17.紅葉の新しい生活
4人が和室へ向かうと、壁や周りのものが鈍器で壊されたままだった。目の前には元緋が気絶していたままだ。
(あ…そういえば…終わったな…)
もし、このことが明雄に見つかるととんでもない説教が待っている。そうなると、最悪だ。すると、階段から降りてくる音がした。
(まずい…最悪だ。これはじいちゃんに怒られる…)
海斗は、怒られる覚悟をした。けれど、青蘭の方は全く反省の顔が一つもないのだ。それどころか、青蘭は無表情だった。
(え…本当に反省してない…もともとと言えば青蘭なのにやばい、この狐妖怪…)
すると、和室へ来たのは明雄ではなく弟の日陽だった。そのことで海斗は安心した。
「おにいちゃんたち、なにしてるの?」
日陽に聞かれ、海斗は驚いてしまった。それ以外の人はなんとも感じなかった。
「あ…僕たちも気付いたときには壊れてたんだよね…アハハ…」
日陽に対しての誤魔化し方が海斗はとても下手だ。そのせいで、戸惑った。
(海斗、やっぱ嘘が下手だな…)
それを見た蓮は苦笑しながら心の中で感じた。海斗は嘘をつくときにいつも戸惑いがある。そのため、嘘は下手だ。日陽は「そうなんだ」と明るく頷いた。
(あ…よかった…この件、じいちゃんに正直に言わなきゃだめだ…)
海斗は焦りだした。しかし、青蘭の方は反省のない無表情だ。自覚がないように見える。何を考えていているのか全く分からない。すると、気絶していた元緋が目を覚まし、起き上がった。
「おいって…何これ!?蓮、知ってるか」
「知らないよ。俺じゃなくてこの2人に聞け」
元緋が2人を見て、海斗は下を向いていた。青蘭の方は立ちながら下向きで寝ていたのだ。それを見て、元緋と紅葉は驚いてしまった。
「あ…あの…起きてください…」
紅葉が青蘭の肩を優しく叩きながら青蘭を起こそうとしたが、びくともしない。すると、紅葉のとなりにいた元緋がアドバイスをしようとしたのだ。
「紅葉ちゃん、青蘭はな、優しく叩いても何も反応がないんだよ〜だから、俺の力だったら大丈夫!」
すると、元緋が青蘭の肩ではなく背中を強く叩いたのだ。その時だった。青蘭が目を覚まし、機嫌が悪くなったのだ。それを見たとたん、元緋は怯えた。あとから海斗と蓮、日陽も見て、恐ろしい表情になった。
(青蘭さん、怒るとこういう顔になるんだ…)
紅葉は苦笑した。青蘭の機嫌の悪さに元緋は耐えきれない。すると、元緋は青蘭の前で土下座をしたのだ。
「すみませんでした!もうしません!ほんとのほんとに!」
必死に土下座している元緋を見て、青蘭もさすがに困っていた。そのせいで苛立つところではなくなってしまったのだ。
6人全員が和室から出て、居間へと向かう。着くと、海斗と蓮、元緋はすぐに床で横になった。それを見た青蘭はだらしないと感じた。
「紅葉さん、こんなのナマケモノのようなものです。だから見習わなくていいのです」
「この人たちの名前は何というのですか?」
すると、青蘭は左から指を指しながら、海斗、蓮、元緋と名前を言った。今は3人そろって横になっていたのだ。まるで、三猿のように見えた。海斗は見ざる。蓮は聞かざる。元緋は言わざるだ。
「これから、紅葉さんにやって欲しいことがあるので来てください」
そう言われ、紅葉は青蘭に着いていくことにした。
(なんか…青蘭さんって私に対して冷たいのかな…やっぱり私がここにいるから?)
青蘭が無愛想に言っているのを聞き、紅葉は何だかすっきりしない感じがのだ。
「あの、私やっぱり帰ります。ここにいないほうが迷惑をかけないと思いまして…」
すると、青蘭は厳かな表情をした。
「あなたは俺たちのことを迷惑だと思ってるのですか?そう思ってるんだったら俺たちと関わらないほうがいいと思います」
それは意外な発言で最初は傷付きそうだった。けれど、これは前にもどこかで誰かが発言したような記憶がある。
―本当にあなたは俺が助けたことに迷惑だと思ってるのか―
誰だろう。青蘭の発言があの人の発言に似ていた。あの人はもうどこにもいないから分からないのだ。
(青蘭さんも無表情に無愛想だけど、以外と優しいのかな…?)
ついてきた場所に着くと、そこは草薙さん家の一階にある倉庫だった。中に入ると秘宝、日本刀など昔からあるものばかりだ。
「この中で掃除をしてください。雑用なら何でもするって言ってるなら大丈夫だと思いますけどね」
倉庫の掃除を紅葉に任されることになった。当然、大丈夫だ。掃除を始めて5分立つと、半分以上は終わっていた。細かく丁寧に済ませ、さらに5分立った頃には完全に終わっていたのだ。
一方、海斗たちが目を覚ますとそこにいたのは明雄が座布団に座ってお茶を飲んでいた。それを見たとたん、海斗は驚いた。
「海斗、和室と玄関の壁や周りのものが壊されてるけどあれはどうしたのじゃ?」
そう聞かれて海斗は何とか誤魔化そうとした。だが、ここは正直に言おうと決めたのだ。
「じいちゃん、鈍器で壊したのは僕です。それには青蘭が僕の秘密を早口で言ったからです!」
それを聞いていた明雄は怒らなかった。
「許そう。次はやんないことだな。今、業者を呼んだから直してくれると思う」
許してくれたことで海斗は安心した。それを見た蓮と元緋もほっとしたのだ。すると、明雄が咳払いをした。これは何か言おうとしている。
「海斗、明日紅葉とどこかで出掛けてこい。たまには気分転換したほうがいい」
「え!?なんで海斗と?ずるくないですか?」
「だったら俺と紅葉ちゃんだったら相性いいですよね?」
蓮と元緋はそのことで不満を感じた。海斗の方は、興奮をしていたのだ。
(これってもしかして…デ一ト!?今まで可愛い子と付き合ったことはないのになんで!?)
(そしたら、みんなには内緒でプロポーズとか…)
海斗は常に妄想までしていた。それを見た2人は海斗に対して何を考えているのか分からない人だと思った。




