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第73話 【はいしん】 状態異常の対処法/狂乱の王

申し訳ありませんが、エルフの種族設定について、20話に追記しました。

具体的な内容としては、この物語の中ではエルフは女性しかいないという設定になっています。

(元々から考えていた設定ですので、この追記による物語への影響はありません。)


 現在俺達は、城エリアのボスを目指してダンジョンの探索を続けていた。



 「ルーシー!カエデちゃん!そっちに2体向かってるぞ!」


 『分かってる!左は任せて頂戴!』


 「それじゃあ、もう1体は私が貰いますね!」



 :うお、こっちに来たぞ!

 :ルーシーちゃんに向かってくる騎兵速いな。

 :ルーシーちゃん頑張れ!

 :ダンジョン配信って初めて見たけど、モンスターってこんなに足速いのか…。

 :初見さんいらっしゃい!

 :↑いや、こんな強いモンスターと遭遇することは普通は無いから安心しろ。

 :せやな。

 :カエデちゃんの方は、よく見たらクロスボウみたいなの持ってないか?

 :↑ホンマや。

 :なんか矢がテカってるような気がする…。

 :もしかして、毒か?

 :普通は魔法職の探索者どころか近接戦闘職でも厳しいで。

 :すっげー迫力!

 :なんか、視聴者数増えてきたな。



 見ての通り、俺達は複数のリビングアーマー騎兵と交戦中だ。


 浅い階層で遭遇したヤツらより、スピードが速くパワーもある。


 しかし、未到達階層のエリアボスとの戦闘を見れるかもしれないという噂を広めてくれた視聴者のお陰で、首無しとの戦闘時よりも視聴者数が多くなっていた。


 そのおかげで、俺とルーシーは特殊スキル【はいしん】のお陰でステータスが増加し、深い階層のモンスターにも余裕をもって対処出来ていた。



 『【はいしん】の効果かしら…。全身の力が漲ってくる…。』


 そう呟くと、ルーシーは手のひらに土属性の魔力を込め、土を弾丸の様に形成していく。


 ―ゴゴゴゴゴゴゴ



 そして魔法が完成すると、騎兵の頭に向けて直ぐさま撃ちだした。


 《アースバレット》!


 ―ビュン


 とてつもない速さで撃ちだされたルーシーの魔法だが、騎兵は頭を横に倒し、ギリギリで避けられてしまった。



 :あ、避けられた…。

 :さっきまでの騎兵はこれ1発だったのに。

 :惜しい!



 1発目は避けられてしまったルーシーだが、《アースバレット》をもう1発用意していた。


 『甘いわね!もう1発あるわよ!』


 ルーシーはその隙を見逃さず、用意していた第2射目を間髪開けずに撃ちだし…。


 ―ズドォン!


 騎兵の胸部装甲に大穴を開けた。


 騎兵は頭だけを倒したことで脇が開いた状態になっており、胴体を動かし辛い状態になっていたので、2発目の魔法を避けることは出来なかったのだ。


 弱点である胸の正面に穴が空いてしまった騎兵は、そのまま活動を停止した。


 『やったわ!』



 :よっしゃー!

 :これで残り1体!

 :カエデちゃんの方だけやね。



 「いいぞ!ルーシー!あとはカエデちゃんの援護…。」



 —ズドォォォン



 援護に行くぞ、と言いかけた瞬間にカエデちゃんのいる方向から巨大な剣が地面に叩きつけられる音が響いた。



 :カエデちゃんの破壊力は相変わらずだなw

 :当たればほぼ間違いなく1撃で倒せるロマン砲やな。

 :衝撃が半端ね~なw

 :す、凄い…。



 「大和さ~ん!ルーシーちゃ~ん!こっちも終わりましたよ~!あと、見たことのないタイプの鑑定眼鏡がドロップしました~!」


 そう言いながら、カエデは右手に戦利品である銀縁のメガネを持ちながらこちらに歩いてきた。



 『カエデも絶好調みたいね。』


 「そうだな。」



 :相変わらずカエデちゃんはド迫力だなw

 :これで戦闘終了やな。

 :カエデちゃんもナイスゥ!

 :なんだ、あの鑑定眼鏡?普通のモノとデザインが違うな。

 :↑鑑定眼鏡って、見たことないんだけど普通はどんなデザインなの?

 :普通は黒縁のメガネじゃね?

 :5年以上探索者してるけど、銀縁のは俺も初めて見たな。

 :↑じゃあ、かなりレアってことじゃん。

 :でも、デザインが違うだけじゃなあ…。

 :そんなに欲しいと思わんな。



 「も~!みなさん色々言ってますけど、デザインも大事なんですよ!それに、私的には大和さんには黒縁よりも銀縁の方が似合うと思うんですよね~。」


 「そうかなぁ。」


 『私は、ヤマトなら似合うと思うわ。』


 「流石はルーシーちゃん!お目が高い! って言う事で、ちょっと掛けて貰ってもいいですか?」


 そう言いながら、カエデちゃんは俺の顔にメガネを近づけようとしてくる。



 「ま、まあ掛けるだけならいいけど…。」


 「やったー!それじゃあ、私に任せてください…、あ、あれ?」


 —フラッ


 話しかけている途中で、カエデちゃんが突然俺の方に倒れてきた。



 :ど、どうしたんやカエデちゃん!?

 :体調不良か?

 :長時間の探索で疲れたんかな?

 :あ、よく見るとカエデちゃんの肩に傷が…。

 :ホンマや。

 :あっ!もしかして、クロスボウが当たったんじゃないか?

 :たしかに、それっぽいな…。

 :でも、そんなかすり傷でカエデちゃんがフラッとなるか?

 :う~ん…。原因は何やろ?



 「う、う~ん…。なんだか目の前がグルグルして気持ち悪いですぅ…。」


 「クロスボウの傷…。それにこの症状…。」


 『もしかしたら、クロスボウの矢に毒を塗られていたのかもしれないわね…。』



 :え!?

 :毒だって!?

 :は、早く解毒剤を…!

 :カエデちゃん死なないで…。

 :毒矢なんて卑怯な手を使いやがって…。



 すると、コメントを横目に見ていたカエデちゃんは少し安心したような表情になった。


 「あ、毒ですか。久しぶりだから気が動転してました…。」



 :あれ?

 :毒だよ?カエデちゃん?

 :普通は焦ると思うんだが…。

 :↑いや、探索者にとって毒はそこまで脅威じゃないんだ。

 :え、なんで?

 :↑まあ簡単に説明すると、解毒剤とかが無くても火属性の魔法を自分に向けて使えば解毒出来るんだよ。

 :そうやな。

 :これ、探索者の常識ね。

 :でも、日本のダンジョンってあんまり毒を使うモンスターいないから、実際に喰らうと焦るよね。

 :↑それは良かった…。

 :カエデちゃんは助かるってことやな。

 :安心したわ。


 :え?でも、自分に向けて火の魔法なんか使ったら火傷しないの?



 「その点は大丈夫だ。スキルや魔法による攻撃は、他人に対してダメージを与えないってのは常識だと思うけど、実は自分に向けて使っても同じなんだ。それに加えて、火属性の魔法には《浄化》の効果があるから解毒が出来るっていう説明で合ってるかな?」


 『そうね!100点満点の解説ね!』



 :なるほど…。

 :魔法って便利だな。

 :俺も探索者になってみようかな…。

 :もしかして、魔法を使えるようになれば病気を治すことも…!

 :↑いや、火属性魔法の《浄化》はダンジョン由来の状態異常にしか効果はないんだ…。



『という訳で、カエデも火属性は使えたわよね!早いうちに治しちゃいなさい!』


 「はい…。それじゃあ、いきますね…。」


 —ボワッ


 カエデちゃんが魔力を込めると、炎が全身を包んだ。



 :うわっ。

 :カエデちゃんが燃えてる…。

 :他人から見ると、こんなふうに見えるんだな。

 :スゲー。

 :なんか神秘的。



 しばらくすると、カエデちゃんの全身を包んでいた炎が消えて無くなった。


 「ふ~。浄化完了しました!」


 「よかったよ、治らなかったらどうしようと思ったが、大丈夫みたいだな!」


 『これで一安心ね!』


 「はい!」


 「それじゃ、少し休憩してから次の階層に進もうか。」


 『そうね。カエデはその間にポーションを飲んでおきましょうね。』


 「はい!でも、次はいよいよエリアボスですね…。」



地図ニキ:次の通路を曲がれば階段ですね。

    :おお…。

    :緊張してきた…!

    :今のうちにトイレ行ってこよっと。

    :ああああああ、もう直ぐ塾の時間だぁ。

    :↑ドンマイ。

    :ワクワク…。





------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------




 しばらく休憩した後、遂に階段を下りゲートの前に辿り着いた。


 「遂にエリアボスとの対戦だ…。2人とも準備は良いか?」


 「はい、大丈夫です!」


 『私も準備バッチリよ!』


 2人の様子を見ると、確かに問題なさそうだ。


 ルーシーは視聴者数増加のお陰で【はいしん】のステータスup効果を得ており、カエデちゃんはさっきまで敵の毒に侵されていたのが嘘のように顔色が良くなっている。


 「分かった。それじゃあ、いくぞ!!」


 俺を先頭に、3人ほぼ同時にエリアボスのいる階に侵入した。



 —ダダッ




 


 そこは息をのむような豪華絢爛な広間だった。


 「な、なんだこの部屋は…。今までの階層も城の中だったが、ここは異質だな…。」


 「すごく綺麗な部屋ですね…。」


 『本当ね…。どの調度品も普通に生きてたら一生お目に掛かれないようなものばかり…。』



 :き、綺麗だ…。

 :豪華な部屋だな…。

 :す、すげえ。映画に出てくる王の間みたいな感じやな。

 :あの壺とか滅茶苦茶高そう…。

 :良く見えないけど、奥の方にあるのは玉座かな?

 :確かに玉座っぽい。



 壁には豪華な装飾が施されており、他にも目を奪われるほどの豪華な調度品がいくつも飾られている。


 そして、先ほどカエデちゃんが「部屋」と表現していたように、他の階層と比べてなんというか、天井が低いような気がする…。


 しかし、この空間で最も異彩を放ち、眼を離せないものがこの部屋の一番奥にいた。



 :あ、あれ?玉座に誰か座っていないか?

 :ほんとだ!?

 :ガイコツ?

 :もしかしてリッチー?



 この空間の一番奥にある玉座の主は、煌びやかな黄金の王冠を被ったガイコツ型のモンスターだった。


 「あ、あれがエリアボス…?リッチーってやつですかね?」


 「おそらくな…。どんなモンスターか分からないが、とりあえずリッチーと呼んでおこう…。」



 と、カエデちゃんに返事を返すと、玉座の主に動きがあった。


 ⦅イデヨ⦆


 —シュンッ



 リッチーは玉座から立ち上がると同時に右手を横に伸ばし、恐らく「出でよ」とつぶやいたと同時に、何も無いところから大きな鎌を出現させた。


 そして、そのままゆっくりと俺達の方に近づき始めた。


 



 『動き出したわよ!私たちの侵入がバレたみたい!』


 —ググググ…


 ルーシーがそう言うと同時に、空間全体の魔力の流れが変わった。


 「なんて魔力…!?今まで遭遇した中で魔力量は断トツです…。」


 『そうね…。以前の私よりも魔力が多いかも…。』


 「それほどか…。という事は、魔法特化型のモンスターと見ていいか…。」



 そうやってリッチーの魔力量に驚いていた俺達だったが、更に信じられないことが起こった。




 リッチーは顔を上げると同時に、今まで閉じていた口を開き…。


 ⦅ヤット… キャクジン ガ アラワレタカ…。⦆



 「「『!?』」」



 :え!?

 :今の、誰の声だ?

 :しわ枯れた感じのお爺さんみたいな声がしたけど…。

 :もしかして、あのガイコツが喋ったのか?

 :ええ!?



 なんと、モンスターであるはずのリッチーが話しかけてきたのだ。




 しかし、俺達が驚きで無言のまま固まっていると、更に話しかけてきた。


 ⦅ドウシタ? ナゼ ムゴン ノ ママナノダ?⦆




 首無しの時とは違って、知性を以て俺達に話しかけている。


 その、モンスターが初めから意思を持って流暢に言葉を発しているという事実に、俺達は驚きと共に言い表しようの無いおぞましさを感じた。

 


 『モ、モンスターが言葉を…!?』


 「それだけじゃありません…。話し方からして、かなり知能の高いモンスターだと見受けられます…。」



 :喋ってる!?

 :ヤバいな…。高階層ではモンスターが人語を操るんか…?

 :何を驚いてるんだ?首無しも喋ってたじゃないか?

 :↑いや、今回は状況が全く違うだろ…。

 :せやな。首無しの場合は、言葉を発しただけ。でも、今回は言葉を理解してしゃべりかけてきてる。

 :↑会話ができるってことは、なんとか戦わずに済ませることも出来るんじゃ…。

 :そんな都合よく事が進むだろうか…。



 最初はルーシー達と同様に驚いていたが、直ぐに冷静さを取り戻した。


 そして、リッチーの動きに警戒し、どのように対処すべきかと考えていると、【はいしん】のコメント欄が目に入ってきた。


 「モンスターとの話し合いか…。」


 「ええ!?大和さん本当に言ってるんですか!?」


 『いくら言葉が分かりそうとは言っても、相手は武器まで取り出してるのよ…。』



 俺の考えに対し、2人は難色を示した。


 「だが、試してみる価値はあるんじゃないか?もしも上手くいけば…」


 —ガタン




 俺が2人を説得している途中だった…。


 今までこちらにゆっくりと近づき続けていたリッチーの様子に変化が起き、つい先程までこの空間を支配していた、禍々しい魔力が和らいだ。


 そして、驚きを含んだ声色で、こう話しかけてきた。


 ⦅ソ、ソノ スガタハ…。⦆



 :なんかリッチーが震え出したぞ。

 :何て言ったんだ?

 :「その姿は…」って言ってる?



 ⦅ソノ ウツクシイ ヨウシ。 ソノ スルドイ マナザシ…。⦆



 リッチーは、体を震わせながら言葉を続ける。


 ⦅ソシテ、ナニヨリモ 2ツノ チカラ ヲ アワセモツ、 キョウジンナ タマシイ…。カミイロ ハ チガエドモ。⦆


 ⦅マチガイナイ…。 マルシエ サマ。 ワタシ デス…。 ルイス・ミンサヒール デ ゴザイマ…。⦆



 マルシエ様…と言っているのだろう。


 恐らく、俺と見た目が似ているので勘違いしているのだろう。


 それに、ルイス・ミンサヒール。


 リッチーの名前なのだと思うが、ミンサヒールという言葉はどこかで聞いたことがあるような…。


 しかし、今の俺にはそれ以上にどうしても気になる点があった。


 俺はリッチーの話が終わるのを待てず、こう言った。


 「ッ!? 俺のことを誰かと勘違いしていないか? 2つの力とは、一体どういう…。」



 ⦅ サイゴニ オアイ シタノハ イツ デショウ…。 サイゴ…?⦆

 

 だが、リッチーの様子が再び急変し始めた。


 ⦅サイゴ…。サイゴ…。サイゴ…。最後…。最期…。 ウググググ…。⦆




 『な、なんだか様子がおかしいわよ!』


 「さっきまでは、何とかなりそうでしたのに、また禍々しい魔力が…!」


 

 ⦅ウグオオオオオオオ! シカタ ナカッタノデス…!! ドレダケ アナタサマ ガ ツヨクトモ…。⦆


 リッチーは、頭を抱え込んで何やら叫び始めた。


 ⦅マオウ ヲ タオセナケレバ…。タオス コト ガ デキナケレバ! ウガアアアアアアアアアア!!⦆


 その様子はどんどんエスカレートし、頭を壁に打ち付けながら狂ったように声を荒げている。


 ⦅ワタシハ オウ トシテ、 アアスル シカ ナカッタ!!ウオオオオオオオオオオオ!!⦆


 その様は、まるで過去の罪に公開し、苦悩しているかのようだ。


⦅シカタナカッタ…。 ソウ、 シカタナカッタノダ…。⦆


 —ギロッ


 『「「うっ!?」」』


 叫び声が止んだかと思った途端、リッチーは俺に殺意の籠った視線を向けてきた。



 先ほどまでの、空間全体へ広がるような殺意ではなく、俺達3人…。


 特に、俺に対しての明確な殺意を…。



 『先程までとは比べ物にならない殺気ね…。』


 「そうだな…。これは戦闘は避けられそうになさそうだな…。2人とも、無理はするなよ…。」


 「はい…!」


 『大丈夫よ…。』

「おもしろい!」「つづきが読みたい!」と思ったら


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― 新着の感想 ―
見ました、続きが気になります、伏線のようなものも色々あったのがどう回収されるのか楽しみです
おはようございます。 生前は名前持ちだったモンスターですか…また謎を呼ぶ存在が現れましたなぁ。
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