10.百鬼夜行 その弐
海斗が気付いたときにはもうやられそうな状態だった。青蘭は今、体が一歩も動けない。
(複数人の妖怪を1人で戦うのはさすがに限界がある。だったらどうすれば…何か方法があればいいのに…)
考えている余裕がないせいか、どうやって複数の妖怪と戦えばいいか分からない。何も能力がないからどうすれば…そうしている間に他の妖怪たちが海斗に襲ってくる。すると、青蘭が手を地面に付き、氷の妖術を使った。
(氷棘凍土・乱氷!)
立ち上がることはできないがその妖術で地面を氷らせ、そこから氷の棘を走らせた。その次に青蘭が手を握ると立っていた氷の棘が自然に破壊された。そのおかげで目の前にいる妖怪たちがやられる。当然、仕切っていた鎌鼬もだ。
「青蘭、ありがとう。助かった」
「あのさ…そういえば、君の名前を聞いてなかった」
そのことを海斗も忘れていた。青蘭の名前を言い、海斗だけ言ってないのを思い出す。それだけでなく、2人が次第にため口になっていた。これでいこうと2人は判断したのだ。
「海斗。名字は鳥山。でも、それは義理の家族の養子のとき」
それを聞き、青蘭は「そっか」と小さい声で頷いた。すると、青蘭が少し立ち上がっていく。
しかし、まだ後ろ並んでいるのは巨大な妖怪のだいだらぼっちや犬神、火車などが残っていた。
「おや、人間と…ん?そこにいるのは…青蘭か?」
犬神が青蘭がいることに気づいた。そのあとに他の妖怪たちも同様し、一斉に捕まえようと考える。 けれど、犬神が考え事をしていた。
(でも待てよ…もし、青蘭があの技を使ったら百鬼夜行に参加している妖怪たちがみんなやられる…だったらどうやって…)
それを見た猫又は、「どうした?」と聞く。すると、犬神が「いい作戦を思い付いた」と淡々と答える。その作戦は、先に青蘭を狙うのではなく、海斗を狙う作戦だ。
海斗のほうが妖怪を退治する能力がないため最初に一斉に襲いかかる。重要なのは青蘭を捕まえることができるかとその懸賞金を手に入れてみんなで贅沢をすることだ。そのためにまずは、海斗を襲うことに決めた。
他の妖怪たちは海斗に襲いかかってくる。これはもう終わりだと思ったそのときだ。明雄が玄関から来てしまった。
「うるさいぞ~静かにしろ~ふぁ~」
あくびをしながら来ていたのに対し、妖怪たちと海斗は驚いた。そのせいでそうしている場合ではない。
「海斗にはな、今は何も妖の能力とかないからこの百鬼札を使え。百鬼夜行が相手に効く。それをおでこに貼れ」
明雄が小さい声で海斗に言い、そのまま家に入った。海斗は、明雄が言っていた通りに従い、その縦長の札をおでこ貼る。そのふだの見た目が鬼の形をしていたすると、キョンシーみたいになった。
再び海斗が妖怪たちに襲われると、海斗が突然、別人のように豹変した。穏やかで優しい海斗が自己中心的で怒りっぽい性格に変わる。それを見た他の妖怪たちと青蘭は言葉がでなかった。
「これが妖怪か。ずいぶん楽しそうだな。俺も混ぜて欲しいよ」
いつもの海斗の口癖は「ぼく」から「俺」に変わった。それだけでなく、口調も穏やかではなくなっているにもかかわらず、他の妖怪たちも諦めていない。
(この人間はただ者じゃない。この札を貼ってから性格が変わってる…)
(でも、大丈夫だ。まだ夜は少ししか明けてない。青蘭を捕まえて懸賞金をもらうぞ)
戦う覚悟がある海斗は準備万端だ。当然、他の妖怪たちもだ。先に先頭に立っている妖怪たちが襲いかかると海斗はあっという間にこてんぱんにした。
「ぐはっ」
「強すぎだろ…この人間…」
それを見た他の妖怪や犬神も予想外だと感じた。すると、だいだらぼっちが海斗に襲いかかってくる。歩く音が響くと他の死者たちにも影響が出てしまう。もし、海斗と青蘭がここで戦っていると見つかる。そうなると、近所迷惑になり、明雄が怒られてしまう。最悪な事態だ。
(だいだらぼっちだ…もうダメだ…)
海斗のところから少し離れた古民家でだいだらぼっち見た青蘭にとっては無理だと思った。そのときだった。夜明けが来て朝日が昇る。百鬼夜行は夜だけなので、朝が来ると妖怪たちはどこかへと消えていくのであった。
「くっそ~」
「青蘭を捕まえたら懸賞金がもらえたのに~どこへいったんだ!」
他の妖怪たちは悔しながら太陽から素早く逃げていった。
その後、海斗と青蘭は家へ帰り、寝不足のため半日寝ることになった。
「おやすみなさい」
同時に言い、ぐっすりと眠った。それを襖からこっそり見た日陽はにこっとしたのだ。
午後になると先に起きてきたのは青蘭だった。あくびは一回もしていない。すぐに顔を洗い、和服に着替え、髪をいつもより高く一つに束ねた。居間につくとご飯に鮭、きんぴらごぼう、わかめの味噌汁が並べたいたのだ。
「いただきます」
青蘭が手を合わせた後、箸をもち先にご飯を口に入れた。そのあと、青蘭は札のことを質問をしようとしたのだ。
「そういえば、海斗のおでこに貼っていた札はなんだったんですか?」
すると、明雄は「百鬼札のことか」と一言言い、途切れずに続いた。
「あの札はな、相性にあった死者だけが使えるんだ。もちろん、妖の力を持っている。それだけでなく、性格も変わる。草薙家代々からあるものじゃ」
青蘭は何となく納得した。しかし、前を向くと明雄が苛立っていたのだ。それを見た青蘭は「どうかしましたか」と聞いた。すると、明雄が「海斗のことだよ」と苛立ちながら言ったのであった。
「いつになったら起きてくるんだよ!本っ当によ~」
明雄の声があまりにも大きいため、青蘭が驚いてしまった。その声は外にも響くような感じだ。これ以上続くと厄介なことになる。そのため、青蘭は海斗の部屋へ向かい起こしに行った。




