第69話 【はいしん】 夢の中の少女
(前回のあらすじ)
みなさんこんにちは!カエデです!
首無し騎兵との戦闘で、何故か私達3人の3方向からの攻撃が全て防がれてしまい、なかなか攻撃を当てることができませんでした…。
でも、特殊スキル【魔力視】持ちの視聴者のお陰で、首無しの感知魔法のカラクリに気づくことができたんです!
ネタが分かれば、こっちのもんだ!
って、思っていたんですけど、対処方法が分からず、結局突破口が見つからないままでした…。
それに加えて、大和さんの刀も、首無しの攻撃を防御し続けたことが原因で折れてしまい、大ピ~ンチ!
と、思いきや。
なんと、大和さんの【闇属性】を付与したオリハルコン刀を見た瞬間に、首無しは突然動きを止めてしまいました!
ピンチから一転!大チャンス!
そして、この隙を逃さなかったのは、意外にもルーシーちゃんだったんです!
ルーシーちゃんは、即座に首無しの背中側から胸の中心まで剣で貫き、最後は土魔法で首無しの鎧を内側から爆発させ、遂に因縁の敵を倒すことに成功したのでした!
でも、ルーシーちゃんの世界の勇者様と同じ闇の感知魔法を使ったり、倒される寸前に喋ったりして、謎の多い敵でした…。
それに、首無しを倒せたのはいいんですけど、いつになったら地上に戻れるんでしょうか…。
ここって、ダンジョンの何層目なんでしょうか…。
色々と心配なことが多いですけど、大和さんとルーシーちゃんがいれば何とかなりますよね…。
あ、暗い話はこのあたりまでにしときましょう!
それじゃ、あらすじはここまでにして、本編スタートです!
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第69話 【はいしん】 夢の中の少女
(んん…。)
(ここは何所だろう?)
(夢の中だろうか…?)
(誰かが周りにいるみたいだけど…。)
(それだけじゃない。誰かが俺に向かって叫んでいるようだ。)
(金髪で、褐色の肌で…。あっ、よく見ると耳が長いようにみえるぞ!)
(俺と同じダークエルフじゃないか!)
(顔は…。)
(う~ん…。眼がボヤけてよく分からない。)
(だけど、どうやら少女は泣き叫んでいるようだ。)
(誰だか分からないけど、どうして泣いてるんだろうか?)
(どうして、俺を見ながら泣き叫んでいるんだろうか?)
そう疑問に思っていると、金髪のダークエルフの女の子は俺に顔を近づけてきた。
(う~ん…。近くで見ると、ルーシーよりも幼い女の子みたいだな…。)
(まあ、エルフだから実年齢は分からないけど…。)
(んん…?)
(少女は俺の方に、更に顔を近づけてきて…。)
(って!?顔が近すぎないか!?)
(んむ!? どうやら俺は、金髪ダークエルフの少女にキスされてしまったようだ…。)
(知らない女の子と口づけをしてしまった…。)
(ファーストキスだったのに…。)
(まあ、夢の中だからいいか。)
(でも、おかしいな…。)
(夢の中なのに、なんだか眠くなってきた…。)
(そろそろ目が開けられなくなってきた…。)
すると、俺の様子を見て泣いていた少女が、更に涙を流し始めた。
(せっかく綺麗な顔なのに、涙と鼻水でグチャグチャだ。)
(んん?なんだ?何かが俺の腹にのしかかってきて重たい。)
(でも、自分の体を見ても、何も乗っていない様に思うんだが、誰かの足が俺の腹の上にのしかかっているような感覚がする。)
(せっかく人が寝ようとしてるのに、邪魔をしないでくれよ。)
(それに、この少女。さっきから俺の方を向いて「ママ‼︎、ママ…‼︎ お願い‼︎ 目を閉じないで…‼︎」って叫んでるようだ。)
(俺は男だ!ママじゃない‼︎)
(でも、俺の声は目の前の少女には届いていないようだ…。)
(そう思っていると、目の前の少女だけでなく他の所からも、ルーシーに似た声で「ママ、ママ…。」って、呼びかけてくるのが聞こえた。)
(んむう…。)
(夢の中で、こっちの声が届かないからって、好き放題言いやがって!)
(なんだか、今なら体を起こせそうだ…。)
(突然起き上がって、目の前の少女を驚かせてやろう。)
(布団に手をかけて…。いくぞ…。)
(さっきから言ってるだろ!)
(俺は…、っ)
―ガバッ
「俺は、ママじゃないって言ってるだろ~!」
「へ?ママ、ですか?」
俺が上体を起こして叫ぶと、そこには金髪ダークエルフの少女の姿は無かった。
その代わりに、何故かひどく驚いた表情で俺を見るカエデちゃんと…。
『んん…。ママ…。』
俺のお腹の上で、ついさっきまで寝ていたであろうルーシーが、寝ぼけながら、何やら呟いているようだ。
ていうか、夢の中でお腹に重さを感じた原因は、お前か!
「へ?さっきの女の子は? それに、カエデちゃん? ルーシー?それに、ここは一体何所なんだろ…。ああああああああああ!」
事態を直ぐに飲み込めなかった俺は、やっと自分の失態に気づいた。
(寝ぼけた状態で、とんでもないことを叫んでしまったぞ…。)
「か、カエデちゃん!違うんだ!聞いてくれ!」
「うふふ、何が違うんですか?大和さん!いえ、ママって呼んだ方が良いですかね?」
「ち、違うんだ。これは、夢の中で…。ああああっ!」
カエデちゃんに弁明しようとしている途中で、大変なことに気づいてしまった。
:やっほ~。大和ちゃーん!
:コメント見えてる~?
:大和ちゃんの寝てる姿も、可愛いけど恥ずかしそうにしてるのもいいね!
:大和ちゃんの顔、真っ赤で草
:↑大和ちゃんじゃなくて、ママだろ!
:まあ、この3人の中だと料理も作れて、(戦闘面での)安心感もあるから、実質ママってことになるか。
:ママ~、ママ~w
「【はいしん】が起動している!?カ、カエデちゃん!ど、どうして…。」
すると、カエデちゃんはコメント欄に、スッと指を向けた。
:【はいしん】切り忘れてたよw
:首無しとの戦闘で、よっぽど疲れてたんだろうねw
:3人とも休憩し始めてから、【はいしん】切り忘れた状態でぐっすり眠ってしまったで。
:寝顔配信頂きました!
:は~、中々良い配信だったわ~。
:寝顔配信の切り抜き動画出してもいいですか?
:↑おお、それは絶対バズる!
「と、いう事です。」
カエデちゃんは、コメント欄に指をさしたまま、そう言った。
『な、なんだかよく分からないけど、さっきの大きな声はヤマトのだったのね…。でも、《俺はママじゃない》って、どんな夢を見ていたのよ。うふふっ。』
ルーシーは、笑いをこらえるようにしながら、俺の方を見ている。
(むう。寝ぼけていたとは言え、恥ずかしいことを叫んでしまったな…。でも、ルーシーのやつ…。そんなに笑わなくてもいいだろうに…。カエデちゃんまで…。)
『俺はママじゃないって…。寝言とはいえ、大声で叫ぶなんて…。ぷふっ!』
ツボにはまったのか、しばらくルーシーが笑っていると…。
:大和ちゃんだけじゃなくて、ルーシーちゃんの寝言もお願い!
『え?私の寝言?』
:そういえば、ルーシーちゃんも『ママ…。ママ…。』って言ってたな。
:うん。
:自分用に切り抜いておきました。
:ルーシーちゃんは、お母さんっ子か。
:ルーシーちゃん、今度は『パパ』って言って!
それを聞いたカエデちゃんは、すぐさま【はいしん】の画面を操作して、ルーシーの寝言の部分を見せてくれた。
「ほら、配信のこの辺りです。大和さんが叫ぶ直前に…。」
—ママ…。ママ…。
すると、自身の寝言を再生されたルーシーは、恥ずかしさから、顔が赤くなってしまった。
「そういえば、俺が夢を見ている途中に聞こえた《ママ…。ママ…。》って言う声は、ルーシーの声だったのか!」
『ああああああああ!止めてえええええ!』
そうやって、しばらくの間ルーシーと大和は、コメント欄とカエデに揶揄われながらも、次の階層での探索に向けて休憩するのであった。
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