失意悄然
その夜は、いろいろなことが頭の中をぐるぐるして、なかなか眠りにつけなかった。
ようやく眠りについたところで、何やらそばに人の気配を感じ、目を覚ました。
なんと、俺のベッドの中に、全裸の黒島さんがいた! ああ、そうだった。この人は、この部屋の合い鍵をもっているんだった。
「ちょっ、ちょっと、何やってるの、黒島さん」
ようやく言葉を絞り出した俺に、彼女は眼に涙を浮かべながらこう告げた。
「翔太様、この度は大変なことになってしまって… お気持ち、お察しいたします。今夜は、どうか私に翔太様をお慰めさせてください」
そういって黒島さんは私を抱きしめた。柔らかな胸が俺の胸に押し当てられ、俺の身体は、本人の意に反して早速反応を始めた。
「翔太様には、いろいろと失礼なことをして本当にごめんなさい。言い訳になりますけど、全て任務としてやむなくやったことなんです」
「そ、それは、仕方ないと思うし、別に怒っていませんよ、本当です」
「これで私の翔太様に対するミッションはすべて終了しました。今夜は仕事抜きで、ご奉仕させてくださいね」
黒島さんは、ベッドサイドのライトを灯すといきなり唇を重ねて来た。
「翔太様!ずっと、ずっと、陰ながらお慕いしておりました」
黒島さんの手がするすると俺のパジャマの中に侵入し、すでに硬くなったものを捕らえた。細くてしなやかな指が俺の敏感な部分をピンポイントで刺激する。身体中を駆け巡る快感に、俺の理性はいともたやすくどこぞにすっ飛んでしまった。
俺は自ら服を脱ぐと、黒島さんに突入した。
黒島さんは俺をするりと受け入れ、自らも積極的に応じてきた。
「ああ、翔太様、すごい、もっと、もっとよ」
目くるめくひと時が終わると、黒島さんは態度は豹変させた。
「本当に翔太様は女性にはとことん脇が甘いですね」
彼女は、天井に仕掛けられたカメラを指さしながら言った。
「行為の一部始終は録画させていただきました」
スマホで録画した映像を確認しながら、彼女は冷ややかに俺にこう告げた。
「この映像を姫様たちにお見せして、翔太様は私とも愛人関係にあったと伝えたら、今は翔太様にご執心の姫様たちも、少しは目がお覚めになるでしょう」
彼女は、アダルトビデオさながらに絡み合う男女の映像を俺に向けながら、最後通牒を突きつけて来た。
「翔太様、そうさせていただいてよろしいかしら」
それにしても、普通ここまでやるか? 黒島さん、あんた何者?
「私は内閣諜報部より王室庁に出向中の、いわゆる秘密諜報員とご理解ください。これでも身を引いていただけないというなら、もっと過激な手を使うことになりますよ」
ここまでするほど、おれは邪魔な存在なのか。瓜生さんには反発した俺だが、ここで俺の気持ちがぽっきりと折れた。
俺は、黙って身を引くことを承諾した。
翌朝、軟禁を解かれて職員寮の自室に戻ると、部屋はもうもぬけの殻だった。
俺が以前住んでいたアパートの部屋を再契約したとのことで、荷物はそこに送るよう手配済みだった。
こうして俺は元の生活に戻った。半年間の幸せな日々が、まるで夢だったように。




