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妖の追凶〜time of hell〜  作者: 羽波紫希
百鬼夜行、鬼女の追想編
24/61

24.悲劇の夢

鬼霊殿(きりょうでん)で暮らして3年くらいは立った。紅葉は13歳。雷千は19歳くらいの歳になったのだ。


「おはようございます」


ようやくそこで暮らしなれてきた紅葉は、少しずつ笑うようになった。召し使いにも挨拶することが出来るようになったのは当然だ。


昼から読書、絵巻物の鑑賞の予定があるのだった。


(急がないと…あ!雷千さんに会わなきゃ)


紅葉は、雷千のところに行くためあわてて部屋へと向った。そこに着き、襖を開けた。すると、雷千はとっくに起きていたのだ。


「雷千さん…とっくに起きていたんですね」

「紅葉?なに言ってるの?俺は元々早起きだよ」


その瞬間、気まずくなり紅葉は素早く部屋を出た。


(さっきのは気まずかった…私、なにやってるんだろう…)


紅葉はそのことで恥ずかしくなり、顔を真っ赤にした。あわてて逃げるように屋敷内を走り回った。すると、それを見た乳母が「こら!」と叱った。それに対し、紅葉は驚きを見せてしまったのだ。


「屋敷内を走り回らないで。優雅さが乱れてしまうではないですか。本当に恥を知りなさい」


とりあえず「すみません」と謝り、続くと思った叱責が収まった。乳母の叱責を受け、次からはしないように意識をすることにしたのだ。



昼になり、読書をする時間になった。紅葉はなるべく他の貴族たちとの関わりを避けるために自分の部屋で読むことにしたのだ。


そこに着くと、他の貴族たちは一人もいなかった。落ち着いて読めると思った紅葉は床にそっと座った。すると、またあの頃の過去を思い出したのだ。紅葉は一度本を読むのをやめた。


(一人で読むと落ち着くと思ったら雑用係のことを思い出す…)


雑用係としての過去をもっている紅葉にとっては今でも忘れることは出来なかった。それどころか孤独感を感じたのだ。そのことを続いていると、突然誰かが「入ってもいいですか」と言った。


(…はっ。この声はもしかして) 


紅葉は落ち着きと熱意がこもった声で分かった。紅葉のいる部屋は誰もいない。そのせいでもし、引きこもっていると知られたらどのような反応するのかもわからない。


(でも、何も言わないのも流石におかしいよね…)


紅葉は勇気を出して「入ってください」と言った。

すると、襖を開けるおとがしたのだ。


「失礼します」


誰かが入ってきたときに紅葉は腰を抜かした。それに対し、雷千も相当驚いたのだった。


「紅葉、なぜ部屋にいるんだ。他の貴族たちと一緒に読書をしてたのかと思った」

「あ、ごめんなさい。私、いつも読書をするとき一人の方が落ち着くんです」


紅葉は雷千に無理な笑顔で誤魔化すように言ったが当然、そのことは雷千は通じなかった。 


「本当にここにいて落ち着くか?俺はそうに見えなかったけど」

「本当に落ち着きます」


そのことを聞かれて、一言しか言えなかった。紅葉は誤魔化すことが苦手だった。


「もしかして、3年前のことか」


雷千に聞かれた紅葉は、もう誤魔化せないと思った。


「そうですよ。本当は…ここの貴族として暮らす資格はないです」


それを聞いて、雷千は唖然とした。まさか、そのようなことを思ったとは知らなかった。しかし、雷千はまだ諦めてなかったのだ。すると、何か言おうとした。


「本当にあなたは俺が助けたことに迷惑だと思ってるのか」


その表情は真面目だった。少し厳しいところもあったのかまるで師匠のような言い方だ。そのことに対して、理由を探したが全く見つからない。紅葉はどうしようもないと感じた。


「あ…いや…本当に感謝してます。だって…」


すると、雷千は何か言おうとした。


「ちょっと言いたいんだけど、実は紅葉がここで暮らしてる理由があるんだ。誰だと思う?ちなみに俺ではない」


そのことに対して、紅葉は思い付かなかった。数分間考えても分からないのでついに紅葉は、「分かりません」と言ってしまった。


「実はな、これは秋楽なんだよ。俺も秋楽のことを考えると後悔するんだよね…でも、秋楽からはあの子を守れと命令された」


なんと、紅葉の父親を倒す途中で帰らぬ人となった秋楽だった。そのことに対して驚いたのだ。


「だから、俺は切り替えたんだ。それに今は紅葉がいるから守ってみせる」


雷千は紅葉を抱きしめながら言った。すると、雷千が今度はちがうことを言おうとした。


「今度、休暇取れたから俺と一緒に"外の世界"へ行かないか」


それは紅葉にとって、待ちに待っていた"外の世界"だ。その夢が叶えられたのが信じられなかった。


「もちろん、行きたいです」


そう言い、2人は"外の世界"へ出かけることにしたのだ。



翌日、2人は召し使いたちにも言わずに鬼京から出ていった。紅葉は壺装束。雷千は狩衣(かりぎぬ)の格好をしていた。


「この先、険しい道を歩くけどついて来れるか?紅葉」

「はい。ついていけます」


紅葉は雷千に追い付くために疲れても歩き続けた。


数時間が立つと、2人はある崖へと着いた。その崖を登るのは一般の鬼が登るにはなかなか難しい。それでも、2人は挑戦した。


(なかなか難しい…)


紅葉は苦戦していた。けれど、雷千の方は素早く登れていたのだ。紅葉はそのすごさを見ていると雷千が後ろを振り向いた。


「どうした、紅葉?」

「あ、ごめんなさい…つい…」


すると、雷千に「紅葉は悪いことしたか」と言われてしまった。当然していないからいいえと返した。


そして、登り続けて数分たち、ようやく崖の頂上に着いたのだった。そこは木や建物など、何もなかった。ただの崖の上とその下は霧のせいでよく見えなかった。


「雷千さん、何もないですよ。どこに"外の世界"があるんですか?」

「分かってないな。紅葉、その世界を見るのではなく作るんだよ。俺たちで」


そのことを知り、紅葉は驚いた。


(自分で…作る…か。やってみたいかも)


紅葉は、少し興味をもった。すると、紅葉の肩に雨水がかかった。雨が降ってきたのだ。それは次第に強くなった。


「雨が降ってきた。違うところへ移動しよう」


雷千が紅葉に声をかけ、2人で移動をしようとしたときだ。背後から誰かが来たのだ。気付くと、そこにいたのは体格が大きい鬼神がいた。


「誰だお前は」

「俺か。俺の名は大嶽丸」


大嶽丸と聞いて、紅葉は怖くなった。けれど、雷千は堂々としていたのだ。雷千を見るとすぐに妖術を出す準備をしていた。


(電光雷電・鳴々(めいめい)


その術をだし、強い雷鳴とともに大嶽丸を当てた。すると、大嶽丸の両腕が動かなくなった。これで、有利だと感じていたがすぐに両腕が動ける状態に戻ったのだ。


「残念だな。これじゃ、俺には効かねえよ」


大嶽丸のほうもそろそろ本気を出した。


「それじゃ、行くよ」


すると、雲が黒くなり、嵐と雷鳴が同時になってきた。これは、恐ろしい予感がした。


雷千は再び妖術を出そうとしたときだった。大嶽丸が出した強い雷を浴びられたのだ。


「あぁ〜〜〜!」

「雷千さん!」


紅葉も必死に名前を呼んだ。けれど、雷を浴びられたせいで雷千は倒れてしまった。血も吐いている状態だ。紅葉も雷千のところへ駆けつけた。すると、近くにいた大嶽丸が意外なことを言ったのだ。


「俺は、君に一目惚れした。だから、永久に俺の夫婦になってくれないか」


そのことを聞き、当然なりたくなかった。もし、反論すると殺されるかもしれない。だから、紅葉は丁寧に断ることにした。


「ごめんなさい。あなたと夫婦はなれません」

「へえ〜。だったら、あなたは本当にカメって感じだな」


それを聞かれて、正直訳が分からなかった。すると、突然めまいがして、意識を失った。



目を覚ますと、そこにいたのは海斗だった。


「紅葉さん、やっと目が覚めた…3時間以上は意識がなかったんだよ」


紅葉はそのことを知らなかった。

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