第66話 【はいしん】 因縁の相手
:今までと違って、この階層だけ広くない!?
:↑初心者かな?ダンジョン内では、中層ボスとエリアボスの階層だけ広くて開けた空間になってるんだ。
:へ~、そうなんだ。
:この騎兵強そうじゃね…?
:剣を持っているな…。
:なんか真っ黒の剣でカッコイイ…。
:↑敵のことをカッコイイとか言うな!
:左手に盾も持ってるぞ…。
:なんか、背中の部分がボコって盛り上がってる?
:↑確かに。なんか気持ち悪いな…。
前方には、今までの1.5倍ほどの大きさの首無し騎兵。
この階層の構造からして、コイツが城エリアの中層ボスで間違いないだろう。
そして…。
『アイツは…っ。』
ルーシーの様子からして、ルーシーが敗北したという因縁の相手なのだろう…。
たしか、俺の記憶では魔法が効かなくて負けたと言っていたような…。
『もしかしたら、私がソロの頃に負けた相手かもしれないわ…。なんでこんなところに…。』
「え…っ。それって、確かルーシーちゃんの魔法が効かなかったって言う相手じゃ…。」
:魔法が効かない?
:そんなモンスター初めて聞いたわ…。
:それが本当なら、ルーシーちゃんが勝てるわけ無いわ…。
『私が知ってるヤツなら、カエデの言う通り、魔法を無効化される可能性があるわ…。』
やはりか…。
ルーシーは、敗北した当時のことを思い出しているんだろう…。
表面上は取り繕っているが、いつもの明るい様子が一変して、どこか心の奥で怯えているような気がする。
《ツボ可視化》を発動し、ルーシーのリラックス度を確認すると、かなり緊張しているようだ…。
(ここは、リーダーとして
「ルーシー。前回は、アイツに敗北したかもしれない…。だが、それはお前が1人で戦ったからだ。」
俺はルーシーの手を握り、勇気づけるように言った。
『ヤマト…。』
「そうですね!私も、初めて2人にお会いしたときは、ソロでユニークモンスターと戦って負けそうになってました。でも、大和さんとルーシーちゃんの2人に協力してもらったから勝てました!今回は、私と大和さんがルーシーちゃんに協力するから、絶対に勝てるはずです!」
(第11話参照)
カエデちゃんも、ルーシーの手を握る。
『カエデ…。そうよね。この世界では、あの頃と違って1人じゃないのよね!』
「ああ。もし魔法が効かなくたって、物理攻撃特化の俺とカエデちゃんがいる。」
「だから、ルーシーちゃんは大船に乗ったつもりで居てください!」
:手つないでる…。
:なんか、てえてえ…。
:なんか良く分からんけど、ルーシーちゃんの因縁の相手っぽい?
:3人の友情か…。熱いな!
:なんか急に視聴者数増えてきたぞw
:ホンマやなw
:視聴者が増えれば増えるほど、大和ちゃんとルーシーちゃん強くなるんじゃなかったっけ?
:↑スキル【はいしん】の効果だっけ?
:なんか燃えてきたぞー!
:ルーシーちゃん頑張れー!
コメントでも言われているように、視聴者が増えてきたおかげで【はいしん】のステータスup効果で、力が漲ってきたような気がする。
『なんだかやる気が出てきたわ!2人とも頼りにしてるわよ!それに、今は色んな人が応援してくれてるものね!』
:もちろん!
:応援してるで!
:ルーシーちゃんには、俺らがついてるからな!
《ツボ可視化》で確認すると、ルーシーは、まだ少し緊張感が残っていながらも全体的にはリラックスできたようだ。
「それじゃあ、今回もいつも通りルーシーの遠距離魔法から戦闘を開始しよう。一応、アイツが魔法の効かないモンスターだと決まったわけじゃないからな…。それに、魔法が効かなかったとしても、どういう風に無効化するのか見ておきたいからな。」
『分かったわ。』
「それと、今回はルーシーの魔法が直撃するのに合わせて、俺が相手に奇襲をかける。魔法が効かなかった場合、こちらの存在がバレてしまうからな。不意打ちのチャンスを逃したくない。」
「分かりました。私は、いつも通り最初はルーシーちゃんを守りますね!」
「ああ。頼んだぞ、カエデちゃん。」
『よろしくね、カエデ!』
「それと、ルーシーは複数属性の魔法を撃ちだすことは出来るだろうか?もしかしたら、魔法が効かないという訳じゃなく、一定の属性に対しての耐性があるというパターンかもしれない…。」
:なるほど。
:ゲームでよくあるな!
:一定の属性にだけ、無効化レベルの耐性があるかもしれないってことか?
:↑裏返せば、耐性の無い属性があるかもしれないってことだな!
『複数属性ね。大丈夫よ!出来るだけ多く試してみるわ!』
「頼んだぞ!絶対に魔法を敵に当てるために、俺を巻き込んでも良いから全力で撃ってくれ。煙が巻き上がっても、《ツボ可視化》があれば相手を見失うことは無いから安心してくれ。」
『任せて頂戴!最大魔力でぶっ放してみるわ!』
「ああ。それじゃあ、まだ気づかれていないうちに仕掛けよう。いくぞ!」
そう言って、俺は刀を手に持って、首無し騎兵目に掛けて走り出した。
—ダッ
それと同時に、ルーシーは魔力を込め始めたようだ。
相手に気づかれない様に、右側から回り込むように走り寄っていく。
—タッタッタッ
走りながら、ルーシーの視点を確認すると魔法が完成したようだ。
発動したのは、5属性の魔法。
火属性、水属性、土属性、雷属性、光属性の魔法が展開されている。
「す、凄い魔力です…。」
:5属性同時に発動!?
:それぞれ5発づつ…。
:普通の人だったら、魔力めちゃくちゃ消費するんじゃね!?
:↑普通の人は、そもそも2種類発動するだけでも難しいわw
:やっぱルーシーちゃんってエルフなだけあって、魔法の才能が桁違いだな…。
:流石ルーシーちゃん!
:流石エルフ!
:さすエル!
『カエデ、そろそろ撃つわ。』
「分かりました…っ。」
ルーシーは、カエデの返事を聞くと同時に全ての魔法を、出来るだけ敵に気づかれない様に静かに撃ちだした。
—ビュンッ
:一気に5種類の魔法…。
:迫力が半端ないな…。
:これじゃあ、いくら魔力を感知できても避けられないんじゃないか?
:絶対当たるで!
:でも、大和ちゃんも巻き添えになってしまうんじゃ…。
:いや、探索者同士は攻撃が効かないから大丈夫!
:↑そうやったわ。
ルーシーの魔法は、首無し騎兵に向かって飛んでいく。
—カチャッ
すると、例のごとく10m程手前で首無し騎兵に魔力を感知される。
:あ、気づかれた…。
:感知されたか…。
:魔力操作可能範囲ってヤツだっけ?
:でも、避けられないなら関係ねぇ!!
俺は、首無し騎兵の行動を観察しながら近づいていく。
首無し騎兵も回避不可能だと考えたのか、避ける様な素振りは見せない。
(魔法を避けようとしない…。どうやって対処するか見せてもらおうか…。)
すると、ヤツは闇属性の魔法を体全体に纏い始めた。
—ググググ…
:なんか、体全体に魔力が漂い始めたぞ…。
:凄い魔力だ…。
:闇属性の魔力か…。
:でも、そんなことしたら闇属性の魔力の特性で、ルーシーちゃんの魔法が全部吸い寄せられるんじゃ…。
:↑そうなったら、全弾直撃で討伐成功するかもなw
:大和ちゃんに当たりそうだった魔法も、相手に吸い込まれていってるぞ!
コメント欄での予想通り、ルーシーが放った魔法のうち、かなりの数が吸い込まれるようにして首無し騎兵に向かっていく…。
まるで、俺自身も引っ張られそうな感覚がした。
すると、ヤツは漆黒のロングソードの腹を前に構え、防御の態勢を取った。
いつもカエデちゃんがガードをするときの様な構え方だ。
その直後、首無し騎兵に向かって吸い寄せられたルーシーの魔法は、全てロングソードの腹に直撃したかに見えた。
—シュンッ
しかし、すべての魔法がロングソードに当たった瞬間に、無効化されて消えてしまった。
:え…。
:本当に魔法が無効化されてしまった…?
:マジか…。
:魔法使いじゃあ、コイツを倒せないって…コト?
:ロングソードに当たった瞬間に魔力が分散されたように見えたぞ…。
「ほ、本当に無効化されました…。」
『やっぱり、アイツで間違いないわ…。初めて戦った時は、焦りで相手を観察できてなかったけど、あのロングソードでガードしていたのね…。』
なるほど…。
魔法を無効化する剣とは、厄介だ…。
(だが、俺の存在にはまだ気づいていないようだ…。)
:魔法は無効化されたけど、大和ちゃんの存在は気づかれてないぞ!
:あの距離から走り出して、もうここまでたどり着いてるのか…。
:大和ちゃん速すぎ…。
:いけえええ!大和ちゃん!
(魔法は効かなくても、物理攻撃ならどうかな…っ!)
—ダンッ
既に死角まで回り込んでいた俺は、勢いよく地面を蹴る。
そして、相手の左後ろ側から、胸の中心を目掛けて刀で突きを放った。
(貰った…っ)
—ガキンッ
「えっ。」
俺は、予想外の事に思わず驚きの声を上げてしまった。
完全に意表を突いたハズだった…。
しかし、相手の運が良かったのか、それとも意図してのことかは分からないが、俺の攻撃が当たる直前に、馬型ゴーレムごと右回りに方向転換した。
そのせいで、俺の攻撃は鎧の表面をなぞるように進み、首無しには有効なダメージを与えることは出来なかった。
『躱されたっ?』
「完全に虚を突いたと思ったのに…。」
:避けられたぁぁぁ…。
:完全に死角から攻撃してたよな。
:これは、大和ちゃんの運が悪かったとしか…。
俺の存在に気づいた首無しは、右手に持ったロングソードを左上から振り下ろしてきた。
—ダンッ
対する俺は、バックステップでこれを躱し、
—ズドンッ
相手の攻撃は地面に突き刺さった。
:ふ~。
:あぶね~。
:大和ちゃんだから避けられたけど、普通の人なら…。
:ミンチになってるな。
首無しのロングソードは地面に刺さっている。
俺は、攻撃を避けた直後に敵に再度接近し、胴体に切りかかる。
しかし、首無しは、盾を左手に構えながら攻撃をガードした。
:あ~っ、ガードされた~。
:そういえば盾も持ってたか…。
:隙が無いな…。
(ガードされたか…。でも、俺に釘付けになって、ルーシーの方に行かないのは好都合だっ…。)
「カエデちゃん!応戦してくれ!」
「分かりました!!」
:せやな!ルーシーちゃんの方に向かう敵がいなければ、カエデちゃんもこっちに来れる!
:物理特化の大和ちゃんと、カエデちゃんの2人がいれば、なんとかなるぞ!
:いけ~!カエデちゃ~ん!
:魔法が効かないだけなら、カエデちゃんの攻撃でぶっ潰せ!
:デカい剣で、ぶっ放してやれぇぇぇぇ!
ルーシーの視点から、カエデちゃんの接近を確認する。
—ガキンッ
首無し相手に、何度か切り合うものの、俺1人では盾によるガードに阻まれ、中々有効なダメージを与えられない…。
しかし…。
「馬の方は、ただ大きいだけの様だな!」
そう言って、俺は馬型ゴーレムの後ろ足を2本同時に切り飛ばした。
—ズバッ
:よし!
:いい切れ味!
:機動力は失った!
:これで、ルーシーちゃんの方に向かっていく心配は無くなったぞ!
馬型ゴーレムは、バランスを失いその場に崩れるようにして倒れた。
—ドシン
しかし、首無しの方は、今までの騎兵の様にそのまま倒れることは無く、素早く飛び降りて地面に着地した。
—カチャ
首無しが着地したその瞬間…。
遂に、こちらまでやって来たカエデちゃんが、機動力を失った敵に向けて片手剣を振り上げていた。
:カエデちゃん!
:ナイスタイミング!
走りながらステップを踏み、体重を乗せて片手剣を振り下ろし始め…。
《拡大》!!
カエデちゃんがスキルを発動すると同時に、片手剣が瞬時に7mほどに巨大化する。
「おりゃあああああ!」
:剣が一瞬でデカく…。
:いつもより、ちょっとデカくね?
:ぶっ潰せぇぇぇぇ!
:おりゃあああ!
:いけええええええ!
:ルーシーちゃんの仇ぃぃぃぃ!
カエデちゃんは、漆黒のロングソードを構えた首無しに向けて、そのまま巨大な剣を振り下ろした。
—ドン!
「え?」
「う、嘘ですよね?」
:は?
:なんで?
:カ、カエデちゃんの攻撃が…。
:う、受け止められた?
:ええええええええええええ。
なんと信じられないことに。
カエデちゃんの攻撃は、首無しのロングソードによって、いとも簡単に受け止められてしまった。
⑴第64話の魔力操作可能範囲の設定ですが、少し変更させていただきました。
変更後は、どんな種族でも魔力操作可能範囲内であれば魔力を感知できます。
ですが、エルフや魔族はその範囲が他種族に比べて、かなり広いです。
⑵それと、ダンジョンの構造です。
第1エリア~第○エリアという風に、いくつにも連なっています。↓
例)第1エリア(草原)
1階層 :セーフエリア
2~4階層:通常階層
5階層 :中層ボス
6~9階層:通常階層
10階層 :エリアボス




