25.覚悟
「あの、鳥山くんだよね…」
紅葉は近くにいた人を海斗かどうか確かめた。そのことを聞かれて、当然海斗は「そうだよ」と返した。2人はまだ縄が縛られたままだったのだ。
「あ、ごめんなさい!3時間も眠ってしまったとは知らなかったので…」
紅葉はあわてて謝り、言い訳もしてしまった。それに対し、海斗は「大丈夫だよ…」と言った。
すると、背後から誰かが来たのだ。2人は後ろを振り向くとそこにいたのは、体格がでかい鬼神がいたのだった。
(あれが…紅葉が言っていた大嶽丸…)
初めて見た海斗は、予想外もしなかった。すると、空が白かった雲が黒くなり始めたのだ。
(あの人だ…)
紅葉は当然、覚えていた。雷千を殺した鬼神のことを。
その一方、青蘭、蓮、元緋は『大江山』の城の中で酒呑童子に方法を教えてもらうところだ。今は、酒呑童子から「用件は何だ」と聞かれている最中。
すると、青蘭はすぐ話すことにした。
「大嶽丸を倒す方法に教えていただきたいです」
「大嶽丸?なぜだ。詳しく理由を話せ」
そう言われ、青蘭はそのことを詳しく話したのだ。
「はい。実は、人間の死者の鳥山海斗と鬼の国の王女の紅葉という少女が突然いなくなったと知りました」
(なるほど…)
その話を聞いた酒呑童子と茨木童子は頷いた。また青蘭が続きを話す。
「紅葉という少女がもし、連れ去られたら酒呑童子から方法があると聞きここを訪ねました。ちなみに大嶽丸が紅葉を連れ去った目的は多分、後継者を作ろうとしていたとおっしゃっていました」
話を終わると、酒呑童子は判断を3人に任せることにしたのだ。なぜなら、今回は青蘭がいるからだった。
「その方法だが、俺は大嶽丸の弱点が読めない。刀を奪おうとしても奪う隙がないと思う」
3人は「そうですか」と頷きながら言った。
「でも、連れ去られた場所は知ってるかも」
すると、3人は驚きの顔をしながら酒呑童子を見た。
「場所は多分、『鈴嘉』にある一番高い崖かもしれん。その崖に大嶽丸が必ずいる。そこへ行け」
酒呑童子の命令に3人は鈴嘉というところへ向かった。当然、『大江山』からはそんなに近くはない。それでも、3人は体力には自信があるため鈴鹿までに行けるのだ。
3人が『大江山』から降りたあと、酒呑童子と茨木童子は城の外へ出た。
「あの3人に任せて大丈夫なんすか?酒呑童子様」
茨木童子が酒呑童子に言った。
「いや、あいつの息子なら大丈夫だよ。だって、天才でもあり、覚悟があるから…な」
酒呑童子が口角を歪めながら言った。それを見た茨木童子は気になったのだ。
「酒呑童子様、あいつの息子って誰なんすか?」
「昔のことを思い出したんだ。さっき来た嘘つき狐野郎の息子が来ただろ。その妖怪だよ」
茨木童子はその息子のことで気になり、興味をもち始めた。
「酒呑童子様、俺はその息子さんを知りたくなったんすよ。だから、教えてください」
すると、酒呑童子は同意した。しかし、何か言おうとしたのだった。
「あ、ちなみにその息子にはお兄さんがいるんだよ。多分、お前は絶対見覚えはあると思うけど」
そのことを聞き、茨木童子は思い出した。白い長髪に青い瞳。そして、紺青のチャイナ服を着ていたことを。それだけでなく、表情はいつも笑顔で穏やかに話していた姿を思い出した。
(あの妖怪か…俺の右腕を切ったやつだな…)
茨木童子は、姿は思い出したが名前を忘れてしまったのだ。だけど、茨木童子の右腕を切られたことに怒りは収まっていなかった。すると、茨木童子が何か思い付いたのだ。
「酒呑童子様、俺、めっちゃいいこと考えたんすよ」
その一方で、紅葉は大嶽丸に殺されると感じたのだった。
(あの鬼神に…雷千さんが…殺された…じゃあ、次は私だ…)
紅葉は殺される予感は分かっていた。すると、大嶽丸が海斗たちのところまで近づいてきた。海斗も紅葉の近くまでに移動をしたのだ。
「大丈夫か、紅葉さん」
それに対し、紅葉は「うん」と曖昧な返事をしていた。その事に気付いた海斗は何かあるに違いないと判断をしたのだった。
(自分は何をしてるんだよ。早くしないと大嶽丸がもうすぐ来ちゃうのに…僕も妖の力があれば…)
海斗は自分に対して怒っていた。それでも状況は変わらないということは知っていた。そのせいで何か方法を考えればいいのかも分からない。妖の力があればと海斗は願っていた。すると、正面から誰かが来たのだ。
(…はっ!この音は!?)
(もうあの人が来る…私も妖術を使いたいが暴走しちゃう…)
2人が後ろを振り返ると、体格のでかい鬼神が近づいてきた。その鬼神は大嶽丸だった。
紅葉はどうしようもない状態になり、とうとう海斗に話すことにしたのだ。
「鳥山くん…私はもう…ここで死にます。今までありがとうございました…本当に…ごめんなさい…」
紅葉は泣きながら言ったのだ。
「紅葉さん…あなたは本当にいいのですか。もったいないですよ…あなたはまだ若いし生きられる年ですよ」
紅葉が丁寧語で言ったので海斗も同じように言ったのだ。すると、体格のでかい人影が見えた。
「見つけた。おふたりさん」
それは、大嶽丸の声だった。2人が後ろを振り返った。そして、2人は覚悟をしたのだ。




