30.切り替えていけ
海斗は、いないはずの妖怪とその魂の幻覚を見て倒れていた。そのことに気付いた蓮と青蘭は海斗のところへ行き、目を覚ませようとした。
「駄目だ。全然覚めない…」
蓮が弱音を吐くように言った。すると、崖がものすごく揺れたのだ。これは、既に大嶽丸の怒りのせいだった。
(やっぱり大嶽丸を倒さなければ…)
そう思った青蘭は、大嶽丸のことで海斗の方に余裕がない。そのため、海斗をそのままにすることを決めた。
「蓮!先に大嶽丸を倒そう!」
「おう!」
2人は、倒れている海斗をそのままにした。揺れはまだ収まっていないながらも慎重に前へ進んだ。すると、目の前に大嶽丸が立っていた。その様子は苛立っていた。いや、怒りを露にしていたのだ。
大嶽丸のいるところへ着いた。すると、2人が上の空を見上げたときには驚いていたのだ。それは、無数の剣や矛があった。それだけでなく、焦げ臭い匂いもしていた。
(これは、もしかして…俺たちに向けて攻撃するかもしれない)
そう思った青蘭は、予測するのを続けた。もし、攻撃をすると大嶽丸は青蘭、蓮が出した妖術よりも強い妖術を出してくる。
空から焦げ臭いするのは火の粉。つまり、火の雨。その雨も強くなればなるほど量も増える。そうなると、2人で戦うのにも限界が来る。
(だとすると…俺の最大の術を出すしかない…でも、名前が思い出せない…)
予測している青蘭を見て蓮は何かしら声をかけようと決めた。
「青蘭、そんなに…難しく考えない方がいいよ」
戸惑いながらも話しかけることには何とかなった。それに対し、青蘭は「それもそうだな」と返した。すると、青蘭は悩むことをやめて、戦うことに集中した。
(この戦いは、勝負を着けないと分からない戦いだ。だから、予測するのではなく、まずはやってみないとだね)
青蘭は心の中でわかったのだった。
大嶽丸との戦いに挑む2人は、早速攻撃の準備をした。
「やっと決着が着ける時間が来た。あ…待たせるのも勘弁してよ…」
すると、先に出したのは大嶽丸だった。手を前にだすと、無数の剣や矛が2人の下に素早く落ちてきたのだ。2人はその剣や矛を避けながらも必死に妖術を使った。
(俺もそろそろ出すか)
蓮は式神を出す準備をした。
(北神・妙見菩薩)
蓮が出した術を出した。すると、妙見菩薩の剣を使ったおかげで無数の剣と矛がばらばらな方向へと向かったのだ。
「ありがとう」
「ふふん。いやいや、それほどでも。やっぱり俺がいないと成り立たないな」
蓮のナルシストに青蘭は少し引いてしまった。
「あ、あの。別に…そのことは…全然気にしていないです…」
「いいや、気にしていないことじゃなくてさやっぱり…」
蓮が話続けても無視した。青蘭は蓮のことを気にせずに大嶽丸の刀を奪うために向かい続けた。すると、正面にいたのは大嶽丸がいたのだ。
大嶽丸が所持している三明の剣3つの刀が見えた。
(今度こそは三明の剣を奪えるか)
青蘭は、近くにいる大嶽丸のところへ向かった。着くとすぐに、所持している刀を奪うことを試みた。
「おっと…危ねえ…」
けれど、大嶽丸に気付かれて避けられてしまう。また、大嶽丸が所持している刀により肋を切られた。そのせいで、やられてしまったのだ。
「てかさ、白い狐さん。妖術を使ってないよ。妖術なしで刀を奪おうとしても無駄だよ」
そのことで、青蘭は悔しい思いをした。
(俺は、ただ妖術を使いたいが使う術が思い出せないだけだ…)
青蘭は何で思い出せないのだろうと自分に問い詰めたのだ。それは、記憶がないせいか何も思い出すことが出来ない。
(結局、俺は一生このままで何も思い出せないままここで生きるのか…)
涙目になっていた。それは、青蘭にとっては置いていかれる恐怖を感じたのだ。もし、海斗、蓮、元緋が妖術の使い方が上手くなる。そうなると、青蘭だけが記憶がない。そのせいで、思い出せないまま実力の差と抱えながら生きていくことになる。
(そんなの嫌だ…嫌だ…)
すると、蓮が急いで大嶽丸のところへ着いたのだった。
「見つけた!青蘭、人の話は最後まで聞け〜!」
蓮が来ていたことに気付くと、大嶽丸は次の妖術を出した。
その術は、天気が雷になり、竜巻も起こり始めたのだった。竜巻に気付いた蓮は、巻き込まれないよう慎重に前へと進む。
「よっと…危な…」
竜巻が蓮に来るとギリギリな距離を得ながら避けた。そして、蓮は青蘭のところへ向かった。着くと、青蘭は落ち込んでいた姿を見て、気付かれないように後ろへ移動した。
「わあ!」
すると、青蘭は驚いた表情をした。
「おい、青蘭さ。なんか、落ち込んでたの見たよ。ま、後で聞くけどさ。今はそういう状況じゃないよ。もう一度言うけど…まずはやってみよ」
蓮の言葉を受け取り、青蘭は大嶽丸を倒すことに切り替えた。
そして、再び大嶽丸が所持している三明の剣を奪うことに挑んだ。
「おい、大嶽丸!俺たちがおまえが持っている刀を奪いに来た!」
蓮は堂々とした態度で言っていた。
(蓮は何だかと言って…これは悪くない…ありがとう…)
青蘭は口に出さなかったが、心の中で言った。
「じゃあ〜やってみなよ。俺から刀を奪うことが出来るなら…」
大嶽丸はさらに、強大な妖術を出す準備をした。今度は、巨大な氷の剣を丸く囲むように並べた。それに気付いた青蘭は絶望をした。
(これじゃ…俺の…氷の妖術が使えない)
このままではどうすればいいのか分からなくなった。けれど、蓮は「大丈夫だ」と小声で言った。多分、蓮も不安だろうと思う。けれど、その不安と向き合おうとしている。これが、ナルシストの長所なのかもしれない。




