51.3人の子供妖怪たちの証言
一方、海斗たちも既に店を開店し、客も何人か来ていた。
「藍…?」
海斗が気付いたときには既に藍の表情、態度も変わっていた。『黄鈴屋』の従業員たちの態度も同じ。だが、藍は悪役のように変わり果てていた。
「藍さ…ん?どうかしたんですか…」
紅葉もそれを見て訳が分からないと思って、頭が混乱している。
「よしっ!あんたらはあたしの店の手伝いをしろ」
「あ、はい…」
「分かりました…」
藍の話し方も汚くなっていた。店を開店するときになる。そうすると、海斗と紅葉はやる気をほんの少しだけ無くした。
(ここの店って…もしかしたら…)
『黄鈴屋』という店は従業員が素直ではない。紅葉はそう思っていた。
(この店の接客態度が独特だな…この態度でお客さんが来てるんだね…)
海斗は不思議だと思った。
もう既に夜になっている。他の店でも行灯がついているお陰で少し明るい。海斗は店の掃除、物運び、少しだけの接客を任された。
「女将さん、それは僕がやります」
「あらそう~?ありがとうね」
海斗は重い物を運び、店内の掃除を素早く済ませた。その後、汗をかいたことに気付いた。
(仕事って色々と大変だ。17歳の僕にとって初体験をしたな)
仕事の大変さを実感した。これも良い経験だ。
店外の方では、紅葉が宣伝をしていた。鬼女でもあった紅葉にとって、寒さを感じない。神楽坂、あるいは黄泉の国全体では寒気の時期だ。
「いらっ…いらっしゃいませ~!この店は接客の態度が悪いけど、とても良い店ですよ~」
最初は緊張していたが、何とか宣伝をすることができた。すると、『黄鈴屋』に客が3人来たのだ。
「あの…すみません。ご飯を私たちにくれませんか?」
子供の妖怪だ。紅葉に話しかけたのは、3人の妖怪の長女だろう。髪は肩くらいまであり、桜の柄のかかった赤い着物を着ている。紅葉の身長より低い。
「この豆腐とお金で買い取ってください」
2人目の子供はお盆の上に豆腐を持ち歩いている。髪は坊主頭。笠を被り、くすんでいる青い着物を着ていた。
「お手伝いをさせてください。お願いします」
3人目はおかっぱの髪をし、山吹色の着物を着ている。そして、桃色のかかった花柄の毬を持っていた少女だ。
(どうしよう…でも、このままいれないって言うわけにも行かないよね…だったらいっそ、中に入れちゃおうか)
紅葉はそう思い、3人の妖怪たちを中に入れることにした。
「取りあえず、中に入って」
3人の妖怪たちを店の中に入らせた。これであってるのか。紅葉はますます心配になる。
(もし、3人がお金を持ってなかったら私のせいになる)
そのことを考えながらも、必死に宣伝を続けた。自信はないが、仕事だと思い声を出し続けた。
3人の妖怪たちが店の中へ入ると、玄関には誰もいない。すると、豆腐を持ち歩いている男の子が声を出そうとしていたのだ。
「お邪魔しますっ」
そのことで、2人は驚いてしまった。
「しーっ。声が大きいから静かにして」
赤い着物を着た少女がその男の子の口を手で押さえた。そのあと、静かな声で注意をした。すると、誰かの足音が聞こえた。
「怖いよ…助けて…」
山吹色の着物を着ていた少女が怯えた。毬を抱えながら怖いと思っていた。すると、玄関に来たのは海斗だった。
「あれ?どうしたの?」
海斗は3人の妖怪たちに声をかけた。そのことに対して、3人はまだ怯えていた。
(もしかして、この3人たちって余所から来たのかな…虐待とか…)
海斗はそれでも受け入れながら3人の妖怪たちを案内させた。
着くと、そこは子供たちのためにおもちゃが置かれている部屋がある。
「着いたぞ~!じゃんじゃんと好きなだけ遊べばいいよ!もちろん、僕は仕事も終わって休憩中だからね!」
すると、豆腐を持ち歩いている男の子が海斗に豆腐を買わないかを聞いた。
「人間のお兄ちゃん、この豆腐とお金交換しませんか?」
「あたしもお手伝いをさせてください。お願いします」
山吹色の着物を着ている少女が手伝いをさせないか。とお願いされた。
「あ…君、ごめんね。この仕事はもうちょっと大きくならないと出来ないの。でも、豆腐なら買い取れるけど」
それでも、その少女は必死にお願いをしていた。海斗はどうすればいいのか分からなくなっていた。
「やった~!!」
豆腐を持ち歩いている男の子は喜んだ。豆腐を買い取ってくれる客が海斗が初めてだった。
(この子たちは何でこの店にやってきたんだ…)
海斗は3人の妖怪たちに対して、疑問に思っていた。
「ねえ、君たちは何でこの店に来たの?あ…大体で良いよ」
海斗の質問に3人はとても困っていた。その質問に答えられないのか。あるいは答えては行けないことなのか。すると、赤い着物を着た少女が答えてくれた。
「私たちはある人から逃げるためにここへ来ました。ちなみに私はお花といいます」
ある人とはどういうことなのだろう。海斗はそう思っていた。
「この2人も同じ。兄弟ではありません。笠を被っている男の子の方が心路。一番小さい女の子が早知。私たち、とにかく金を稼がないと行けないと思ってここへ来ました」
そのことを知り、海斗にとっては信じがたい話だ。
(じゃあ、もしかしてこの3人は誰かの奴隷になってここへ…?)
海斗はあることを思い出した。一通の手紙が着たことから。神楽坂でそれぞれの店の従業員が次々と居なくなり、今だに解決されていない事件。
(1人、2人、3人と次々と居なくなる目的ってもしかして…)
犯人はまだ分かっていないが、目的はわかったかもしれない。
「話してくれてありがとう」
海斗は目を細めながら3人に返した。犯人の特徴を聞こうとしたが、3人はまだ子供だ。また、そのうちに聞けば良いと感じた。
「じゃあ、君たちはしばらくここにいていいよ。他の従業員には伝えておくから」
優しい口調をしながら3人に伝えた。すると、3人は安心した表情になった。
「暗い話しはそこまでにして、僕と遊ぼっか!なにして遊ぶ?」
高揚しながら海斗は何して遊ぶか3人に質問した。この部屋の中にあるおもちゃは、こけし、双六、めんこなどだ。
「めんことか羽根つきとか双六があるけどどうする?」
海斗が木製のおもちゃ箱を漁っている。3人に後ろを振り替えると、そこにいたのは心路だった。
「わあ!」
海斗はいつも驚いている。誰かが既にいたときには大抵吃驚する癖があった。
「豆腐を買い取ってください!」
「わかったわかった!買い取るよ。ちなみに何円だ?」
すると、心路は「10万円」と答えた。
「冗談だよね…10万なんて…」
10万円は持っていない海斗にとっては、とても買い取れない金だ。
「あ、ごめんなさい。冗談でした。本当はたったの300円でした」
心路は少し間抜けなところもあった。
「え?冗談でよかった~」
海斗は買い取る金が10万ではなく、300円で安心した。




