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相思相愛

 アパートに帰ると、大きなスーツケースに腰掛けた女性が、ドアの前に佇んでいた。


 あまりの意外さと懐かしさに、俺の胸に嵐のような感情がこみ上げてきた。

 なんと、それは、葵姫だった。


「ひ、姫様、何やってんですか、こんなところで」


「なにやってるじゃないですよ。京都では、あんなに絶対離さないって約束してくれたのに、黙っていなくなってしまうなんて、ひどいです、ひどすぎます」


 彼女は俺の胸に飛び込むと、泣きながら、ぽかぽかと胸を叩いた。


「と、とにかく部屋に入りましょう」


 少し落ち着いてから、葵姫は、俺がいなくなった後のことを話してくれた。


 米国にいることは黒島さんから情報の提供があったそうで、このアパートの場所を探り当てたのも黒島さん、さすが内閣諜報局である。


 黒島さんは姫様たちに協力的だったそうだ。俺のことを思って、という可能性は低いだろうが、彼女のミッションは法改正、女王容認という形で決着がつき、ミッション終了ということになったのだろう。

 

 当初は、葵姫、雅姫、星姫の三人が、俺を追いかけて渡米したいという意向だった。菫姫はそもそもがお世継ぎを産むことが目的だったし、まだ小学生だし、当然あっさり圏外となった。

 姫様たちは、黒島さんも含めて何度も話し合ったそうだ。

 誰が俺を追いかけるかについては、黒島さんから「一人なら協力する。二人以上は大きなスキャンダルになるからダメ」とのことだった。


 結局、雅姫は王位継承資格者としての自覚が芽生えたらしく、大和国に残ることを決断。


 星姫は「絶対に私が行く!」と未練たっぷりだったけど、私の強い気持ちに、最後はとうとう折れた。


「黒島には『あなたは継承権第一位だから自重なさるべき』と意見されたけど、翔太様以外の方となんて、私には、絶対に、絶対に無理。どうしても私が行きたいと言いはったんですよ」


 姫様が俺を探し出して依りを戻してくれる、1年前であれば願ったり叶ったりの展開と思えたかもしれないが、この地での遮二無二の努力がようやく実を結び始めた自分にとって、夢を断念して大和国に戻るという選択肢は、にわかには受け入れがたい。


「でも、王位継承権一位は葵姫、あなたであることに変わりはないのでは?」

 という俺の問いに、彼女はこともなげに答えた。


「新しい法律の施行は来年の四月と決まりました。それまでに籍を入れてしまえば、現行の王室典範の定めるところにより、私は王室を離脱して、ただの綾小路葵ですわ」


 となると、王位は継承権二位の雅姫が継ぐことになるのか。


「NAHAマラソンがきっかけで『庶民派で型破りな姫様』と国民の人気がうなぎ登り、本人もたくさん応援されて自覚を持ったみたい。王位は雅姫が立派に継いでくれるでしょう」


 一旦そうと決まったからには、全員一致協力して、葵姫を愛の逃避行に送り出そうということになった。ことが公になったら、大和国では大変な騒ぎになるのだろうな。



「それよりも、女にここまでさせて、翔太様、いえ、翔太さん、あなたは何か言うことはないのですか」


 俺は、意を決して、彼女に告げた。


「葵姫、いや、葵さん、俺と結婚してください!」


「はい、翔太さん! よろしくお願いします!」


 俺は彼女をきつくきつく抱きしめた。

 俺の腕の中で、葵姫が身体をもぞもぞさせ始めた。


「一年近くも放っておかれて、私、たまってるんだから。もう、今夜はたっぷりかわいがってね」


 彼女の言葉に反応を始めた俺の身体の変化に気が付いた葵さんは、自分の身体をその部分に擦り付けて来た。


「それとも、今から、する?」


「するって、何を? 夕食の準備ですか?」


「…いじわるね。いいわ、何を食べたいの?」


 俺も、彼女が愛おしくて、とても夜までなんて待ってられない。


「葵さんを、今すぐ、食べたい」


 俺は、葵さんをお姫様抱っこすると、ベッドに運んだ。(終)

 私は、わが国の皇室に対し強い敬意を持っています。それゆえに、皇室の現状に対し、危惧も感じています。

 愛子さまも佳子さまも結婚適齢期、お二人がご結婚されて皇籍を離れれば、悠仁さまお一人が皇室で孤立してしまう。そんな現状に一石を投じるつもりで執筆を始めたのですが、終わってみれば全然違う感じの話になってしまった。


 我が国の皇室が、盤石で、末永く続きますよう、祈ってやみません。

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