58.取り調べ
「鈴!鈴!」
海斗は必死に鈴の目を覚まそうとしていた。だが、すぐに目を覚ますことはない。
(何か食べ物とかあればな…)
そう思っていながらも食べるものを探す。そのために台所へ急いで向かった。
(この子に何かあったのかは分からないな)
実際に見ていなかった海斗にとって、鈴がどのように侵入してきたか全く知らない。生い立ちやどんな人なのかも分からないのだ。
(でも、今は鈴を助けないと行けないっ!)
台所へ着くと、海斗は取りあえず何か食べ物がある場所を台所担当の従業員に聞く。
「すみません、お粥とか何か食べ物はありますか?」
「食べ物…あるわ!」
すると、その従業員は鰻重を出してきたのだ。
「ありがとうございますっ!」
海斗は素早く鈴がいる部屋へと向かった。だが、「お箸!」とその従業員に言われてしまう。
「あっ、すみませんっ!」
再び鈴がいる部屋へと向かう。その途中海斗はで紅葉と藍がいる部屋を通っていた。その音が聞こえたのを気付いた。
(ん?今通っていたのは…鳥山くん?)
紅葉は一度、襖をそっと開ける。すると、海斗がこの部屋を通り過ぎる姿が見えた。
(赤い四角の箱は何だろう…?)
海斗が持っているのは鰻重と1本の割り箸。紅葉は何だろうと首をかしげた。
鈴がいる部屋へ着いた海斗は襖を開けた。鰻重と1本の割り箸をその赤い箱の上に置いている。それを右手で持った。
「お粥とかなかったけど、鰻重なら持ってきた。目が覚めたら食べるいいよ」
海斗は鈴が眠っている布団のそばに鰻重と割り箸を置いた。すると、すぐに鈴が目を覚ましたのだ。
「んん…何かいい匂いがする…」
鈴が匂いを嗅いでいた。布団のそばに置いてある鰻重に気付いている。
(ようやく気付いたな。じゃあ、この作戦でやってみるか)
海斗はある作戦を試しに実行してみることにした。鈴が『風森屋』の近辺で銃を使ったのは事実。侵入したかどうか。その動機を自白してもらうためだ。
「おはよう。鈴、目が覚めたな」
「お…おはようございます…」
あまりにも調子に乗っている。そのことに鈴は戸惑ってしまったのだ。
「さあ、鰻重でも食え。お腹空いただろ!」
すると、鈴は既に鰻重を一気に食べていた。その後、5分も行っていないにもかかわらず間食。
(え…!?あっという間に食べ終わっちゃった…)
海斗は心の中で驚いてしまった。
「ごちそうさまでした。結構お腹空いてたので美味しかったです~」
「あ…そう…なんだ…」
鈴があっという間に食べ終わっていた。そのせいか愛想笑いをしながら返してしまった。
(鈴ってよく食べる妖怪なんだね…)
海斗は鈴のことをよく食べる妖怪だと思った。すると、海斗は鈴がなぜ神楽坂に侵入してきたのかを質問することにした。
「君は確か、鈴…で合ってる?」
「合ってるよ」
鈴が丁寧語で話すのをやめていたのだ。海斗と鈴は同じような世代なのかもしれないと感じている。
「これから質問するけど、鈴は神楽坂に来た動機は何ですか?」
海斗は真面目な表情で鈴に質問をしている。すると、そのことに対して鈴は堂々と答え始めたのだ。
「あたしはただあいつを探しに来た。あとはムーチンが亡くなった原因を探りたい。ただそれだけ」
何となく理解することができた。海斗は「あいつ」「鈴の"ムーチン"」を頭に入れた。
「ちなみにあいつって誰?」
「青蘭のことだよ」
それを聞き、海斗は鈴と青蘭がカップルだと思ってしまった。
(青蘭に彼女いたんだ…でも、何で話さなかったんだ。そんなこと全然聞いてないよ~)
海斗は心の中ではショックを受けたのだ。すると、海斗は鈴に青蘭と鈴はカップルなのかと聞くことにする。
「鈴って、青蘭とは…交際してるの…?」
すると、鈴は苛立ち始めたのだった。
「は?いやいや全然違うし。だって、青蘭は無愛想でマイペースだし、屋敷内では訪問客が座る席でゴロゴロする。恋愛とかは全く興味無し。あたしは青蘭のことを彼氏にしたくないランキングで第1位にしてるよ!」
随分と怒った口調と早口で、青蘭の欠点と彼氏にしたくないランキングのことを話している。海斗は苦笑いをしながら聞いた。
「話し変わるけど、"ムーチン"って何?」
「お母さんっていう意味」
"お母さん"と聞き、海斗は理解しながら頷く。また鈴がまた話し続ける。
「あたしのムーチンはいつも食べることが好きでよく神楽坂を訪れたことが多いと聞いた。青蘭とはマイペースなところがちょっと似てるかも」
海斗は真剣な顔をしながら聞いていた。
「だけど、ムーチンの死因は分からないんだ。もしかしたらあの事件に巻き込まれたのかもしれないし」
すると、海斗はあの事件の聞いて失踪事件のことを思い出した。
「話を遮っちゃってごめんなんだけど、失踪事件のことを聞いて心当たりはない?」
「心当たり…ないかも」
「そっか」
鈴は神楽坂に来たのは今回が初めてだ。なので失踪事件の詳細が分からない。
「じゃあ、また話を変えるけど『風森屋』近辺で火事を起こしたのは本当?」
海斗は鈴にそのことを質問した。
「…本当だよ。元々は青蘭を探しに来たのではなく、殺しにつもりで銃とか持ち歩いただけ」
鈴は正直に話した。海斗は鈴の動機を知ることができた。
「あ、言い忘れてたけど、ちなみにあたしは青蘭が住んでいる屋敷で仕えるハウスメイド。銃とか使うのは結構得意なんだ~」
「へぇ~そうなんだ~じゃあ、青蘭は元々金持ちなの?」
すると、鈴は「うん」と頷いた。
一方で紅葉と藍は海斗と鈴がいる部屋の前で話の内容を聞いていた。気付かれないように音を立てずしている。
「藍さん、大丈夫何ですか?」
「大丈夫だよ!子どもたちなら少しだけ待っててと言ったから」
2人は静かな声で会話した。すると、紅葉の背後に誰かがいることに気付く。
「誰…?」
「どうしたのですか?」
藍は恐る恐るで正面を見ていた。紅葉が後ろを振り向くとそこにいたのは女子高生に化けている青蘭だ。青蘭が持っていたのは手榴弾。
「ギャ~~~~~~~~~~~~~~!」
2人はあまりにも驚いたせいか悲鳴を上げてしまった。
そのことを海斗と鈴に気付かれ、3人は中に入っていったのだ。
「めっちゃ心配したんだよ~」
藍は完全に海斗のことを心配していたのだ。
「はいはい。僕は大丈夫。なんたって死者だからな!」
「死者だからって死ぬこともあるからね。海斗のことを忘れ去られたら終わりだからな」
女子高生に化けている青蘭が海斗に言った。
(手榴弾をどうやって奪うか…)
鈴は青蘭が持っている手榴弾をどう奪うか考えている。すると、奪う方法を思い付いた。
(まっ、あたしは妖術を使うことができない。けれど、力付くで奪うならできる。だって、今は人間の女子高生の姿に化けてるし)
すると、鈴は女子高生に化けている青蘭にトントンと2回だけ優しく叩いたのだ。
「君、ちょっとその手榴弾探してたんだ~!この手榴弾、持ち主に返さないと行けないの。名前は山田さんという人間の死者に」
鈴は存在しない架空の名前を手榴弾の持ち主とした。持ち主に返さないと行けないという作戦で奪う。
「確かに妖怪が持っている訳でもないし。お願いできるかしら?」
女子高生に化けている青蘭は完全に忘れてる。そして、手榴弾を鈴に渡してしまった。
(これでよし!)
心の中では喜んでいた。すると、鈴は躓いて転んでしまうふりをした。
「あ、落としてしまう!あたしったらあっぶないな~」
そうすると、鈴は転んでしまうふりをしながら手榴弾を軽く落としてしまったのだ。
「あっ!なに渡してるんだよ!青蘭!」
「そうだったの?」
それを見ていた海斗は少し怒る口調で言った。青蘭は手榴弾が鈴のものだと既に記憶を失っている。
「パーーーーン!シューーーーー」
なんと、爆弾のような音が出ている煙が出た。幸いにも店は壊れてない。
「ゴホッゴホッ」
煙が出たせいか鈴の姿が見えない。そのせいで鈴に逃げられてしまった。
「逃げられた~ゴホッゴホッ」
海斗は苦しい咳を出しながら叫んだ。




