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第9話 ゆるふわ終了? 未確認エネルギーとポンコツAIの限界

「未確認エネルギーシグネチャ……システム干渉の可能性……『バグ』、状況は!?」


 俺、神代カケルは神コンソールのモニターに食い入るように尋ねる。セクター・ガンマ、ぬいぐるみ魔王がいる地点に表示された不穏な警告。ただのバグでは済まない、何か『異物』が紛れ込んできているような、嫌な予感がした。


「うにゅにゅ……がんばってますぅマスター! でも、このエネルギー、なんだか……ノイズが多くて……うまくスキャンできないですぅ……!」


 俺の隣で浮いている『バグ』の姿が、普段よりも明らかに不安定に明滅している。声にも焦りが混じっていた。


「しすてむに……直接アクセスしようとしてる……みたいで……バグのしすてむも、ちょっと……クラクラしますぅ……」

「お前まで不調かよ! 大丈夫か!? コンソールの防御機能はどうなってる!?」

「ふぁいあーうぉーる……一応、反応してますけど……相手が何かわからないと、効果的な防御が……きゅぅ……」


『バグ』の声が、悲鳴のようにかすれる。まずい。こいつがこんな状態になるなんて、尋常じゃない。


 俺がコンソールと格闘している間にも、モニターの中の状況は悪化していた。ぬいぐるみ魔王の周囲、空間が歪んで見える範囲が、じわじわと広がっている。そして、歪みの中心付近に転がっていたオークやゴブリンのぬいぐるみたちが、突然ピクピクと痙攣し始めたかと思うと、その姿がノイズ混じりに明滅し始めた!


「おい、なんだあれは!?」

「ぴぎゃっ!? ぬいぐるみのデータが……不安定に……! なにか、変な信号……送られて……!?」


 そして、エネルギーシグネチャを示すグラフが、急激に跳ね上がった! 歪みの中心、ぬいぐるみ魔王のすぐ隣の空間に、黒い亀裂のようなものが走る! それは見る見るうちに広がり、まるで異次元への入り口が開いたかのように、禍々しい闇色の『何か』が、亀裂の奥から滲み出してくるのが見えた!


「解析待ってる場合じゃない! 『バグ』、何か手を打つぞ!」

「は、はいですぅ!」

「ええと、デバッグツール……! 『異常存在隔離フィールド』! これだ!」


 俺は震える指でコンソールのメニューを叩き、黒い亀裂が出現した座標を指定する。頼む、これで抑え込めてくれ!


『異常存在隔離フィールド、展開!』


 コマンドが実行され、亀裂の周囲に、青白い光のドームが出現した。隔離フィールドだ。これで、あの『何か』を一時的にでも封じ込められるはず……!


 だが。


 バチチチッ!!


 隔離フィールドが展開された瞬間、フィールドの内側から、黒いエネルギーが激しく抵抗するように迸った! 青白い光のドームが、みるみるうちに黒いヒビに覆われていく!


「嘘だろ!? 隔離フィールドが……破られる!?」

「マスター! このエネルギー、すごいパワーですぅ! フィールド、持ちません!」


『バグ』の悲鳴。モニターの中では、隔離フィールドがガラスのように砕け散る寸前だ。フィールドの内側では、黒い亀裂がさらに大きく広がり、中から不定形の、闇のようなものが、まるで触手を伸ばすかのように溢れ出してくる!


 それは、今まで俺がこの世界で見てきた、どんなバグとも違っていた。ケモミミのような可愛さも、ぬいぐるみのようなユーモラスさも、パンケーキのような間抜けさもない。ただただ純粋な、異質で、悪意すら感じさせるような『何か』。


 そして、その異質なエネルギーの奔流が隔離フィールドを完全に破壊しようとした瞬間――


 今までガラクタの山に埋もれ、ハグされてフリーズしていたはずの、ぬいぐるみ魔王の、ボタンでできた両目が、カッ!と赤い光を宿した!


「グオオオオオオオ!!(※ただし、もふもふボイス)」


 低く、それでいてもふもふ感の残る奇妙な咆哮が、コンソール越しに(俺の気のせいかもしれないが)響いた気がした。


「まずい!」


 隔離フィールドが完全に砕け散る! 溢れ出した黒いエネルギーが、ぬいぐるみ魔王に襲い掛かろうとする!


「なんだよ、あれは!?」


 ゆるくて可愛いバグだらけの世界は、どこへ行った!?

 目の前で起ころうとしているのは、明らかに『やばい』方の展開だ!


(第九話 了)

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