37.旧友への想い
まだ鬼霊殿の広間で宴会が続いていた。鬼の貴族の一人が酒に酔っ払いながら歌う。また、そのもう一人の人は扇子を持ちながら派手に踊っていた。
(なにこれ…これが宴会何なの!?)
だが、海斗は初めてなのかこの宴会に馴染むことができなかった。
(うっ…。酒臭い匂いが…)
海斗は広間中の匂いに耐える。左を向くと青蘭は出された料理を食べていた。米、魚類、野菜の漬物、果物など。
(この匂いを気にしないで食べれる人っていいな…)
食べている青蘭を海斗はじっと見ていた。すると、青蘭が右を向いていたのだ。
「あれ?海斗は食べないのか。食べないんだったら俺が食うよ」
「いや、大丈夫。すぐに食べるよ」
海斗は愛想笑いをしながら返した。そのことに対し、青蘭は「ふ~ん」とつまならなさそうな表情をしながら言った。
「いただきます」
手を合わせ、小声で言った。この匂いを耐えるため、海斗は箸をすぐに持つ。急いで出された料理を箸で掴み、掴んだものを口の中に入れた。
「鳥山くん!?それ、やめた方がいいよ」
そのことに気付いた紅葉は、海斗にやめるよう注意した。
「そうなの!?」
「言い忘れたがここでは、急いで口の中に入れるのは良くないですよ」
ようやく海斗は納得した。あまりにも空腹だったのでつい急いで口の中に入れてしまった。周りを見るとそのことはやっていない。海斗は令和で生きていたので、食事のル一ルも違うことが知らなかった。
(もしかしたらここでは貴族もいるからか…)
鬼の国の貴族から上品がない、落ち着かない人って見られているかもしれない。海斗は恥ずかしくなり、顔を真っ赤にした。
再び箸を持ち、食事を進めようと顔を上げた。すると、既に海斗以外は食事を終えていたのだ。
「え!?もうみんな食べ終えてる!」
隣にいた青蘭と紅葉は和歌、蹴鞠などそれぞれ好きな場所へと行っていた。蓮、元緋も同じだ。そのことに対し、海斗は焦った。急いで食べ終えたい。けれど、品がないと思われたりするのも見られたくない。
(だったら、これしか!)
海斗が箸で掴んだ米を急いで口の中に入れようとしたときだ。海斗の目の前を歩いていた鬼の貴族の一人が足を滑った。
「わっ!」
その人が運んでいた麦茶が海斗に溢してしまった。
「熱っ!!」
海斗は溢してしまった麦茶があまりにも熱いため、悲鳴を上げたのだ。
「あ!悪い!大丈夫か」
「ありがとうございます。でも僕は大丈夫です」
「何か拭くもの持ってくるからちょっと待ってろ」
そう言い、その人は拭くものを持ってこようと探し回る。
その人が拭くものを持ってくるとすぐに床を拭いた。その後、海斗に渡して熱い麦茶で濡れてしまった部分を拭く。
「本当にごめんな。俺、こう見えて間抜けなところもあるから」
「いえ、僕も大丈夫です。もう落ち着きました」
そのことに対し、海斗は朗らかな表情をしながら返した。すると、その人は安心していたのだ。
「そういえば、あなたは何をしていたんですか」
暇だった海斗は咄嗟に聞いた。
「俺?俺はね、今何もしてないんだよね。ちなみに俺の名前は多々羅。君の名前は?」
「鳥山海斗です。まだ黄泉の国には慣れていませんけど」
そのことに対し、多々羅は「最初はそうだよ」と返した。
海斗が食事を終え、多々羅と一緒に縁側へと移動をした。着くと、鬼の貴族は居なかった。だから、ゆっくりと会話ができるのだ。
「そういえば、多々羅さんって参加とかしないんですか。ほら、和歌や蹴鞠、あとは舞踊りとかには」
すると、多々羅は少し沈んだ表情をしていた。
「参加したいんだけど、そういう気分には乗れないんだよね。今はね」
海斗は咄嗟に「それは何でですか?」と質問をした。
「ツッコミをしてくれる人がもう、ここにはいないから」
そのことを聞くとなぜか少し悲しくなる。誰だろう。海斗はそう感じたのだ。
「その人は…」
「雷千。紅葉ちゃんと暮らしていた貴族でもあって俺の友達だよ。俺が変なことを言ってもツッコミをしてくれるし、言いたいことがあればすぐに言う。それだけでじゃなくて妖術だってすごかったよ」
すると、海斗は思い出したのだ。紅葉が何か植えていたとき、海斗に間違えて雷千と呼んだことを。その話の続きを聞くと、以前に雷千は紅葉のことが好きだったらしい。
そのきっかけは、集団盗賊『桜鶴円』を倒そうとしたときのこと。まだ残っていないか確認をするため、別の道へ行った。そのときに雑用係だった紅葉がいたのだ。
このときに雷千は殺そうか考えていたらしい。けれど、当時の紅葉を見て、将来は集団盗賊を作る見込みは無さそうだと判断した。その結果、鬼霊殿で暮らすことになる。そこで暮らすうちに紅葉のことが好きになったらしいのだ。
「だから、雷千って本当はいいやつなんだよね。でも、大嶽丸っていうやつの妖術で帰らぬ人になったなんて…」
多々羅が言っていることを聞くと海斗も家族のことを思い出した。
(多々羅さん、僕も何だか分かるよ。大切な人が失ったことを。母さんと日陽を。そのときはもう自分一人では生きていけない。帰る場所がないと思った)
海斗はなぜか口には出さなかった。それは、口で言いたいがそっとするためだ。すると、海斗はあることを口で言うことにした。
「多々羅さん、言っちゃいますけど、雷千さんを失ったことはもう仕方ありません。そのことで落ち込んでも帰ってきませんから。でも、多分雷千さんはあなたのことを忘れてはいないと思います」
そのことを聞き、多々羅は「そうだよな」と言った。
「だから、あなたは雷千さんのことを信じて生きることを意識してください」
確かに海斗の言う通りだ。どんなに落ち込んでも帰っては来ない。だから、黄泉の国で生きるしかないのだ。
「うん。海斗の言葉は効いたよ。友達のことを信じないで生きてどうするんだよ自分」
「僕もこの経験はしたことがあるので」
海斗がこう返した。すると、多々羅の束帯の懐から紙のようなものが落とした。そのことに気付いた海斗は拾う。
「多々羅さん、落ちましたよ」
「あ、これなんか今日の昼か朝にここに来たんだよね。この手紙」
海斗は間違えて手紙の内容を見てしまった。その内容は、鬼の貴族たちではなく、なんと青蘭だった。
「なんで!?」
2人は急いで青蘭のところへ向かったのだ。
「青蘭~!これ見て!」
「うるさいぞ!静かにしろ!」
海斗は大声で青蘭の名前を呼んだ。そのことに対して、多々羅は海斗に注意をした。
読んだら、☆☆☆☆☆の評価と感想、リアクションをくれると幸いです。




