11.黒の陰陽師と半人半鬼
海斗の部屋に着くと海斗はまだ寝ていた。それを見た青蘭は呆れた顔をしながらため息を吐く。
(一番起きるの遅いんだな…海斗は…)
もともとは海斗が百鬼夜行に参加している妖怪と目を合わせなければいいのにと青蘭は思った。すると、海斗が何か寝言を言っていたのだ。青蘭はこっそりと耳をかざした。
「やだ~もう無理…」
一部しか聞き取れなかった。だから、何を言っているのか全く分からない。まずは、起こしてみたが全然起きるわけがない。次は、体を揺らしてみても結果は同じ。
(これでもだめか…あ、そうだ!)
優柔不断のままではいられないと思い、青蘭はある行動に出た。
一階にある和室に着き、目の前にあった木刀を目にする。それを取り、次は台所へ向かいフライパンを取りに行く。そのあと、包丁とお玉を使う。
草薙明雄が家を出るタイミングを見て、こっそりと2階にある海斗の部屋へ向かう。それでも、まだ海斗は寝ていたので青蘭にとってはチャンスだった。
(よし、やろう)
まず、お玉とフライパンを持ちながら、音を立てずに海斗のところまでそろりと歩いた。すると、青蘭はお玉でフライパンを何回も叩いたが、海斗には効果なし。けれど、まだ青蘭は諦めてなかった。
(いや、まだだ。あの木刀を使ってみたら…)
青蘭のそばに置いてあった木刀を手に取った。そのあと、スイカ割りをするみたいな歩き方と木刀の持ち方を意識し、海斗の頭の近くを当てた。そうすると、海斗は少し目が覚める。
「う…ん…」
「せせせ…青蘭!?」
そこには青蘭が木刀を持っていたのを見て驚いた。
青蘭の表情は不機嫌な感じだ。海斗は初めて見た。
「海斗、今何時だと思ってんだよ」
「そんなの起きたばかりだから知らないよ」
青蘭が不機嫌そうに言うと海斗も言い返す。すると、「そっか」と言い部屋から出ていった。
居間に着くと朝御飯が並べていなかった。海斗は青蘭に聞くと「冷蔵庫にいれた」と言っていたのだ。海斗が冷蔵庫の中を見ると海斗の朝食が本当に入っていた。
(本当に捨てられたかと思った…ま、でもこれは夜に食べればいいか…)
海斗は暇になり、居間に戻りテレビを見た。今やっているのは昔放送していたドラマの再放送、時代劇など大人向けのものばかりだ。そのようなものに海斗は全く興味がない。テレビを消したあと、襖を開けた音が聞こえた。そこにいるのは人間の姿に化けている青蘭だ。髪型と顔は妖怪のときと変わりがない。
「今から気分転換しに茶々町へいくけど一緒にいくか」
そう言われ、海斗は暇だったので青蘭と一緒に行くことになった。向かう途中、海斗は青蘭になぜ人間の姿に化けているかを質問したのだ。すると、青蘭は「あそこは妖怪には敏感だから」と答えた。さらに、
「あと、陰陽師が多い。そのため、妖怪が侵入したとき式神で退治されるかもしれない」
そう言って、海斗は何となく理解した。陰陽師という言葉で知っていたためだ。
青蘭が言っていた茶々町に着くとそこは、普通の格好をしている死者たちと和風建築の商店街だった。その建築は現実の世界では建築できないような技術だ。まるで、架空の街みたい。
「じゃあ、俺は食べ歩きしてくる。海斗はどうする?」
「僕もついてくる」
すると、青蘭はそれに対して同意した。
まずは、茶々町の中にある青蘭のお気に入りのカフェ『緑の憩い』という場所へいった。中へ入るとそこは、特に抹茶スイ一ツ、餡蜜など和風系のお菓子がたくさんあったのだ。見た目も美しく、まるでプロの職人が作るような芸術作品みたいだ。
2人は注文をした。青蘭が水を少量飲み、グラスコップを優しく置く。そのタイミングで海斗が何か質問しようとする。
「もしかして、青蘭って甘いものが好きなの?」
その質問に対し、青蘭は顔を赤くしながら戸惑ってしまう。それが数分間続き、注文した商品が来てしまい、「うん」としか言えなかった。
海斗は抹茶パンケーキを、青蘭はほうじ茶味のジャンボパフェを頼んだのだ。ちなみに2つの商品にはバニラアイスが入っていた。2人は心の中で満足した。
海斗が青蘭が頼んだ商品を見た。美味しそうだと思ったが、パフェの量を気にしてしまう。
「青蘭…それ、食べきれる?」
「デザートだけは格別だから食べきれる」
甘いものが好きな青蘭を見て海斗は女性みたいだと思った。そこが可愛いところだ。
2人は食べ終えると店からでた。そのあと、どこに気晴らしをするか海斗のほうは決まったらしい。それは、ブックストアだった。そこで、海斗は最新刊の漫画を買いに行きたいそうだ。青蘭は漫画のことは全く知らない。だから、海斗に付いていくことにした。
向かっている途中、2人の男と目があってしまった。1人目は、黒髪に翠眼をして、センタ一パ一トの髪型をしているイケメン。 服装は全身真っ黒で海斗と青蘭と同じ年代くらいだ。もう1人は小柄な見た目に活発そうな顔をし、角が少し生えていた。1人目の服装とは違い、和服を着ていたのだ。
2人は素早く去ろうとしたときだ。
「ねえ、君、妖怪だろ」
その言い方がまるで天使と悪魔みたいな言い方だった。その男が青蘭を妖怪だと見分けられたのか。全く分からない。あの2人は何者だ。
「ちなみに俺は、陰陽師の仕事をして妖怪退治をしている。こっちは相棒の元緋」
この男と鬼はグルなのか。陰陽師と聞いたとき、普通の格好をしていたから分からない。
「ねえ、お前の名前は?」
「言い忘れてたね。俺は、東風谷蓮」
青蘭が名前を聞くとその男は東風谷蓮と名乗った。それに対し、「なるほど」と感じた。妖怪と見分けられたので、青蘭は本当の姿に戻した。すると、蓮は目を見開きながら驚いた。
(どこかで見たことがあるような…やっぱりそうか…)
蓮が心のなかでそう思いながら青蘭のことを推測した。




