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妖の追凶〜time of hell〜  作者: 羽波紫希
華の道しるべ編
38/61

37.旧友への想い

まだ鬼霊殿(きりょうでん)の広間で宴会が続いていた。鬼の貴族の一人が酒に酔っ払いながら歌う。また、そのもう一人の人は扇子を持ちながら派手に踊っていた。


(なにこれ…これが宴会何なの!?)


だが、海斗は初めてなのかこの宴会に馴染むことができなかった。


(うっ…。酒臭い匂いが…)


海斗は広間中の匂いに耐える。左を向くと青蘭は出された料理を食べていた。米、魚類、野菜の漬物、果物など。


(この匂いを気にしないで食べれる人っていいな…)


食べている青蘭を海斗はじっと見ていた。すると、青蘭が右を向いていたのだ。


「あれ?海斗は食べないのか。食べないんだったら俺が食うよ」

「いや、大丈夫。すぐに食べるよ」


海斗は愛想笑いをしながら返した。そのことに対し、青蘭は「ふ~ん」とつまならなさそうな表情をしながら言った。


「いただきます」


手を合わせ、小声で言った。この匂いを耐えるため、海斗は箸をすぐに持つ。急いで出された料理を箸で掴み、掴んだものを口の中に入れた。


「鳥山くん!?それ、やめた方がいいよ」


そのことに気付いた紅葉は、海斗にやめるよう注意した。


「そうなの!?」

「言い忘れたがここでは、急いで口の中に入れるのは良くないですよ」


ようやく海斗は納得した。あまりにも空腹だったのでつい急いで口の中に入れてしまった。周りを見るとそのことはやっていない。海斗は令和で生きていたので、食事のル一ルも違うことが知らなかった。


(もしかしたらここでは貴族もいるからか…)


鬼の国の貴族から上品がない、落ち着かない人って見られているかもしれない。海斗は恥ずかしくなり、顔を真っ赤にした。


再び箸を持ち、食事を進めようと顔を上げた。すると、既に海斗以外は食事を終えていたのだ。


「え!?もうみんな食べ終えてる!」


隣にいた青蘭と紅葉は和歌、蹴鞠などそれぞれ好きな場所へと行っていた。蓮、元緋も同じだ。そのことに対し、海斗は焦った。急いで食べ終えたい。けれど、品がないと思われたりするのも見られたくない。


(だったら、これしか!)


海斗が箸で掴んだ米を急いで口の中に入れようとしたときだ。海斗の目の前を歩いていた鬼の貴族の一人が足を滑った。


「わっ!」


その人が運んでいた麦茶が海斗に溢してしまった。


「熱っ!!」


海斗は溢してしまった麦茶があまりにも熱いため、悲鳴を上げたのだ。


「あ!悪い!大丈夫か」

「ありがとうございます。でも僕は大丈夫です」

「何か拭くもの持ってくるからちょっと待ってろ」


そう言い、その人は拭くものを持ってこようと探し回る。



その人が拭くものを持ってくるとすぐに床を拭いた。その後、海斗に渡して熱い麦茶で濡れてしまった部分を拭く。


「本当にごめんな。俺、こう見えて間抜けなところもあるから」

「いえ、僕も大丈夫です。もう落ち着きました」


そのことに対し、海斗は朗らかな表情をしながら返した。すると、その人は安心していたのだ。


「そういえば、あなたは何をしていたんですか」


暇だった海斗は咄嗟に聞いた。


「俺?俺はね、今何もしてないんだよね。ちなみに俺の名前は多々羅(たたら)。君の名前は?」

「鳥山海斗です。まだ黄泉の国には慣れていませんけど」


そのことに対し、多々羅は「最初はそうだよ」と返した。



海斗が食事を終え、多々羅と一緒に縁側へと移動をした。着くと、鬼の貴族は居なかった。だから、ゆっくりと会話ができるのだ。


「そういえば、多々羅さんって参加とかしないんですか。ほら、和歌や蹴鞠、あとは舞踊りとかには」


すると、多々羅は少し沈んだ表情をしていた。


「参加したいんだけど、そういう気分には乗れないんだよね。今はね」


海斗は咄嗟に「それは何でですか?」と質問をした。


「ツッコミをしてくれる人がもう、ここにはいないから」


そのことを聞くとなぜか少し悲しくなる。誰だろう。海斗はそう感じたのだ。


「その人は…」

雷千(らいせん)。紅葉ちゃんと暮らしていた貴族でもあって俺の友達だよ。俺が変なことを言ってもツッコミをしてくれるし、言いたいことがあればすぐに言う。それだけでじゃなくて妖術だってすごかったよ」


すると、海斗は思い出したのだ。紅葉が何か植えていたとき、海斗に間違えて雷千と呼んだことを。その話の続きを聞くと、以前に雷千は紅葉のことが好きだったらしい。


そのきっかけは、集団盗賊『桜鶴円(おうかくえん)』を倒そうとしたときのこと。まだ残っていないか確認をするため、別の道へ行った。そのときに雑用係だった紅葉がいたのだ。


このときに雷千は殺そうか考えていたらしい。けれど、当時の紅葉を見て、将来は集団盗賊を作る見込みは無さそうだと判断した。その結果、鬼霊殿で暮らすことになる。そこで暮らすうちに紅葉のことが好きになったらしいのだ。


「だから、雷千って本当はいいやつなんだよね。でも、大嶽丸っていうやつの妖術で帰らぬ人になったなんて…」


多々羅が言っていることを聞くと海斗も家族のことを思い出した。


(多々羅さん、僕も何だか分かるよ。大切な人が失ったことを。母さんと日陽を。そのときはもう自分一人では生きていけない。帰る場所がないと思った)


海斗はなぜか口には出さなかった。それは、口で言いたいがそっとするためだ。すると、海斗はあることを口で言うことにした。


「多々羅さん、言っちゃいますけど、雷千さんを失ったことはもう仕方ありません。そのことで落ち込んでも帰ってきませんから。でも、多分雷千さんはあなたのことを忘れてはいないと思います」


そのことを聞き、多々羅は「そうだよな」と言った。


「だから、あなたは雷千さんのことを信じて生きることを意識してください」


確かに海斗の言う通りだ。どんなに落ち込んでも帰っては来ない。だから、黄泉の国で生きるしかないのだ。


「うん。海斗の言葉は効いたよ。友達のことを信じないで生きてどうするんだよ自分」

「僕もこの経験はしたことがあるので」


海斗がこう返した。すると、多々羅の束帯の懐から紙のようなものが落とした。そのことに気付いた海斗は拾う。


「多々羅さん、落ちましたよ」

「あ、これなんか今日の昼か朝にここに来たんだよね。この手紙」


海斗は間違えて手紙の内容を見てしまった。その内容は、鬼の貴族たちではなく、なんと青蘭だった。 


「なんで!?」


2人は急いで青蘭のところへ向かったのだ。


「青蘭~!これ見て!」

「うるさいぞ!静かにしろ!」


海斗は大声で青蘭の名前を呼んだ。そのことに対して、多々羅は海斗に注意をした。


読んだら、☆☆☆☆☆の評価と感想、リアクションをくれると幸いです。

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