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妖の追凶〜time of hell〜  作者: 羽波紫希
百鬼夜行、鬼女の追想編
14/60

14.般若

海斗が目を覚ますと、そこは海斗の部屋の中だった。外を見ると朝になっていた。


(暑い…ここは…推しのフィギュアがあるから…僕の部屋?)


まだ海斗は意識はあったが、朦朧としていた。少し和室で横になろうと下へ降りていくと青蘭、蓮、元緋がいたのだ。


「あれ、みなさんはなぜここにいますか?」


海斗がまだ朦朧としていたせいで声でが小さかった。すると、3人が海斗に気付くと海斗のところまで駆けつけたのだ。


「おい、海斗大丈夫か」

「まだ寝てた方がいいんじゃないのか?」

「聞こえるか、海斗。俺だ、青蘭だ」


その声かけに海斗は何とか反応ができた。朝食を食べるために海斗は座布団の上にそっと座った。すると、和室に来たのは『皐月屋』の看板娘である咲良井(さくらい)すずこだ。


「海斗くん、おはよう。体は大丈夫?」


心配して声をかけたすずこに対して、海斗は「大丈夫です」と答えた。


(海斗くん、本当によかった〜)


すずこはほっとした気持ちになったのだ。海斗は冷めないうちに朝食を食べ、部屋へと戻った。そこで、少し横になるつもりだ。


一方、3人はすずこと雑談をしていた。特に蓮と元緋はすずこに対して惚れていたのだ。すると、一緒に座っていた青蘭がピコピコハンマーで2人の頭を強く叩いた。


「痛っ…って痛くない!」


2人が同時に言った。青蘭に怒ろうとしたがすずこがいたのでできなかった。それを見た青蘭は少しだけクスッと笑ってしまった。そのことは2人には気付いていない。


「2人って仲がいいんだね」

「いや…友達ではありません」


すずこが微笑みながら言った。蓮が戸惑いながら返していると、途中で元緋が「おい!」と怒鳴るような口調で言い捨てた。



それを見ているとすずこは海斗のことを思いだした。


「3人とも朝、明雄さんから海斗くんのこと聞いてない?」


すると、3人は首を振った。海斗のことは全く聞いてなかったのだ。すずこは「そっか…」と頷きながら続きを話した。


「実はね、明雄さんから聞いたけど、海斗くん、(あやかし)に成り掛けてるんだって。確か…"般若(はんにゃ)"と呼ばれる妖怪と」


海斗が横になっているということは妖に成り掛けているということなのか。その話を聞き、蓮は般若という妖怪を知っていた。けれど、海斗が般若になったのかはまだわかっていなかった。


「俺、般若という妖怪が知らないから誰か教えてくれないか?」

「青蘭、俺なら知ってるかも。般若のこと」


青蘭が知らないと聞き、蓮が般若について具体的に述べた。


「まず、般若は嫉妬や怒りから恐ろしい顔つきになる鬼女のことだ。他に意味としては真理を見抜く『仏の智慧(ちえ)』とも呼ばれてる」


すると、一緒に聞いていた元緋も首を振りながら頷き、漠然と理解をしたのだ。


「海斗はもしかしたら生前、般若と何か関係があるのかもしれない。今は横になってるからこの話は海斗に話さないこと。いいね?」


2人はオッケーサインをしながら膝を打った。



昼頃、すずこが店の手伝いへいかなくては行けない。そのため、帰った。


「さようなら。また来るね!」


すずこが明るい声で言ったあと、元緋と蓮は「さようなら」と声を張って言いながら手を振った。青蘭のほうは引っ込み思案なところもある性格なので、顔を赤くしながら小さい声で言い、2人より小さく手を振ったのだ。


(すずこさん、やっぱり明るいです。でも、この2人と俺は差が違うな…)


そうしていると、元緋が青蘭の背中を強く叩かれた。


「おい、青蘭。声が小さかったぞ」

「元緋さん、耳がいいんですね。」


すると、元緋が「さん付けって…」と戸惑いながら言った。


(やっぱり青蘭っていう妖怪、イケメンなんだけど、そういうところもあるんだな…)



3人は暇になったので、海斗の部屋へと向かった。そこに着き、そっと襖を開け、部屋の中を覗いた。海斗は布団の上で仰向けになりながら漫画を読んでいたのだ。予想外のことで驚いてしまい、3人はよろけた。すると、それを見た日陽は疑問に思った。


「おにいちゃ〜ん、この3にんどうしたの?」


声が通る感じで海斗に聞くと、海斗もよろけている3人に気付いた。


「え、うわあ!?どうしたの…?しかも特に青蘭は髪型が乱れてるし…」


青蘭はすぐに洗面所にある鏡を見た。すると、ひとつに結んでいた髪型が一気に乱れていたのだ。それを見た青蘭はため息をついた。


(こりゃ…縛るのめんどくさいな…)


青蘭はめんどくさがりながらも髪を縛り直したのだ。



夕方になると、明雄が帰ってきた。家にいなかったのはここら辺の住宅街での話し合いがあったらしい。それを言おうとしたがまだ全員寝ていたので黙って行ってしまったのだ。


「すまない。自治会があったのを忘れてしまって…」

「そういうのは最初から言って欲しかったよ」


海斗が少し怒りっぽく言った。 それに対して、明雄は「本当にすまん」と謝り、その話を終わらせた。すると、海斗はその話のことでどうでもよくなり機嫌は直ったのだ。



就寝時間になると、海斗と青蘭は海斗の部屋、蓮と元緋は日陽の部屋に行った。(夜、出歩くことができなかったので蓮と元緋はしばらく草薙家で泊まることに)


そして、それぞれの部屋の布団の中に入り海斗の部屋では青蘭、日陽の部屋では元緋がすぐにぐっすりと眠ってしまった。海斗の部屋の方では、電気を消すと静かな雰囲気だったのだ。海斗は少し寂しげを感じた。


(青蘭、やっぱり女子みたいで可愛いところもあるんだな)


青蘭が寝ていると女子が眠っている姿のように見えた。寝相がよかったのだ。


一方、日陽の部屋の方では元緋はぐっすり眠っていたが、寝相が悪かった。それだけでなく、いびきも想像以上にうるさい。そのため、蓮は眠れないでいた。


(元緋のいびきがうるさいのは俺だけか…日陽くんは寝てるし)


すると、元緋の足が蓮の腹の上にのっていた。


(おい、元緋邪魔だよ!俺は置物じゃねえんだよ)


蓮が元緋の足をバンッと強く置いた。それでも目を覚ますことはなく、いびきもうるさいままだ。



海斗もそろそろ寝るところだ。すぐに眠ろうとした瞬間。海斗の性格が別人のようにまた変わった。


「あ〜、これでようやく目覚めた。めっちゃくっちゃ最高だぜ。この夜は。俺はもう般若だ。」


笑い方も控えめではなく高笑いをしていた。それはまるで悪魔のような性格だ。


「俺は生まれたときから不幸だ。本当の家族と過ごしてた日はいつまでだっけ。あ〜あ、このことはどうでもいいや」


それをこっそり見た明雄は心の中で絶望した。


(もう最悪じゃ。海斗はもう人間じゃない…)


草薙家と妖との関係、百鬼夜行のせいで海斗は"般若"という妖怪と相性があってしまった。それどころか、もう危うい状態になっている。海斗はこの先も地獄が待っているのだ。



14話で「百鬼夜行」編を完結します。15話から「鬼女の追想」編へと連載を開始します。

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