57.目的探し
『黄鈴屋』にいる海斗たちはおもちゃ箱のある部屋から夜景を見ていた。
「騒がしいな…」
その夜景には他の店の従業員たちがどこからなのか『黄鈴屋』の周辺へと逃げていたのだ。
「騒がしいねえ…鳥山くん」
「そうだね…」
どうして逃げているのかが海斗と紅葉は全く分からない状態でいた。
(ここら辺で火事とか何も起きていないのに?)
海斗はそのことを疑問に思っていた。
「僕、ちょっとここを出て店の外の様子を見てくるから紅葉はここにいて」
「分かった」
紅葉は3人の子どもたちと一緒におもちゃ箱のある部屋へ残ることにした。海斗は急いでこの部屋を出ていく。
(あぁ…鳥山くんまであの失踪事件に巻き込みませんように…)
手を合わせながら海斗が失踪事件に巻き込まないようにと祈っていた。紅葉はせっかくできた仲間を失いたくない。そう思っている。
「おねえちゃん…どうしたのですか?」
既にお花に聞かれていたのだ。すると、紅葉は驚いてしまったあまりに「わぁ~!」と悲鳴を上げてしまった。
「ごめん、お花ちゃんまでびっくりさせちゃって…」
「いいえ、大丈夫ですよ」
大丈夫と言う一言に紅葉は安心した。かなりの慌ただしい動きに戸惑ってしまったからだ。すると、襖を3回ノックするオとが聞こえた。
「誰ですか~?」
「休憩中に来ちゃいました~!」
紅葉が聞くと、その声は藍だった。襖を開ける音が聞こえる。
「ただいま帰りました~って…」
藍はそこに海斗がいないことに気付いた。
「鳥山くんは?」
「あ、それならここを出てって店の外の様子を見てくるからと言って出ていったよ」
紅葉は海斗が店の外の様子を見てくることを離した。すると、それを聞いた藍も心配になってきたのだ。
「えっ!あまり外に出ちゃだめなのに~」
「そんなこと言ってたっけ?」
「言い忘れてた…」
海斗が失踪事件に巻き込まないためだった。だけど、外に出ないことを伝え忘れてしまったのだ。
一方、海斗は店の外に出てその様子を見回っている。
(何もなさそうな気がするけど…)
海斗はそのことを考えながら様子を見ていた。すると、神楽坂の周辺の人たちの噂を耳にしてしまったのだ。
「なんか、『風森屋』のほうで侵入者が来たらしいよ。しかも銃を持っている猫妖怪!そのせいであそこで火事になっちゃったんだって」
「銃!?この街には銃とか持ってきては駄目じゃなかったっけ?」
そのことを耳にしていた海斗は既に記憶している。
(まさかあの店で…はっ!だとすれば、青蘭はどうなるんだ…)
すると、海斗は青蘭を探しに行くために一人で街中を走って行った。だが、周辺の人たちには気付いていない。
(僕は死者でもあり、妖の力も持ってるからなっ!だからどんな敵でもボッコボコにしてやるぜ!)
海斗は青蘭を探しに走っている。何故か疲れない。内心では自信満々な口調で語っていた。
(まっ、後はな…女子高生に化けている青蘭をもう一度見てみたい…そして、僕の嫁候補に…)
ニヤリとしながら海斗が選ぶ嫁候補のことも考えていたのだ。黄泉の国へ来る前もアニメキャラの中で嫁の候補を考えたことがあった。
(青蘭はあの顔立ちだったら女子にも変装できそうだし~)
海斗は青蘭が女装する姿を想像した。そのせいか視野が狭くなってしまったのだ。すると、誰かとぶつかってしまう。
「痛っ!」
「イテッ…」
ぶつかったとき、あまりにも痛すぎた。そのせいでお尻が地面に付いてしまった。
「イテテ…おい、気を付けろ。危ないやんか、アホ!」
「すみませんっ!」
「たっく…この子に怪我をしたらどないするねん」
その姿を見ると魅緑だ。海斗は初めてその人に会った。魅緑が横抱きにしているのは猫妖怪の少女だ。
「この子…」
海斗は猫妖怪の少女のことをどこかで聞いたような気がする。
―なんか、『風森屋』のほうで侵入者が来たらしいよ。しかも、銃を持っている猫妖怪!―
周辺の人たちが言っていたことを思い出した。
「おい、聞いてるんか?」
魅緑は少し苛ついている口調で言った。
「聞いてます!ちょっと、この子のことを見てしまって!」
海斗は堂々と魅緑に言ってしまったのだ。その直後、内心では恥ずかしいと思っている。
(はっ!今なんて言ったんだ、僕!それどころじゃない!)
気まずくなり、その場を去ろうとした。そのためには一言言わないと行けない。すると、海斗はすぐに思い付いた。
「すみません、今、僕の友達を探していますのでそろそろ行きます…」
海斗はそろりと後を去ろうとしたときだった。
「もしかしてさ、あの狐のことを探してんのか?」
すると、海斗は止まった。
(バレてたの…?ヤバ…この人、心読めるの?)
海斗は魅緑のことをテレパシーだと思っている。
「あの狐のことならかまわへん。なら、君はこの子のことをお願いな。まだ昏睡状態だからな。この子の名前は鈴」
魅緑がそう言ったあと、海斗に鈴を横抱きにして渡した。
「重い…」
必死に持ち上げながら、『黄鈴屋』へ向かった。海斗は女子を横抱き。つまり、お姫様抱っこをすることが一度もなかった。力持ちでもなかったので一苦労をした。
『黄鈴屋』の前へ着き、その店の中へと入った。玄関にはその店の従業員たちがいたのだ。
「海斗くん、藍ちゃんと紅葉ちゃんとかが心配してたよ」
「次からは言ってから行くことにしてね…って…その子誰?」
2人の従業員が昏睡状態に陥っている鈴のことに気付いた。
「僕にもさっぱり分かりませんが、取りあえず使っていない部屋へ連れていきます」
海斗は鈴を連れて誰も使っていない部屋へと向かう。着くとそこは畳上だった。襖に何かが入っているだけだ。
「用意するか」
早速、襖を開け、布団を用意した。準備をし終えると鈴を布団の中へと寝かせた。その後、海斗は鈴が目を覚ますのを待っていたのだ。
「この子が鈴…」
海斗は鈴が眠っているのを見た。まるで、白雪姫が毒リンゴを誤って食べ、昏睡状態に陥っているような感じがしたのだ。
「青蘭は…まだ来てないから、もうちょっと待ってて」
海斗がまだ眠っている鈴に少し聞こえるように言う。すると、鈴が目を覚ましたのだ。
「うっ…ここは…」
鈴がようやく目を覚ますとそこは、畳上の部屋にいた。
「おはようございます。ここは『黄鈴屋』です」
「『黄鈴屋』…じゃあ、あなたはあたしのムーチンを殺したの…?」
"ムーチン"と聞かれたときは全く分からなかった。
「ムーチンって何ですか?」
海斗は鈴の"ムーチン"のことは知らない。すると、鈴は目を細くしながら激怒する。
「知らばっくれんなっ!じゃあ、お前もあの人と共犯者なの?」
「きょきょきょ…共犯なんて…しかもあの人って誰?」
慌てるせいか戸惑いながらも海斗は知らないと返した。
「じゃあ、この銃で殺してやるって…」
鈴は銃を出すためにいろんな所を探した。だが、どこにもない。
「あれ?あれ?どこにもない!嘘でしょ~?」
もう一度あちこち探した。すると、鈴がまた倒れてしまったのだ。




