよ!当店はみんなで考えを出し合って作ったやつなのよ」
流華が褒めると、店員は軽く手を振りながら照れ臭くなった。
「あたしは貴方たちが羨ましいですよ〜。そうそう、あたしには息子と娘がいるんだけどさ〜。今は娘の名前がどうしても決まらないんですよね」
すると、店員は「まぁ〜!」と驚いた顔を見せながら言った。
「娘さんいるんですか!?やっぱり流華さんは美人だから娘さんも美人だったりして〜」
そのことに対して流華は、「え~」と返した。
「別にあたしは美人とかそう言うのは求めていません。だって、興味ないんですもん」
「あら?そうなの?流華さんがそういうものには興味ないんですか~」
流華がそれに興味がないと知り、その話はやめることにした。
「あ、そうそう!流華さん、『黄鈴屋』という店に興味ない?」
『黄鈴屋』という店は全く知らなかった。そのことに「それは何の店?食い物?」と聞いた。
「食べ物の店でもあるけど、単なる愚痴を聞かせてくれる店でもあるから休憩所っていうところかな。疲れを癒してくれるからね」
その店がどういうところなのかを知りたくなった。流華は今すぐ、『黄鈴屋』へ行きたくなってくる。
「そうなんですか?それはぜひ行ってみたいですね。じゃあ、あたし今すぐ行ってこようっと」
すると、流華は今すぐ大根おろしがかかっているカステラを素早く食べる。
「ごちそうさまでした〜。意外と美味しかったですよ。この味は甘いというよりさっぱりとした味がしました」
食べ終わるとすぐに笹の葉を持ち帰り、矛を持ちながら走って『黄鈴屋』へと向かう。
「お気をつけてね〜ここら辺は盗賊とか危ない人たちもいるから」
店員は流華に盗賊団などがこの街の辺りにいることを伝えた。それでもそれを聞かずに行ってしまった。
流華は『黄鈴屋』という店まで向かっている途中だ。
(よし、ここからは大丈夫だ)
刃先が曲がっている巨大な矛を堂々と持ち歩いていた。そのせいでまた周辺の人からは恐れられている。
「え…やばくね…あの人…」
「確かに…何でだろう…もしかして、この呪いの国の規則を守ってないのかな…」
呪いの国の法則の一部に、「武器を持ってきてはならない」という決まりがある。
その他にも「戦をしてはならぬ」「誰に対しても善良な心を持て」など道徳心を中心の法則が多い。
「すみません〜!あたしはね、旅人なんです〜!だから気にしないでください〜」
流華は周辺の人たちに訳を説明しながら向かっていった。すると、複数人の強盗団に巻き込まれたのだ。
「…はっ!」
その目は、初めましてではなさそうだった。
「おい、流華。俺たちはお前にリベンジしに来た。もう一度、ここで勝負しろ」
強盗団の一人がリベンジを流華に申し込む。だが当然、流華は「無理」と断る。
「はっ?何言ってんだよ。お前は『傀儡師』の一員じゃなかったのかよ」
「ていうか、それは昔のこと。今はもう、自由に生きたいだけなんだよ!だから辞めた」
流華は訴えかけるような言い方で言った。
「自由?無理だよそんなの。『傀儡師』の一員のお前がそんなのできるわけがねえんだよ」
「できないわけがない!だったら…」
すると、流華は鋭い目付きへと変わっていく。
「だったら?」
強盗団の一人が同じ言葉を繰り返す。
「お前らを抹殺にしようか」
そのことで、強盗団の人たちは「上等だよっ!」と上から目線で言う。流華はその矛を使って構える。強盗団は6人いる。そうなると、1対6。
「じゃあ、行くか」
流華は殺される覚悟もしながら勝負する構えをした。




