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本命逆襲

 驚いたことに、スマホにあおい姫様からのメッセージが入った。ずっと既読スルーが続いていたのに、こんなことは初めてだ。


「残暑厳しき折、それでも王宮を吹き抜ける風に時折秋の気配を感じる今日この頃、翔太様におかれましてはいかがお過ごしでいらっしゃいますでしょうか…」

 随分と回りくどいメッセージだ。姫様、スマホ、使ったことないのかな。


「翔太様より、何度もメッセージを頂戴しながら、ご返事も差し上げなかった無作法、何ともお詫びのしようもなく…」

 あ、無作法は分かってたんだ。


「折り入ってお話したいこともございますれば(中略)…翔太様におかれましてはご多用中とは存じますが、それでも私めのためにご都合をつけていただける時間が少しでもおありになりましたら…」


 要するに「会って話がしたいので、部屋に行ってもいいですか?」ということのようだ。

 別に嫌はない。むしろ大歓迎だ。俺は早速返事を送って、その日の夕刻に部屋においでいただくことにした。


 1秒とたがわず、約束の午後六時ジャストに玄関のチャイムが鳴った。ドアの前で秒読みしてたのかな?


 ドアを開けると、葵姫様が、顔を赤くして、俯きかげんに立っていた。

「こ、こんにち、こんばんは。ほ、ほんじつは、お、おまねきにあずかり…」

「いらっしゃい、どうぞ、上がって」


「これ、黒島が、お土産に持っていきなさいって」

 差し出されたのは、ラベルに鎌首をもたげる蛇が描かれた、強精剤と思しきドリンクだった。黒島さん、相変わらず何を考えているんだ。


 姫様をリビングに通し、ソファに座ってもらった。

「狭いところで申し訳ない。きっと、姫様たちの住まいに比べたら、犬小屋みたいなものかもしれませんけど」

「そ、そんなことはない。うちの犬小屋はもう少し小さい」


「あ、お腹すいていませんか?」

「…すいていない」


「今からパスタ作るんだけど、一緒に食べませんか?」

「…食べる」


 いつも自炊しているので、パスタだったらお手のもの、黒島さんにもほめてもらったミートソースをお出しした。

「お口に合うといいのですけど」

「…合う、美味しい」


「そうそう、メッセージ、ありがとう。俺、私、てっきり姫に嫌われているのかと思ってました」

「そんなことは、ない」


「それで、今日はどんな風の吹き回しかな。何か相談したいことでもおありでしょうか」

「と、特には、ない」


 か、会話が成り立たない…


 食事も終わり、俺の質問も途切れ、なすすべなく気まずい沈黙が続いた。

 

 その時だった。

 やおら、姫様が立ち上がり、着ていたカーディガンを脱ぐと、キャミソールの肩紐を外した。

 ばさりと音を立てて服が足元に落ち、姫様はブラとパンティだけのお姿になった。


「な、なにをなさっているのですか」


 俺の問いにも無言で、今度はブラを外して足元に放ると、左手で胸を隠し、右手を最後の一枚に手をかけた。


 そこで姫様の手が止まった。脱ぐか、脱ぐまいか、葛藤されているご様子、俺は制止するのも忘れて、姫様がこの先どう動くのか、固唾かたずをのんで見守った。


 姫様は、突然踵を返して、玄関に向かって駆け出すと、止める間もなく俺の部屋から逃げ出していった。

 裸足で、パンティ一丁というお姿で。


 我に返った俺は、慌てて姫様の後を追い、部屋を飛び出した。


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