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妖の追凶〜time of hell〜  作者: 羽波紫希
華の道しるべ編
54/60

53.怪しい馴染み客・魅緑

「いつものおねえさんを呼んでと言われても誰なのか名前を教えないと分かりません」


青蘭はその男性客に淡々と言った。そのことに対して、その男性客は「ふ~ん」と無愛想に返す。女子高生に変装している青蘭にとっては呆然としていた。


「この客は厄介だな…」


独り言のようにボソッと言った。青蘭は『風森屋』で働いた中で、過去一面倒な客と接客をしてしまった。


「おねえさん、今、なんて?」


どうやら男性客にその小声が聞こえてしまったようだ。


「何でもありません…アハハ…」

「へぇ…」


愛想笑いをしながら誤魔化した。だが、その男性客に怪しまれる。感が鋭そうだ。


「ちなみに名前を教えてください」


青蘭は淡々とその男性客に名前を教えて貰おうとする。


魅緑(みろく)だ」

「もうひとつ聞きたいことがあります。いつものおねえさんという人の名前も教えてください」


すると、魅緑は無言になったのだ。2人きりの空間で気まずくなった。


(これ…どうするんだ…答えなかったら意味ないだろ)


それでも、青蘭は魅緑が答えるまで待つことにした。待つ時間が長く感じる。店の前や二階の外側に提灯が付いているお陰でその客が見えていた。


(何も答えてくれなかったら…そうだ!)


青蘭は考えを思い付いたのだ。魅緑という男性客はかなり無言でいた。言葉が出てこないのか。それとも言いたくないのか。


(はいかいいえで答えさせてみよっか)


質問するのは面倒だ。けれど、これは仕事として客に不満をさせないようにしよう。そう思ったのだ。


「魅緑様。ここの従業員誰かを指名しますか?」


すると、魅緑は「はい。じゃあお願いします」と返した。


「かしこまりました」


頭を下げたあと、控え室へと向かった。青蘭は面倒な客だと思いながら競歩をした。


控え室に着き、襖を堂々と開けるとそこにいたのは志野と他の従業員たちだ。すると、その人たちは青蘭の方を見た。


「雪乃ちゃん?どうした?」


志野が青蘭に問いかけるような言い方で聞いてきた。


「休憩している最中に申し訳ございません。皆様にお願いがあります」


青蘭は魅緑という男性客が店員を指名しようと複数人の店員を連れてくる。


「ねえ、その客って美青年なの?」


休憩をしていた従業員の一人が魅緑のことを美青年かどうかを聞かれた。


「一応…かっこいいな~とは思いますけど…」


その返答に青蘭は戸惑った。魅緑がかっこいいかどうかは正直分からない。そこまでは見ていなかった。


(俺、美青年とかそういうのはよく分かんないな…)


愛想笑いをしながら必死に誤魔化した。女性が好んでいるものが何か青蘭にとって、分からないものだ。すると、その従業員の一人は嬉しそうにしていた。


「え~!それって本当なの~?」

「まあ…」

「それじゃあ、行きます~!」


またもや、青蘭は返答に困る。その後、他の従業員たちも行くと続々と出た。


(これで俺の仕事が減る…)


面倒にしていた青蘭にとってはこれで吹っ切れたと思った。


「雪乃ちゃん、お疲れ様」


同じ控え室で休憩を取っていた志野に肩を叩かれた。そろそろ女子高生に化けているのも限界だ。あと数日、続けられるか。青蘭は内心では疲れきっていた。


「お疲れ様…」


すると、青蘭は仰向けにばたんと倒れてしまう。目の前にいた志野は青蘭の体を揺らした。


「雪乃ちゃん!?あ~無理しちゃってごめんね~今すぐ布団とかお粥とか用意するから~」

「すみません…お粥までは…大丈夫です…熱は出てないので…」


そのことを聞かず、志野は控え室から出ていった。青蘭に布団とお粥を用意するためだ。


(志野さん…俺の話…聞いてましたか…)


内心に思っていたことを告げ、目を瞑り、眠ってしまう。体が一歩も動けないし、力が入らなかった。



玄関にいる従業員たちは、『風森屋』という店に来た魅緑に特技や趣味などを聞いていた。


「魅緑様はお仕事がない日とかは何をなさってますか~?」

「得意なこととか趣味はあるんですか~?」

「今日の着物は素敵です~!」


次々と魅緑に質問していった。この店の従業員たちは魅緑に一目惚れだ。青蘭が言っていたせいだった。


(この店員たち、えらいこったな…)


魅緑は既に疲れ切っていた。従業員たちに気付かれないよう、小さなため息を吐く。


(何だか俺は、ほんまに超面倒な店員たちと出会ったな…)


この店の従業員たちの質問には返答しなかった。すると、店の玄関の扉が開く音がした。


「ちわ~っす!来ちゃった」


なんと、そこにいたのは他の店で酒を飲んで酔っぱらった男性の死者だ。


「ん?なんだ?そこにいるのは…イケメン!?」

「あんたこそ、何なんですか?つうか、酒臭い匂いがする」


酔っぱらっているせいか体が振ら付いている。魅緑は思っていることをそのまま言ってしまった。


「魅緑様~それはまずいですって」


この店の従業員たちも止めようとした。


「てめえ~!俺様に喧嘩売ってんのか!」


酔っぱらっている男の死者は魅緑の服を掴んだ。それを見た従業員たちは怖くて、手を出すことができない。すると、走って玄関へ向かって来る音がする。


「誰?」


他の従業員はその音の方を見ると、そこにいたのは志野だった。


(疲れる…急ぐのって大変だ…)


玄関へ付くと、志野はかなり疲れているようだ。すると、酔っぱらいの男の死者と魅緑が何か喧嘩しているように見えた。


「いらっしゃいませ!当店で喧嘩は受け付けております。しかし、ここで喧嘩をするのはご遠慮ください。他のお客様の迷惑になりますので」


かなり疲れていた。それでも、お客様は神様ということを忘れないようにした。


(志野さん神~!)


従業員たちは安心した。


「では、ご案内します」


喧嘩してもいい部屋へと案内をされた。酔っぱらいの男客と魅緑はそのまま着いてくる。二階へと上がると、誰も使われていない部屋へと連れていかれた。


その部屋へ着くと、襖の数が多い。なので広そうに見える。


「着きました。それではどうぞ!1時間だと150万~500万払って貰います」


志野が襖を素早く開けながら言った。すると、そこは行灯などの灯りがなく、とてつもなく暗い。すると、魅緑は喧嘩を辞退することにした。


「俺、やっぱ辞めます。そんな金はないんで」


魅緑は一言言い、その部屋の前を去った。


「じゃあ…俺も辞めるわ…そんな金もないので」


酔っぱらいの男死者も店を去ることにした。


(ま、あの広い部屋は園遊会とかで使ったり、喧嘩でも使うけどね)


冗談を付いてしまったことは反省をしている。これも店を守るための手段として使っているのだ。

『風森屋』では喧嘩してもいい部屋があります。けれど、1時間で150万~500万。24時間なら5000万円以上は取られますのでご注意を。

※というのもすべてフィクションです。

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