温泉旅行
俺と姫様たち五名は、仮称「翔太さまハーレム」の運営について、週一で定例ミーティングを行っている。
そのミーティングで、星姫から提案があった。
「翔太と会うの、王宮の敷地内だけではつまらないじゃない。順番に翔太と二人っきりのお泊りデートしませんか」
星姫の提案に葵姫、雅姫が即座に賛同し、楽しそうなので俺も賛成に回った。
「万一バレるとやばいことになる」という、オブザーバー兼お目付け役の黒島さんの慎重論は「気を付ければ大丈夫」という根拠のない楽観論に押し切られ、この提案は多数決で可決された。
最初にデートプランを立ててきたのは、やはり星姫だった。
彼女の希望は「一泊二日で温泉でしっぽりしたい」とのこと。彼女が選んだ行先は草津温泉だった。
ようやく秋本番、山間の温泉地の木々が色づき始めた頃、俺は王室庁の車を借りて、姫様と二人、現地に向かった。
星姫様が選んだ旅館は、温泉街の中心にある湯畑からもほど近い老舗旅館だった。
あくまでお忍びということで、俺は、俺と黒島さんの名前でチェックインを済ませた。
通されたのは露天風呂付の和室にベッドルームが付いた、なかなかに豪華なお部屋だった。
女将に「夕食までまだ時間があるのでお連れ様とお二人でどうぞ」と勧められ、早速二人で夕陽を見ながら湯船につかった。
「はー、気持ちいい、しあわせー」
姫様が俺の肩に頭を乗せながら言った。十分満足してくれているようで、俺まで嬉しい気分になってくる。
「ねえ」
星姫が顔を寄せてきたので、俺たちは長い、長いキスをした。少しエッチな気分になりかかったが、夜は長い、ここはキスまでで自重した。
夕食は、部屋で、上州牛のステーキがついたコース料理に舌鼓を打った。
「変装すれば気づかれないよ」 ということで、夕食後は、二人で散歩に出ることにした。
星姫は亜麻色のヘアウィッグにカラーコンタクトを身に着け、二人浴衣に下駄ばきで宿を出た。
草津温泉と言えばやはり湯畑、夜はライトアップされていてとても幻想的だ。外国人観光客も多く、幸い誰も星姫に気が付く様子はない。
それをいいことに俺たちは恋人同士のように手をつないで歩いた。
湯畑のある温泉街から、観光客相手の飲食店やお土産屋さんが並ぶ西の河原公園通りを、お店を冷やかしながら歩いた。十分ほど歩くと、お目当ての「西の河原公園」に到着だ。
この公園は、河原のいたる所から温泉が湧き出す、湯けむり漂うお散歩エリアだ。遊歩道がしっかり整備されて、あずまややベンチも設置され、河原の中には足湯の設備もある。
こちらも夜となればライトアップされる観光スポットだが、湯畑ほどの人出ではない。
ライトに照らされ浮かび上がる荒涼とした河原が風景は、とても幻想的で、この世のものとは思えない。
ここでも俺たちは、足湯に浸かりながら、人目もはばからずキスを繰り返した。
香港人らしき団体さんが俺たちを指さし「アイヤー」とか言っているが、もうそんなこと気にしない。
ライトアップは午後十時で終了、観光客たちは三々五々ホテルに戻っていった。
俺たちも宿に戻ろうと立ち上がろうとしたところで、姫様が俺の耳元で囁いた。
「ねえ、このまま、ここで、しちゃわない?」
「大和国にも草津温泉があるのか?」という突っ込みはご容赦を。国名は違えど、並行社会ということでご理解ください。




