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妖の追凶〜time of hell〜  作者: 羽波紫希
華の道しるべ編
37/61

36.夢裡

(ここはどこだろう…夢…?)


そこは海斗の夢の中だった。見たことのない真っ暗な部屋に巻き込まれたようだ。


黒と赤で配色された中華風な部屋だった。けれど、椅子やテ一ブル、ベッドなど日常生活で使うものがない。中の広さもないくらい。それだけでなく、窓も1ヵ所もなかったのだ。


(て言うかなんで、この狭い部屋にいるのか訳が分からない)


正面にあるのは朱色の中華風の長椅子。上にあるのは中華風にデザインされているシャンデリアだ。海斗は夢の中で目を覚めたときにはその長椅子の前に地べたで座っていた。


(なぜここに僕が連れてこられた…)


海斗はこの狭い部屋に連れてこられたことで混乱していた。すると突然、後ろに誰かがいた気配がしたのだ。海斗が後ろを振り向く。そこにいたのは、なんと海斗と同じ顔をしている人がいたのだ。


(…はっ!誰だ。この人は…僕のドッペルゲンガー…?)


思わず海斗は唖然とした。その人は黒い漢服に金色の龍の刺繍がある。この人は一体誰だ。海斗と双子だったのか。けれど、海斗の本当の家族は母と弟。実の父親は会ったことがない。


(じゃあここは…一体なんだ。ここになんで僕が連れて来られた。僕とこの人に関係があるのか…)


海斗はそう思い込んだ。すると、その人は海斗の正面にある朱色の中華風にデザインされた長椅子に座っていた。足を大股に開く。両腕は長椅子の背もたれにかけた。


「おい、そこの君」

「え…?何でしょうか…」


その人は海斗のことを呼んだ。けれど、海斗は呼ばれたことに吃驚した。


「俺の妖術を使う後継ぎがやっと来たか~」


なんと、妖の力のことを言っていたのだ。後継ぎが何か海斗と関係しているのかと思っていた。その人がまた続きを言っていた。


「僕が死んだとき、もう告げる人がいないかと思ったよ~」


すると、海斗はその人が何を言っているのかが全く分からない。草薙家の妖の始まりなら知っている。だが、夢の中のことは全然知らない。それだけでなく、その人の名前も分からないのだ。


「あ…あの…すみません。ちょっと…なに言っているのかよく分かりません。もうちょっと詳しく説明してくれませんか?」


海斗は勇気を出してその人に聞いた。緊張感のあまり戸惑ったが、何とか聞こえたそうだ。


「説明?いいよ。でも今はしたくない気分」


それに対し、海斗は「え?」となった。


(え…何でだろ。普通なら教えてあげるかあげないかじゃないの?)


心の中では思っていたが、口には出さなかった。


海斗の正面に座っている人は一体何者なのか。結局、その人の気分で妖の力の後継ぎについて教えてくれなかった。


(本当に損したわ…)


海斗は気落ちしていた。期待した海斗が損をするのは当然だ。すると、海斗はあることを思い出す。


「あのさ…名前を教えてくれませんか?」

「名前か。そういえば教えてなかったな」


その人の名前が聞けると思い、気落ちしていたのが次第に前向きへと変わっていく。


「俺の名前は神怪(しんかい)。遥か昔に妖術を手に入れた男さ」


海斗と顔が似ていた人は、神怪と名乗っていた。


「君の名前は?」

「鳥山海斗です。たしか…17歳で黄泉の国へ来ました」


海斗が名前を述べたことに対し、神怪は「へえ」と無愛想に返した。


「なんか普通だね。ただの人って感じ。後継ぎが普通の人間なんて」

「普通で悪かったですね。神怪こそ何者なんですか」


海斗はぶっきらぼうに言い返した。


「俺?俺は遥か昔に生きていた人間だよ」


遥か昔ということは、ずっと前に現実の世界で生きていたことになる。けれど、どこで生きていたのかは分からない。


「そうですか。じゃあ神怪も普通の人間じゃないですか!別に妖の力の後継ぎについて教えたっておかしくないと思いますよ!」


海斗ははっきりと神怪に言った。すると、神怪は首を2回振っていた。


「分かってないな。君は今、黄泉の国にいるじゃないか。だったらそこで妖の力となるものを探し出せばいいんじゃない?」


そのことに対し、海斗はあることに気付く。それは、祖父・明雄から渡された懐中時計のことだ。その懐中時計は今、暁という謎の使用人に預かっている。だとすると、まずは暁を探し、懐中時計を取り戻すことが先だ。


海斗が何か言おうとすると、まだ神怪が話していた。


「だってほら、例えば、授業とかで最初にせいとが発見を導くために考える時間を取ったりするだろ。それと一緒で先に黄泉の国と妖の真実を自分で探し出すんだよ」


そのことを聞き、海斗は何となく納得した。


「はいはい、分かりました。結局は自分で探せっていうことなんですね。教えてくれると思ったのに…」


海斗はまた神怪に対し、ぶっきらぼうに返した。


「そうなんですよ~最近の若い人間でも気付いてくれてよかった~」


神怪は無邪気な笑いを取りながら言った。すると、神怪は海斗の前で手を振った。笑顔をしながらだ。それを見た海斗は意識を失い始める。



海斗が目を覚ますと、そこは和室か何かの部屋だった。周りは誰もいない。あるのは、布団だけ。あとは、壁で覆われていたのだ。すると、後ろの襖を誰かがそっと開けていた。


「あ、鳥山くん」


そこにいたのは紅葉だ。濡れた姿からきれいになっていた。


(そういえば僕…濡れたままだな…やばい)


海斗はまだ体が少し濡れていたのだ。大嶽丸と決着を付けたとき、大嶽丸の雨の妖術で濡れたせいだった。


「ここはどこなの?」


海斗は思わず紅葉に聞くと、「鬼の国にいるよ」と答えた。驚いたせいか「鬼の国か…」と小声で呟く。


「ここの都・鬼京の鬼霊殿(きりょうでん)という屋敷。私はここで暮らしていますよ」


海斗は羨ましいと思った。



紅葉に着いてくると広間に着いた。そこにいたのは、青蘭、蓮、元緋。それだけだなく、ここの貴族たちらしい鬼たちがいたのだ。


「これ…どういうこと?」


海斗はどういうことなのか分からないため、こんがらがっていた。


「海斗、おはよう」

「あ、青蘭。おはよう…」


突然、青蘭に言われ少し戸惑ったが何とか返すことができた。


「今、宴会をやってるみたいだからここに座って欲しい。鳥山くんたちが助けてくれたお礼に」


海斗は左側に青蘭。右側に紅葉の間に座った。


「朝からこんなのやるの?」

「今日はたまたま」


紅葉に聞くと、たまにやるらしいという情報だ。海斗は「そうなんだ」と心の中で思った。


海斗は寝ている間に夢裡(むり)の世界にいたことはしばらく話さないことにした。その世界に神怪という海斗のドッペルゲンガーみたいな人間。そして、黒い中華風な部屋。窓が一つもない。あるのは、朱色の中華風にデザインされた長椅子とシャンデリア。


(何で僕を呼んだのだろう。後継ぎとか言ってるけど一体どういうこと…?)


海斗は疑問に思っていた。神怪という人物も何者なのかもだ。


第2章開幕!

※36話の題名の意味は本文中の中に書かれています

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