31.覚醒
(大丈夫だ…大丈夫なんだよね…)
青蘭は少しだけ不安を感じた。けれど、やらなくてはならないことなのは分かっている。
(大嶽丸が巨大な氷の剣がある。だとすると、これはもう負けるかもしれない。でも、やろう)
そう思った青蘭だが、やると決めた。すると、青蘭は大きく息を吸い始めた。そして、何か言おうとし始める。
「かかってこい。大嶽丸!」
青蘭が堂々としている姿を見た蓮は、少し驚いてしまった。
(青蘭もなかなか出来るじゃないか)
蓮が心の中でそう言った。
そして、大嶽丸と決着を付けるために戦い始めた。
(黒風白雨・氷河)
その妖術を出すと、さらに雲が黒くなり、激しい雨も滝のように降ったのだ。それだけでなく、雷の音もいつもより強くなった。すると、青蘭の隣にいた蓮が寒気を感じた。
(何これ…寒くなってきた…)
蓮のからだが震えてきた。けれど、青蘭のほうは寒い中でも普通に動けるのだ。すると、正面から氷の剣が2人に素早く追ってきた。
「おっと…危な…」
同時に言った。2人はその剣を避けながらも必死に大嶽丸を見た。けれど、三明の刀を奪えるタイミングがない。奪おうとしても、大嶽丸がどのような妖術を出してくるのか分からないのだ。
(やっぱり分からない…)
青蘭がそう思っていると、蓮が「あれを使おう」と小声で言ってきたのだ。
「そうしよっか」
青蘭も同意し、反撃を開始した。
(式神・星詠)
(氷棘柱・風雪)
蓮のほうは、式神をだし、青蘭は風を出しながら氷で棘を作ったのだ。すると、呆気もなく大嶽丸が出した剣が破壊された。星詠と氷棘柱の妖術のおかげだ。
「よっしゃ!やっと氷の剣を壊したか!どうだ!」
蓮は堂々とガッツポーズをしながら言った。表情も翼を得たように舞い上がっていたのだ。
(これが…ナルシストか…着いていけねえ…)
青蘭が心の中では引いていた。ナルシストにはどうも受け入れることが出来ない。
(まっ、剣が破壊されたのならいっか)
とりあえず、受け入れることにした。
大嶽丸は舌打ちをしていたのだ。自分の妖術が2人によって破壊されたりしたのだった。
(クソっ…何だか俺があの2人にやられるとはな…)
次の方法がないか焦っていた。
(早くあの2人を殺して、紅葉をとっとと捕まえないと…)
そう思っているときだった。蓮と青蘭が次の妖術を出そうと準備をしていたのを見てしまったのだ。
(さすがにまずいな…)
さらに大嶽丸は焦る。この状況の中でどうやって2人を殺せばいいのか。すると、大嶽丸はある方法を思い付いた。
(あ、そうだ…これならいけるかも…)
大嶽丸は三明の剣を手にした。思い付いた方法とは何だろうか。
2人は大嶽丸を倒し、三明の剣という刀を奪うために妖術を出そうとしているところだ。
「青蘭、いけるかは分かんないけど、何とかなるかも」
「ああ、俺もだ!」
なぜか自信満々になっていた蓮。けれど、少し不安もある青蘭にとっては蓮をとりあえず信じていた。
(よし!この決着は俺も負けていられないかもしれない。必ず何とかなる!)
その覚悟をもちながら、この決着に挑んだ。
(氷棘柱・強風雪)
(式神・大歳星君)
2人は本気で妖術を出してしまったのだ。その術を出したあと、青蘭のほうはいつもの風雪より強め。蓮も大歳星君を出した。すると、再び黒かった雲が大歳星君のおかげで夜空になった。それだけでなく、雷や雨も止んだのだ。
「これは俺、やってよかった〜!」
蓮は表を出して喜んでいた。
「青蘭!俺の活躍見たか?」
「いや、俺も自分の妖術に集中してたので見てませんでしたよ」
淡々と返した青蘭に対し、「おい〜」とつっこんだ。青蘭の丁寧語で蓮はどこかで聞いた覚えがあると思った。
「しかも青蘭なんだか最初のときの海斗みたいだな」
「へえ〜そうなんだ〜海斗そんな感じなんですね」
再び丁寧語になっていたのだ。それだけではない。愛想よく返していたが、表情はなかった。
(なんだか青蘭って…たまに敬語使うんだな…そういえば、青蘭の年齢聞いてなかったな)
そう思っても口にはつっこんだりしなかった。2人で話していると、大嶽丸は三明の剣を出す準備をしていた。
(2人を殺す方法はこれしかないな)
大嶽丸は三明の剣を使うと決めた。そして、攻撃を開始したのだ。
(天災地変・全壊)
すると、その術のせいで夜空になっていた空が再び黒い雲に覆われた。それだけでなく、雷、嵐、暴風雨など激しい災害が起こり始めたのだ。
「ちょちょちょっとまって…嘘だろ〜!?」
蓮はこの災害を受け入れられなかった。
(また寒気がする…)
寒気をした蓮は少し限界が来てしまったのだ。寒さが平気な青蘭でもどうすればいいのか分からなくなった。そのせいか、どうしようもない。
(これはもう終わった。俺が攻撃をすると氷の剣を再び出すかもしれない。だとすればどうしたら…)
青蘭は絶体絶命に陥ってしまった。このまま大嶽丸に殺されるか、青蘭1人で決着を着けるか。そう迷っていたときだった。大嶽丸の背後から誰かがいたのだ。
(これは…守護国の誰かが助けに…!?)
そう思った青蘭。けれど、よく見ると後ろにいたのは海斗だった。大嶽丸は海斗に気付いていない。これはいける。限界が少し来た蓮も海斗だと気付いた。
すると、海斗は大嶽丸の背中を蹴っ飛ばした。そして、妖術を出す準備をした。
(海斗…いけ…)
青蘭は祈った。蓮も同じことをした。
(泡沫夢幻・虚ろ)
その妖術を出すと、大嶽丸が出した妖術は泡のように消えていった。出している間の海斗は目を瞑り、終わると開く。海斗は覚醒したのかもしれない。青蘭はそう感じたのだ。
(これが…海斗の…妖の力かもしれない…)
平凡な人間で妖術の修行もなし。それだけで、これくらいの妖術を出せる。海斗くらいしかいない。
(マジかよ…すげえな…海斗は…)
蓮も海斗の実力を認めた。
「痛え…お前!何もんだよ!」
大嶽丸が海斗に怒鳴りつけた。すると、海斗はおどおどとした感じがひとつもなかったのだ。
「僕は、平凡な高校生。でも、今は妖なのです」
海斗は目を細めながら返した。その表情は、悲しくもなく、笑ってもいなかったのだ。




