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妖の追凶〜time of hell〜  作者: 羽波紫希
華の道しるべ編
43/61

42.晩餐

次第に暗くなると、お客さんが来る人数が多くなる。そうすると、藍たちは店の開く準備をしなければならない。


「おっと、そろそろ支度か。ごめん。私、ちょっと準備をしてくる。だから3人はここで待ってて」


藍は化粧をするため、急いで部屋を去った。


「藍さん、何だか忙しそうだね」


そのことを聞いた青蘭もそう感じていた。本当に無理していないか。店のことを第一に考えているばかりに藍を心配した。


「それは俺もそう思っている。だけど、店だらけのこの街は人気を付けようといるんだよ」


海斗は「人気…?」と疑問に思いながら返した。


「人気というより競争率が激しい。だから、この神楽坂もどのくらい人気が高いかの店。それだけでなく、人の美しさもだ」


つまり、ここは弱肉強食の世界であり、完璧さを求められる。そのことを対して、紅葉は頷いた。すると、海斗は気落ちしていたのだ。


「僕、やっぱりここは向いてないかも…」

「え?いきなりどうした?」


青蘭が海斗に聞いた。


「自分、何だかここは完璧を求められるような気がするんだよ。だから、向いてないかも…」

「海斗、それは神楽坂で暮らしている妖怪だけだよ」


青蘭が海斗を慰めようとしている。だが、海斗は青蘭が無理しているように見えたのだ。すると、襖を開ける音がした。そこにいたのは藍。まだ薄紫の着物を来ていた。


「誰か一人来てくれる?ちょっと人手不足で」

「じゃあ、私が行ってもいいかな?」


紅葉が立ち上がり、開店の準備の手伝いへ行くことにした。


「さっきの続きの話にしよう」

「そうしようか」


そして、2人は神楽坂の話に戻った。



藍と紅葉が控え室で化粧をしていた。紅葉は化粧をするのが初めて。そのため、やり方を理解するのが曖昧だ。


「藍さん、本当にごめんなさい。普段、化粧はほとんどしないので」

「いいよいいよ。初めてだから仕方ない。今回は私がやってあげるよ」


藍が紅葉に化粧をするのを手伝った。


「だって、紅葉は逆に化粧をしたほうがいいもん」


笑顔で言う藍に対して、紅葉は照れ臭くなった、


「そ、そうかな…」

「そうだよ!もっと自信をもって!」


そう言ったあと、藍は紅葉の化粧の手伝いを続けた。肌を白粉で顔全体。桃色のアイシャドウを塗る。さらに、口紅も塗ることで紅葉がより美しくなってきた。


「これだったら行けるかもよ!」


藍がグッドサインをしながら言った。



一方、海斗は神楽坂について青蘭に聞いていたのだった。ここが競争率が高い理由を。そのことに対して、青蘭はすぐに答える。


「神楽坂では、それぞれの店で人気な妖怪をスカウトすると高額な金が貰える」


そのことを聞き、海斗は「お金!?」と話を遮ってしまった。


「まだまだ終わってないよ」

「あ、すみません」


無愛想に青蘭が言った。だが、海斗は黄泉の国に行く前の頃の癖で丁寧語が出てきてしまった。それに対して、「全然」と無愛想に返した。


「じゃ、続き話すね」

「はい、お願いします」


海斗がはっきりと返したのだった。


「そのお金が貰えるのはある妖怪の承認を貰えた妖怪だけ。名前は珠璃(じゅり)。呪いの国の長だ」


珠璃と聞いたとき、海斗は初めて知った。


「今は表には出てないが、豪華な屋敷で暮らしているらしい」


海斗は、首を振りながら頷いた。すると、青蘭の表情が少し変わっていた。普段、無愛想だったが少し苛立ちを見せていたのだ。


(俺の親父の名前を出すだけでイラつく…)


それでも、海斗に当たることはなかった。


「でも、その人は確か、ずっと前に俺の父とライバルだったんだよね」


海斗は「そうなの!?それはほんとなの?」と返した。


「そうだよ」


青蘭は海斗に違和感を与えない表情をしながら言った。穏やかな顔をしていたのだ。


「ありがとう!教えてくれて。また聞かせてよ!」


海斗は笑顔で言ったあと、目を細めた。そのことで、とりあえず海斗に疑われなくてよかったと感じた。


(今、嘘を付いて…しまった…)


本当はライバルなんかではなかった。それどころか犬猿の仲とは言えない。


―また聞かせてよ!―


あの言葉を思い出すと、ライバルではないと言いにくい。黄泉の国のことがまだ曖昧な海斗にそのことを言うと、こんがらがる。海斗は、良いライバルのほうだと思っているのだった。すると、襖が開く音がした。


「鳥山くん、青蘭くん」


そこにいたのは藍だった。薄紫色の花の模様が描かれた着物を着ていたのだ。美少女に笑顔で言っているのが完全に似合っている。


「これから、ここに(あずま)というイケメン美食家が来るから2人とも、晩御飯は一緒にその人と食べてくれる?」


なんと、海斗と青蘭は今回の晩御飯に誘われた。


(これはチャンスかもしれない。もし、その人が犯人なら)


このことに青蘭はチャンスだと感じた。東というイケメン美食家の怪しい行動や言動などが見られる。


「ちょっとこっち来て」


青蘭は手招きをしながら海斗に静かな声で話しかけた。


「海斗は東という人の怪しい行動とかを見てくれる?なるべくなら怪しまれずに」

「わかった。僕も何とか頑張るから」


海斗も成功できるかは分からない。だが、これはミッションだと思ってやろうとしていた。


「ん?何してるの?2人でこそこそ話をして」


それを見ていた藍は気になっていた。


「何でもないよ」


青蘭が言っていたことに対し、藍は目を細めながら青蘭のことをじっと見ていた。


「なんか怪しい。絶対なんか隠し事してそう」


藍は2人が何かこそこそ話しているのを見て、作戦などを考えているように見えた。


「それ、あとで聞かせて。絶対にね」 


気持ちを切り替えた。仕事に戻ろうと藍は、その場を立ち去った。



そして、美食家の東という人と複数の男女が『黄鈴屋』に現れた。その人は玄関を上がり、食事を提供された部屋へと来ていたのだ。


その姿を見たとき、青蘭と同じくらいの美青年だ。2人は東が来たとき、怪しい言動や行動を見ていた。


(どういう行動をするんだ。この人は)


特に青蘭は警戒をしていた。すると、東と複数の男女はローテーブルの真ん中にある座布団に座ったのだ。


「東様。今からここのおすすめのメニューがあります」


東の隣にいた男性が喋り出したのだ。


「そうなの。じゃここでどういう味なのかを頂こうか」

「そろそろ来るそうです」


2人の会話を東の席から離れたところから青蘭は見ていた。だが、海斗はご馳走が来ないかを待っていたそのときだ。歩いている音が聞こえた。


(何だろう…)


青蘭がそう思っていると、ご馳走がこの部屋へと来たのだ。そのご馳走は、高級食材を使っているばかりだった。さすが神楽坂。ここまで華やかだ。


「これは、海老に蟹、刺身、寿司、そして和菓子まで!?僕が食べたことがないものばかりだ!」


海斗はご馳走のことで夢中になっていた。


(ま、いいや。俺は、あの人のことを…)


それでも、青蘭は東の怪しい行動を見張ることに集中した。


ようやく静かになった頃に、藍と紅葉がこの部屋に来たのだ。


「お待たせしました。東様、どれでもいいので召し上がってください」


箸を持ち、先に東はアワビの寿司を一口食べた。今は東以外、一人も食べていない。多分、先に美食家が優先だ。これが、神楽坂の晩御飯だった。

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