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妖の追凶〜time of hell〜  作者: 羽波紫希
華の道しるべ編
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44.おかえり

「あ、そういえばまだご飯が…」


海斗は、夕飯を食べていないことに気付いた。1日3食のご飯を毎日食べていない。そのせいか空腹だ。


(お腹へった…何日も食べてないからもうだめだ…)


既に空腹な青蘭にとって、倒れる寸前だ。


「ちょっと待っててね。今、あなたたちの夕飯を用意するから。今は、美食家の東様が来たからお客さんは来ないから安心して」


藍は急いでたくさんの食器を下げている。その姿を見ていた紅葉も手伝い始めた。



数分後、夕飯が既に出来上がっていた。作っている間、部屋の中は海斗と青蘭の2人っきり。青蘭の方は空腹で寝込んでしまったのだ。


「青蘭、ご飯出来たよ」


海斗が体を揺らしながら青蘭を起こした。すると、青蘭は空腹で無気力になっていたが気を取り直した。


「海斗、夕飯はどこだ?」

「もう既にテーブルの上に置いてあるよ」


海斗は常識を持っているような感じに返した。そこに置いてあるのは海老の天ぷら、鯛やヒラメなどの高級魚、卵料理などが置かれていたのだ。


(お腹すいた。早く食べたい)


待ちに待った夕飯に海斗はもう待ちきれない気分だ。


そして、夕飯の時間になる。全員4人が揃うと手を合わせ一斉に食べ始めた。


(僕はどれにしようかな)


すると海斗は、目の前にあるさつまいもの天ぷらを取ることにした。だが、箸で取ろうとしたときだ。海斗の隣に座っていた青蘭に素早く取られてしまった。


(え、なんで!?先に僕が取ろうとしたのに…僕の天ぷらが…)


海斗は、天ぷらのことは諦めることにした。青蘭の様子を見るとかなりの大食いだ。目の前にある寿司、天ぷらなど全て完食。それぞれ1人一つ置いてある白米、味噌汁もあっという間に食べきっている。


(よく食べる妖怪だな…)


空腹だった海斗もさすがに食欲旺盛だと思っていた。


(藍と紅葉の方はどうだろう)


藍と紅葉の様子を伺うと、既に上品に食べていた。紅葉は鬼の国の貴族だからか食べる姿勢も完璧。


藍も神楽坂で育ったからか既に身に付いているだろう。黄泉の国にいる女妖怪はかなりの品格を持っている。


(我慢だ我慢だ。私は美貌を保つために少食のフリをしている。だからここでたくさん食べたら太るわ〜)


右手で茶碗を持ち、左手で箸をもって食べている。この状態を耐えられるか。藍にとって3人が食べている中でダイエットをするのは辛い。だが、その中でも我慢だ。


「どうした?食欲ないんですか?」


声をかけてきたのは海斗だ。どう返せばいいのか分からないせいか戸惑ってしまった。


「あ、食欲あるよ。本当に」


藍はただ愛想笑いをしながら返した。「そう?」と海斗は疑問に思っていた。


「鳥山くんも食べないの?ご飯全然進んでないけど…」


すると、海斗は2人を見ていたせいか進んでないことに気付いた。


「あ!白米と味噌汁もない!」

「ごめん海斗、俺我慢できなくて全部食べちゃった…」


青蘭が海斗の分まで食べていたことに海斗は苛立っていた。すると、襖を開ける音がした。


「おかわりを持ってきました。ご自由に食べてください」


従業員の1人がおかわりを持ってきたのだ。そのことで海斗は、チャンスだと思った。


「ありがとうございます!」


作られた料理を置かれた直後、海斗はすぐに食べ始めた。海斗が食べたのは醤油漬けのシャリの鮪寿司。その他にも海老、コハダ、アナゴ、イカなど次々と貪るように食べていた。


「うめ〜!」


海斗は思わず近所迷惑になるくらいの大きさで叫んだ。あまりにも空腹だったので我慢の限界だった。



夕飯が食べ終わり、海斗と紅葉は眠くなったので就寝することにした。そのため、寝室を借りた。


「僕はもう寝る…何日も眠れてないから…」


海斗はあくびをしていた。既に眠そうだ。


「私も火炎の妖術が暴走しないように早く寝ますね。おやすみなさい」


紅葉は何だか礼儀が良い。海斗はそう感じた。


(僕も三途の川に行ったとき、(あかつき)さんに礼儀が良いって言われたっけな)


海斗は、謎の使用人である暁のことを思い出した。暁に懐中時計を預けてもらって数日が経つ。そのためか研究が進んでいるか心配だ。


(紅葉もすっかり寝てるな)


海斗もすぐに眠り始めた。



一方、青蘭のほうは二階の窓から神楽坂の景色1人でを見ていた。


「ここに来たのも何年ぶりだろう」


青蘭が独り言のように小声で言った。すると、後ろにいる気配がした。一体誰なのかと青蘭は後ろを除いた。


「わあ!」


そこにいたのは藍だった。青蘭は吃驚をした。


「びっくりしちゃった?」

「なんだ藍か」

「まぁ、久しぶりに驚かそうかな〜と思ってこっそり来ちゃった」


藍は青蘭のとなりに座ると、窓から神楽坂の景色を見た。今回は美食家が来たからか客がいない。灯りがついているお陰で夜でも昼のように明るい。


「久しぶりにこの景色が見ることができたね」

「本当にそうだね」


藍は微笑みながら言った。だが、青蘭の方は目を細めたところが一つもなかった。けれど、何だか落ち着いているようだ。


(本当によかった)


藍は心のなかではそう思った。すると、藍はある話題を持ち出した。


「ねえ、青蘭。小さい頃、ここに来て私とこの景色を見たの覚えてる?」


そのことに対して、青蘭は「いや、全然覚えてない」と返した。


「そっか〜そりゃそうだよね…」


藍は気を取り直して、違う質問をすることにした。


「じゃあ、私はこの街で怪力っていうことは知ってる?」


すると、青蘭は「知ってるよ」と言った。


「確か…ゴリラくらいだっけ?」

「何?その動物?」


藍は完全にゴリラのことを知らないようだ。もし、このことを知っていたら怒るだろう。


(藍が知らなくてよかった…)


青蘭は心の中では恐る恐ると震えていた。


「まっ、でもよかったわ。青蘭がここに来てくれて私すっごく嬉しいの」


藍は満面の笑みを浮かべていた。そのことに青蘭は見開いた。すると、青蘭は人間の姿から妖狐の姿に戻る。白髪の一つに高く結んでいた。


「今はお客さんがほとんど通ってないから、藍に質問をする」


そのことに藍は期待していた。


「人間の姿をした俺と…今の俺、どっちがいいと思う…?」


すると、藍はその選択に最初は迷っていた。だが、この選択は藍にとっては既に決まっていた。


「やっぱり、今のほうがいいな。だって、そっちのほうが本当のあなただと証明できるからだよ」


青蘭は「そっか」と返した。微笑みはない。だがその表情は落ち着きがあり、穏やかに見えた。


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