26.最後の会話。そして、決着へ
(これはまずい状況になった…)
大嶽丸が2人の近くまで来てしまったせいで、最悪な事態になってしまった。雨も強くなり、さらには雷もいつもより激しさが増したのだ。
(この天気は…あの日と同じだ…)
紅葉も天気が激しさが増したのを見て、思い出した。雷千が大嶽丸に殺された日の天気を。
「あの…すみません。おふたりさんって…僕も関係ありますか…」
思わず海斗は聞いてしまった。すると、大嶽丸は悪巧みをしそうな顔をしていた。
「関係あるよ。まず、お前は供物として生け贄にされる方だよ」
それを聞き、海斗は驚いてしまった。
(生け贄…!?じゃあ、紅葉は…こいつの夫婦になっちゃうっていうこと…)
海斗がそう思っている間のそのときだった。大嶽丸が式神の強化準備をすることを思い出したのだ。
「あ、用事があることを思い出したからそこのおふたりさん。何か言い残したいことがあれば話してね」
そう言い、大嶽丸はその場を立ち去った。と思ったが、また後ろを振り向いた。
「言っておくけど、ここから脱走しても無駄だよ」
大嶽丸に言われて、2人は何も言い返すことができなかった。大嶽丸は嵐や雷を操ったり、暴雨を呼び寄せたりもできる。そうなると3人が加わっても無駄だ。
大嶽丸がその場を去ったあと、海斗はあることに気付いたのだ。
(…はっ!そういえば、大嶽丸が刀を持っていなかった。だから僕たちを殺そうとしなかったのか)
海斗はそのことに悟った。
数分立っても来ない間、海斗は紅葉に最後の雑談として話しかけることにしたのだ。緊張したが、勇気を出して「紅葉」と呼び捨てで呼んだ。すると、紅葉は海斗の方へと向きを変えた。
「紅葉って、何か妖術は…使えますか」
「私は…私は火炎の妖術が使えます」
少し戸惑いはあったものの、何とか話せることができた。
(火炎か…この雷と暴雨だと火炎は使えないな…)
海斗はその妖術だと使えないと思った。すると、海斗は不思議に感じたことがあったのだ。
(そういえば…暴雨で濡れるけど、体が冷えたりしてない!これってもしかして…)
海斗は体が冷えてないと感じたのだった。すると、紅葉に肩を優しく2回叩かれたのだ。
「鳥山くん、そろそろあの人が来ますよ。何か倒す方法は考えたんですか?」
「え!?あ…いや、全然考えてなかった!っていうか紅葉、縄が外れてる」
海斗は緊張のあまりに堂々と答えてしまったのだった。紅葉が縄が外れていることに気付いた。
「弱火ですが何とか縄が燃えましたよ」
そのあと、海斗は紅葉に縄を外してもらった。2人が崖の上からよく見る崖の周辺にいたのは大嶽丸。海斗は恐怖を感じた。
(恐ろしい…でも、何か方法はないか)
海斗は倒す方法を考えながら、ズボンのポケットの中を確認した。すると、中から1枚の百鬼札を取りだした。
「…はっ、あった!」
思わず叫んでしまった。その声を聞いた紅葉は海斗のところへ行った。
「鳥山くん、その札は何ですか?」
「あ、これ?この札は百鬼札。これをおでこに張り付けると妖怪になったような感じになれるんだよ」
紅葉は聞きながら頷いた。
「僕は、妖術とか使ったことがないからこれがないと戦えないんだ」
「そうなんだ」と頷きながら紅葉は言った。すると、大嶽丸が崖の上に来たのだ。その足音が聞こえ、2人は後ろを振り返った。大嶽丸を見たとき、刀を持っていた。
(とうとう来た。鬼の国で最強で最恐の大嶽丸。刀を奪えば、倒すことが出来る!)
海斗はすぐに百鬼札を貼る準備。紅葉はこの暴雨の中、火炎の妖術が使えない。だから、待機。
大嶽丸が2人のところまで着くと、2人の縄が外れていることに気付いた。
「おふたりさん、縄が外れてるのはいいけど、なぜ逃亡しないんだ」
「僕は…逃げることをやめたんだ。だって、紅葉を置いていけないから」
それを聞いた大嶽丸は「へえ〜」と返した。
「ちなみに、俺を簡単に倒すことはできないよ。じゃあこうしよう。俺に勝ったら紅葉をあなたに。もし、負けたら俺がいただく。それでいいか」
海斗は「もちろん」と堂々と答えたのだ。百鬼札を貼り、決着を着ける準備をした。すると、海斗は自己中心的な性格に変わっていたのだ。
「あ〜あ、俺は準備万端だ。そっちはできたか?」
「もちろんできてるよ。面白い札だな」
そして、海斗と大嶽丸の決着が始まった。
暴雨が激しくなった。それだけでなく、雷や嵐も強くなったのだ。その中で海斗は濡れながらも諦めが衰えていなかった。
まず先に大嶽丸が刀を出しながら、構えをしていた。
(黒風白雨・雷雲)
大嶽丸が出した妖術で海斗は黒い雲に覆われた。すると、海斗は指ハ一トの形を作っていた。
(消去・屈折)
海斗が出した妖術で黒い雲が屈折し消えていった。それを見た紅葉は、普段の性格と違うことで驚いてしまった。
(鳥山くんって、戦うときってこうなるんだ…かっこいいな…)
紅葉はそのことがきっかけで少し恋に落ちてしまった。
「そんなの俺に聞かねえ。俺は今、人間じゃなくて妖になってるからよ〜。この体が楽なんだよ。だから、大嶽丸。お前と戦うのにも余裕がある」
相変わらず自己中心的だ。それを見た大嶽丸はなぜか関心をもった。
「へ〜。お前は本っ当に面白いやつだよ。いいよ。俺もこの妖術は序の口。ここからは本気を出そうか」
大嶽丸も本気を出すようだった。再び、戦い始めたのだ。




