47.幽夢戦闘 その弐
(今回は調子いいぞ!アンラッキーだと思っていた僕がここにいる死者達を斬り倒せるなんて)
海斗は森の中にいる死者達を妖幻刀で素早く斬り倒していた。だが、腰と背中が痛い。神怪が突き飛ばし、落ちたときに背中を地面に強打したせいだ。
(まだ背中と腰が…)
それでも耐えながら、死者達を斬り倒し続けていた。すると、海斗の後ろから複数の死者が襲いかかる。
(…はっ!まずい!)
そのことに気付いた瞬間、死者達を素早く斬った。
(ふぅ~。危なかった…早く気付いてよかった)
まだ残りの死者達もいる。海斗は気を抜かずよう、今はその死者達を倒すことを集中した。
(大丈夫だ。ここは多分、夢の中だ。そこで会った死者達を斬り倒している。今はここを訓練場だと思って斬ろう)
海斗は、呼吸を整えながら頭の中を空っぽにした。すると、「ちょっといいか」という男の声が聞こえたのだ。その声がまるで、おじさんのような渋い声だった。
「一回しか言わないからよく聞け」
「何だ!?僕は今、真っ暗な森の中にいる死者達を斬り倒している最中なのに?」
思わずそういってしまった海斗。だが、その男は何も返さなかった。
「私はこの境界線に住んでいた老仙だ。君は確か、鳥山海斗だよね?」
そのことに対して、海斗は「はい。そうです」と返した。
「一瞬だけだから聞け。今、持っている妖幻刀は炎、水、草、雪、雷の五大元素が使える。そこで妖術が使える君はその中で想像をして倒していけ。以上だ」
すると、老仙という男の声は消えた。一体、あの男は何者だろう。海斗はそう思っていた。
(まあ、とりあえずあの五大元素を僕が想像をすればいいんだな)
海斗は、まず試しに炎を想像した。炎は赤く燃える。それが大きくなると、どこまでも燃え移っていく。
(あとは何だっけ?)
炎を想像する時間を掛けていると、死者達が襲いかかろうとしてくる。そうすると、キリがない。すると、海斗に近づいてきた死者一人を妖幻刀で斬った。
「ハァ…ハァ…」
海斗の呼吸が荒くなった。激しく動いたせいか体力も限界に近づいてくる。それでも、訓練場だと思い諦めるわけには行かなかった。
(あ、そうだ。この死者を斬ったらすぐに消えるんだ。だから、斬りまくっていくか!)
海斗は、五大元素を想像するのではなく斬り刻むことに集中する。
また、その死者複数が前後左右に海斗を襲撃。だが、斬るタイミングやリズムを乱れることはなかった。その能力も身に付くと、一瞬にして倒した。
(やったぞ!)
心の中では吹っ切れた。そのこともあり、ガッツポーズをしたのだ。
「すっきりした~」
森の中にいる死者達を倒したお陰か恐怖感を感じなくなった。海斗は、森の奧へと入っていった。
「それにしても歩いてるだけだと暇だ。青蘭とか居たらな~」
海斗は、話し相手が欲しくなった。だが、ここは海斗の夢の中。境界線でもある。だけど、何と何の間の境界線なのかは今一分かっていない。
「早く家に帰りたい。アニメ見たいしゲームもしたい」
そう言いながら、森の奧へと向かった。真っ暗で何も見えない。懐中電灯も持ってないので慎重に歩かないと行けなかった。
「そろ~り。そろ~り」
海斗は、音を立てずに一歩ずつ進んで行った。残りの死者達もいないか心配でもある。そのため、見回る必要もあった。
(あ…こっそり歩くのも時間がかかるな…)
音を立てずに歩くことも時間の無駄だ。それ以外の移動方法を考えた結果。海斗は、ある走り方を思い付いた。
「試してみるか~。あの走り方を」
海斗は、忍者のような走りをしながら奧へと進んでいった。体を横向きにし、半身の姿勢で走る。歩幅を小さくすることで、腰の痛みは少し治まった。
忍者走りを続けてうちに、森を抜け出すことができた。すると、ある場所へと辿り着いたのだ。
「何…これ?」
そこは、湖の上に中華風の門があった。幻想的で綺麗だ。だが、緑葉の木で覆われたせいか門の中が見えない。
海斗がその門に行こうとしても道がないため、その先に進めない。
(僕、泳ぐの苦手だけど泳いで進むか…それとも、諦めるか…)
その門の先に進みたいが、湖があるせいで進めない。泳ぐか諦めるか迷っているときだ。背後から誰かが来た。
「おい、ご主人様はどこにいるのだ。答えろ!」
海斗が後ろを向くと、そこにいたのは会ったことのない男性だ。
その人は、暗めの赤色の髪をし、一つに束ねていた。前髪は真ん中に分かれている。瞳は紫紺。真っ黒な漢服。カラスの羽のような黒みのかかった紫の羽織。紫色のタッセル耳飾りをしている。
「だぁ~~!!」
あまりにも驚いたせいで後ろに下がり、湖に落ちてしまった。だが、海斗は泳げないせいもあり溺れてしまった。
「君、大丈夫か…」
「あ、すみません…助けてください…」
その男に手を引っ張ってもらうことに成功した。水に濡れただけだった。ここは海斗の夢の中でもあるので、冷えたりしない。不思議だ。
「ありがとうございます…」
海斗は頭を下げた。だが、その男は「礼はいい」とぶっきらぼうに返した。
「ただ俺が聞きたいのは、ご主人様がどこなのかを知りたいだけなんだ」
すると、海斗はそのことに見覚えがあった。この夢の中にいる神怪。その人のことだろうと思っていた。
「あの、すみません。もしかして、探している人って神怪という人ですか?」
神怪の名前を口に出してしまった。このままではまずいと思っていた。だが、その男は「そうそう!」と思い出したのだ。
「その人のことを探してたんだよ。助かった。ちなみに俺は人間じゃない」
海斗はそのことにこんがらがっていた。その男は人間のように見えていたからだ。
「名前は、朱雨。神怪の守護霊だ」
守護霊と聞き、海斗は信頼できそうな偏見をもっていた。
「僕の名前は鳥山海斗です」
海斗は、自分の名前を出した。気付いた時に、朱雨は海斗のことをじっと見ていたのだ。
「君、珍しい名前だな。聞いたことがないぞ」
「え?そうですか?僕にとって、珍しくないと思いますが…」
途中で何を言おうか戸惑いが出てしまった。すると、海斗はあることを思い出した。
「あ!そうだ。神怪を探しに行きましょう!僕、神怪がどこにいるか知っています!」
海斗は、焦りながら言った。声量も大きい。そのせいか汗をかいた。
「あ…そうだな…」
朱雨も躊躇いがあったが、何とか返すことができた。
早速、神怪を探しに行こうと2人は森から出ることにした。と、その時だ。海斗が目眩をしていた。
(何…だろう…何でこういうとき…)
すると、海斗が突然、バタりと倒れたのだ。
「海斗!?おい、しっかりしろ!」
そのことに気付いた朱雨は、起こそうと必死に声を上げながら体を揺らした。だが、目を覚ますことはなかった。
「はっ!」
海斗が目を覚ますとそこは、寝室部屋だった。夢の中だ。
「気のせいだよね…神怪とか朱雨なんて夢の中にいた人たちだから…実際に会わないよね…」
独り言で、気のせいだと海斗は思っていた。
(何か…僕、本当に今奇妙な感じになってる)
海斗は汗をかきながら、そう感じていたのだった。




