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妖の追凶〜time of hell〜  作者: 羽波紫希
華の道しるべ編
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59.意志と決意

まだ真っ暗な夜のときだ。(りん)が手榴弾を軽く落としてしまったせいで逃げられてしまったのだ。部屋の中は煙だらけで前が見えない。


「ゴホッゴホッ」


海斗が再び苦しい咳をしていた。まだ煙が収まっていない。そのせいか4人の姿が見えない。それでも煙が収まるのを待つしかなかった。


(あの表情は嘘だったのか…?)


海斗は鈴に騙されたと思っている。すると、煙が少し収まってきた。


「すまない。俺が鈴に手榴弾を渡してしまった。でも、爆発してなくてよかった」


青蘭はまだ女子高生の姿に化けている。声も男ではなく、透き通った女性の声だ。


「いや、青蘭が悪いわけではない」


間違って鈴に手榴弾を渡してしまった。そのことに対して、海斗は青蘭には決して責めなかった。すると青蘭が3人に何か言おうとしていたのだ。


「…ちょっと3人に伝えたいことがあるんだけどいい?」


青蘭が海斗、紅葉、藍に伝えることがあるようだ。


「もちろん、いいわよ。だって一人で抱え込むよりはいいと思うし、小さい時によくここで話したりしたしね」


藍が目を細めながら青蘭に言った。


「せっかく私たちもいるし、一人じゃないよ」


紅葉も穏やかでゆっくりな口調で青蘭に言う。


「そうだよ、青蘭。たとえ、記憶は失ってもいつか全てが思い出せるときは来る。あのとき、初めて黄泉の国へ来たときさ、僕を助けてくれた」

「いや、あれはさ…」

「それだけじゃない。僕に生き方を教えてくれた。そのお陰で今は孤独を感じなくなったよ」


どうやら3人は青蘭のことで相談に乗ろうとしている。だが、青蘭は自分のことを伝えたいわけではなかった。


「3人とも…勘違いしてるよ…」

「え…」


そのことで海斗、紅葉、藍は頭の中ではこんがらがっていた。


「青蘭、結局あなたのことじゃないの?」


藍は勘違いしている分かった。そのため、青蘭に聞いた。


「今回は俺のことじゃない。鈴のことで3人に伝えたかっただけだ。多分、鈴の狙いは俺だ」

「え!?青蘭なの?」


鈴の狙いが青蘭だと聞き、藍は驚いてしまった。


「多分そうだ。そのため、しばらくは女の姿で過ごすことにする」

「それって…どういうことなの…?」


そのことに藍は納得することができなかった。青蘭には本当の妖狐の姿でいて欲しい。それだけだった。


「つまり、俺は数日間だけ人間に化けることにするということだ」


海斗と紅葉はそのことに既に納得していた。鈴が再び青蘭を狙いに来るかもしれない。


「…分かった。青蘭が言ってたなら仕方ないね」


仕方なく納得する。藍にとって、本当は妖狐の姿で過ごして欲しかったと思っていた。


青蘭は守護国のほとんどでは有名になっているほどだと聞いた。それだけでなく、なぜか指名手配にもなっている。


(そりゃ…青蘭も大変だ。これは、真の姿で外を出歩いたりすることもできないな。確か、有名人でもあり、指名手配にもなっているんだった)


海斗はそのことを記憶していた。


朝国である男性に殺されそうになったときだった。青蘭に助けてもらった最中、他の死者の話し声が聞こえたのだ。


―え!?マジ?青蘭って格闘の番組で覇権王になった妖怪だよね?―


あの話し声が聞こえたとき、初めて出会った頃はよく分からなかった。だが、青蘭が人間の姿に化けるときに分かったのだ。


(やっぱり、指名手配犯や有名人でいるのは大変だ。でも、身を隠す以外はない)


狐妖怪である青蘭は人間に化けることができる。だが、どれが本当の姿なのかが分からなくなるときがあるのだ。それが次第に性別や性格も。


「ねえ、青蘭はこれからどうしたいの?」


海斗は青蘭に優しい口調で聞いた。


「俺は…」


答えようとするまでの時間数分がかかっている。それでも、3人は待ち続けた。


「本当は人間や女の姿にはなりたくない。本当の姿。いや、妖狐として生きていたいんだ。でも、こう見えて有名になっちゃったから外を出歩くときも身を隠さないと行けない」


すると、青蘭が答えるのを途中で止まってしまった。それでも、思ったことを言うのをやめていない。


「それだけではない…俺は…実は…」


そのことに3人はじっと見た。


(こういう時に…思い出せない…)


曖昧な記憶のせいで青蘭は何を言えばいいのかを忘れてしまった。


「すまない。思い出せないかも…」


青蘭が申し訳なさそうな顔をしながら言った。


「全然大丈夫だよ。徐々に思い出すと思うよ」

「そうそう〜!紅葉ちゃんの言う通りだよ」


2人が励ましてくれた。すると、青蘭が「ありがとう…」と少しボソッとした声で言った。


(あれ?声が小さいような…)


海斗は青蘭がボソッと言っている声が一瞬だけ聞こえた。だが、気のせいだと思っている。


(まっ、いっか。青蘭が本当のことを言えたなら)


目を細めて笑いながら海斗は3人のことを見た。


(部屋の中にいる3人の妖怪はそれぞれの個性を持っているのかもしれない)


海斗はそう述べた。藍の見た目は教室のクラスで人気者になれるような美少女。だが、本当の口調や握力が強い。それを生かして店の仕事をしている。


紅葉は守護国の鬼の国から来た鬼の美少女。穏やかで多才。今は、鬼京(ききょう)という鬼の国の都から出て外の世界へと旅をしている最中だ。


海斗の親友でもある青蘭は、今、何だかの理由で記憶を失っている。そのせいで感情が少し乏しいのだ。それでも、現在は指名手配から逃れながらも記憶を取り戻す旅をしている。


海斗は、三途の川で出会った使用人の暁によって古い懐中時計を預けて貰っている。そのうちに懐中時計と黄泉の国の関係。海斗が妖だと言われる理由を探っているところ。


(みんなそれぞれで頑張っているんだ。よし、僕もあの懐中時計を返して貰うよう説得するために暁さんをそのうちに探すか)


海斗は現在、死者でもある。そのため、たくさんの時間が得られ、懐中時計と黄泉の国の関係を探る時間もあるのだ。


「私、明日家に帰るんだけど3人とも一緒に行く?」

「え!?いやいや、悪いよ」


紅葉はいきなり聞かれ、思わず悪いと思い断ろうとした。


「俺も…さすがに悪いよ」

「僕も人の家には勝手に…そんなそんな…」


青蘭と海斗もさすがに悪いと思っている。


「特に青蘭、あの屋敷に私の義理の母親がいるんだよ。名前は珠璃(じゅり)さん。小さい頃にあったことがあるし」


当然、青蘭はそのことを全く覚えてない。


「そうだっけ…?」

「そう。明日、『藤楽邸(とうらくてい)』へ行かない?久しぶりのご挨拶として」


それは青蘭に言っているようだ。


「いいよ。行こう」


すると、藍は胸いっぱいになっていた。


「今、待たせてる…子どもたちのことなら他の従業員にお願いするわ」


既に藍は少し泣いているのだ。青蘭と久しぶりの再開。小さい頃、神楽坂でいろいろと見回りをしたときと同じようにしたいと思っている。


(嬉しそうだね)


紅葉と海斗は目を細めながらそう思っているのだった。

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