15.来問
翌日の朝、海斗が起床し居間に着くとそこにいたのは青蘭と蓮がいた。青蘭は読書をし、蓮は眠れない顔をしていたのだ。ちなみに日陽もいた。
「おはようって蓮さん、どうしたんですか?」
「さん付けって…おい。そういえば聞いて〜」
蓮が何か悩みがあるそうだ。それを海斗と読書をしていた青蘭が話を聞くつもりであった。
その話を聞くと昨夜、蓮は元緋と日陽と一緒に寝ていた。日陽の部屋に布団が3つあり、左側が日陽。間には蓮。右側にいたのが元緋だった。消灯時間になり、電気を消したあと日陽と元緋はぐっすり眠っていたのだ。
蓮も眠り始めたが、数時間後になる頃だった。目を覚ますと元緋の足が蓮の腹の上にのっていた。それだけでなく、いびきも想像以上にうるさい。まるで怪獣が声を上げているような感じだったらしい。ちなみに、日陽の方は元緋のいびきも気にせず眠っていたのだ。
「そのせいで俺、めっちゃ眠れてないんだよ…」
蓮の目の下にクマがついていた。海斗は十分に眠れてないように見えた。青蘭の方は何も口に出すことはなく、ただ頷くだけだ。
「今日はぐっすり寝た方がいいよ」
海斗が穏やかな口調で言うと蓮も「そうするよ」と答えた。
「そういえば、まだ元緋は起きないね」
「あいつは起きるのが遅いからな〜」
蓮はあくびをしながら言った。すると、青蘭は本を閉じ、何か言おうとしていた。
「海斗だって前に起きるのが遅いのあったもんね」
青蘭は淡々としながら言うと、海斗は顔を真っ赤にした。その話を聞いていた蓮と日陽は気になった。
「いやいや〜それはないない」
海斗は誤魔化しながら言っても、青蘭が話すのを止めようとしなかった。その話を青蘭が早口で続けると、次第に海斗は鈍器を使って青蘭を殴叩しようとしたのだ。
「青蘭!お前をここで倒してやる!」
鈍器を使って青蘭を殴打する海斗に対し、青蘭はふつうに避けた。そのせいか、徐々に壁、周りにあるもの、部屋などを鈍器で破壊している。
(うわ…これは明雄さんに怒られる…)
蓮はこの状況に最悪だと感じた。もし、明雄が起きてくると長い説教が待っている。
「おにいちゃ〜ん、やめたほうがいいよ〜」
日陽が海斗を追いかけようとした。それを見た蓮は日陽を止めた。すると、インターホンの音がなったのだ。
(こんなときにお客さん!?)
待たせては行けないと思い、蓮は玄関へと向かった。着くと、壁や押し入れが鈍器で壊されていたのだ。勇気を出してそっとドアを開けた。
そこにいたのは、鬼女だった。小柄で薄紅色の着物の格好をしていたのだ。青蘭と同じ白髪に黄金でギラついた目。ぼんやりとしていた表情。透明感のある肌。それだけでなく、左腕の手首に赤い糸で結んでいた。
「あ、すみません。どうぞ、こちらへ上がってください。壁の方は気にしないでください」
その鬼女は草履を玄関に置き、蓮に着いていった。和室に着くと壁や周りのものは破壊されていた。けれど、鬼女は何も言わなかった。
(あ…よかった…あいつらどこにいったんだよ…)
蓮は心の中では既に苛立っていた。海斗と青蘭はまだどこにいるかはわからない。
「あ、座ってください。お茶を持ってきます」
すると、その鬼女は何か蓮に言おうとしていたのだ。
「あの…ここは草薙さんの家ですか…?」
「そうですよ。どうかしましたか?」
声は小さかったが何とか聞こえた。この鬼女は何かありそうだ。すると、また蓮に何か言おうとしている。
「この家に…妖はいますか」
最初は小さかったがだんだんと大きくなった。妖と聞いて海斗と青蘭を思いだした。海斗は人間だけど、妖と関係を持っている。青蘭は妖狐だ。だから、2人を呼べばいいだけだ。
蓮の説得によって海斗と青蘭が嫌がりながら和室へ行った。すると、そこにいたのは鬼女だ。2人は身は覚えがあった。複数の店が並んでいるところで男性に連れ去られそうな人だったこと。
蓮が去ったあと、2人は座布団に座った。2人が壁や周りのものを壊した雰囲気に対し気まずく感じた。
「あ…あの…あなたたちが助けてくれた人ですか…」
おどおどしく喋ると青蘭が「そうですよ」と淡々と言った。
「この度は、ありがとうございます。私、実は誰かに追われていて逃げていたんです」
その話を聞き、2人は驚いた。
「ちなみに名前は紅葉といいます。鬼の国というところの国王の娘です」
国王の娘ということは王女なのか。なぜ、こんなことになってしまったのか海斗は気になった。すると、青蘭は何か言おうとしていた。
「紅葉さん、鬼の国での状況は大変なんですか」
「大変…ていうか…これには私の問題なんです」
これは国の問題ではなく、紅葉自身の問題だと感じた。
「あの…言いにくいんですが、私をこの家に隠してくれませんか?雑用だったら何でもしますので」
そういわれると2人はどうしようもなくなった。青蘭は部屋にいる明雄に紅葉をここで暮らしていいか許可をもらいに行った。海斗は、紅葉と気まずい中、2人っきりになる。
「あ、あの…紅葉さん、誰に追われているんですか?」
紅葉はそのことに対し、「大嶽丸」と小さい声で言った。
(大嶽丸!?ってあの鬼!?)
大嶽丸の存在は酒呑童子と並ぶ鬼のトップクラスだということは知っていた。まさか、紅葉がその鬼に追われているのか。
「紅葉さん、安全とは言えないけど、ここで暮らしましょう」
海斗は穏やかな口調で言った。そのことに対して紅葉は嬉しい気持ちになり、少し泣きそうになった。
(こんなの初めてだ…私、なんか泣きそうだよ…本当に…)
すると、和室へ来たのは元緋だった。あくびをしながら、2人の会話を見てしまった。そのせいで海斗気まずくなり、紅葉は顔を真っ赤にした。
(え!?可愛い女の子いんじゃん!)
元緋は紅葉がいることに対して興奮をした。その事でちらっと覗いた蓮は2人にあきれていた。
(海斗、壊したのを弁償しろよ。それだけじゃなくて元緋も今起きてきたし…)




