第65話 【はいしん】 みんなのスキル
騎兵との戦闘後に食事休憩をとった俺達は、食後すぐに探索を再開していた。
というのも、俺達はまだセーフエリアには辿り着けていないので、城エリアのモンスター出現率が低いとは言え、いつ敵が襲ってくるか分からないのだ。
しかしながら、疲れを残したまま戦闘を行えば、不測の事態を招く恐れがある。
そこで、俺のスキル【マッサージ】を使って、歩きながら俺を含めた3人全員に《ツボ可視化》と《マッサージハンド》を併用しながら、マッサージを行っていた。
—モミモミ、モミモミ、モミモミ
「あ~、気持ちいいです~。」
『疲れが取れるわ~。』
2人とも、かなり疲労が蓄積しているようだ。
そして、今日のマッサージは、いつもと一味違う。
なんと、つい先ほど、ルーシーの視点を介して《ツボ可視化》の効果を使えるようになったおかげで、俺自身の背中のツボも見えるようになったのだ!
最近、女になったことで胸が大きくなり、知らず知らずのうちに肩が凝るようになっていたのだが、これでもう安心だ。
「あぁぁぁぁ…。ルーシーの視点で見ることに、こんなメリットがあるなんて…。練習しておいてよかったぁぁぁぁ。」
:なんか、大和ちゃんの顔が凄いことになってるんだがw
:↑スキルの効果なのか、眼が紅く光ってカッコいいけど、顔がトロけてるw
:大和ちゃんの魔力の手って、マッサージにも使えるんだな…。
:戦闘だけじゃないのか…。こんな使い方出来るんだな、初めて見た。
:↑たまに自分たちのマッサージに使ってるで。
:ルーシーちゃん気持ちよさそう。
:カエデちゃんは意外と肩が凝ってるんだな。重点的に揉まれてる。
:俺もルーシーちゃんを揉んであげたい。
:でも、大和ちゃんの、もう1つのスキルって本当に何なんだ?
:こんなに肩揉むのが上手いんだから、【マッサージ】だったりして…。
【地図】ニキ:みなさん、もう直ぐでマッピングが完了すると思うので、頑張ってください!
:↑おっ、やっとか!
:サンキュー【地図】ニキ!
コメント欄を見ていた俺は、偶然ではあるが自分の特殊スキルを言い当てられていることに気づき、少し驚いた。
だが、この世界では自分の特殊スキルを知られたとしても、特にデメリットが無いので、そろそろ公開してもいいかと思い始めた。
というのも、この世界の探索者同士(スキルを持った人間)は、スキルや魔法によって相手を傷つける事が出来ないので、戦闘が起こることは無い。
だから、スキルを隠す必要が無いどころか、もしも同じスキルを持っている人がいた場合に、スキルの使い方についてアドバイスを貰えたり情報交換ができる可能性があるので、自身の特殊スキルを公表している人間も多い。
まあ、同じスキルを持っている人間は殆ど存在しないので、実際に情報交換を出来る可能性はあまりないのが実情ではある…。
「え~っと、コメント欄で正解が出てしまったし、特に隠す理由が無いから話すけど、俺の【はいしん】以外のもう一つの特殊スキルは、【マッサージ】だ。」
「え、言っちゃって良いんで…。まあ、確かに隠す必要はありませんか!」
:ええええええ!
:マッサージ?
:全然、戦闘向きじゃなさそうだけど…。
:確かに。
:でも、3人の中では大和ちゃんが一番強いよな…。
:マッサージ…。確かに、ダンジョン組合のHPに最近登録されたスキルみたいですね。
:じゃあ、魔力の腕と脚、眼が紅く光るのも【マッサージ】の効果ってこと?
コメント欄の反応のほとんどは、もっと戦闘向きのスキルだと予想していたらしく、驚いている様子が見受けられた。
「そうだな。魔力の腕と脚は、元々は自分の肩を揉むための能力だ。それと、眼が紅く光るのは、相手のツボ等を見ることが出来る効果だな。凝っているところのツボとか、弱点とか、体のバランスとか…。」
:聞いてる感じ、本当にマッサージ特化のスキルって感じだな。
:でも、相手の弱点を見れるって強くないか?
:確かに…。
:魔力の腕もあるしな!
:でも、それ以外はあんまり…。
:↑たしかに、もっと戦闘向きのスキルを持った探索者も他にいるよな!
:うん。
:それなのに、日本ダンジョンの最高階層到達者になれるなんて…。
:現役探索者から言わせてもらうと、【マッサージ】は結構強いスキルだと思う。
:↑なんで?
:理由としては、探索者って、長い時間ダンジョンの中にいる必要があるから、疲労が蓄積するんだよ。それが原因で、戦闘中に万全な状態であれば受けなかったような攻撃を受けることもあって、それが命取りになることもあるんだ。
:なるほど。
:↑元探索者の俺が付け加えると、ダンジョンの中に居続ける生活って、よっぽどダンジョンが好きなヤツじゃないとストレス溜まるし、疲労のせいで精神擦り減らしながら戦ってるヤツが多いと思う。でも、大和ちゃんの【マッサージ】があれば、常に万全の状態をキープできるから、ダンジョンでの生活が苦にならないんじゃないかと思う。
:↑ビギナー探索者ですが、同じ意見です!
:はえ~。探索者ってストレス溜まるのね…。
:大和ちゃんがいれば、疲労が溜まらずに最高の状態で常に戦えるという事か。
:1パーティーに1人大和ちゃんが必要ってことか!
:だから、探索者を続けてるやつは、よっぽどの訳アリか、戦闘のセンスがズバ抜けてる奴、後はダンジョンが好きで堪らない奴ぐらいかな。
:そうじゃないと、すぐにダンジョンでの生活が苦になって辞めてしまうな。
「たしかにダンジョンでの生活を苦に感じたことは、あまり無いな…。」
「確かに、3人でパーティーを組んでからはストレスがかなり減りましたね…。」
『そうね。私もソロだった頃は、本当に大変だったわ…。特殊スキルをゲットしたのは良かったけど、使い方が分からなかったし…。』
3人は、それぞれソロだった頃の記憶を思い起こしていた。
『そうだ。特殊スキルと言えば、カエデのスキルって、何ていう名前なの?物を大きくするスキルってことは分かるんだけど…。』
:そういえば…。
:いや、この前スキル発動するときに、《拡大》って叫んでるの聞こえたぞ。
:あれ。カエデちゃんのスキル名知らん人多いんやな?
:探索者なら知ってる人多いけどな。
:たしか、【拡大・縮小】じゃなかったっけ?
:↑そうそう。
:あれ?縮小も出来るの?
「私のスキルですか。そういえば、お二人には言ってませんでしたね!コメントで言われている通り、私のスキルは【拡大・縮小】です。実は《縮小》も出来ます。」
『へ~。初めて聞くスキルね。《拡大》の方は分かるんだけど、《縮小》の方は、どうやって使うの?』
「そうですね~。《縮小》の使い方としては、アイテムボックスに入れる物に使えば、アイテムボックスの容量を実質的に増やすことが出来るっていう便利な能力なんです!」
:ええ!?
:それは知らんかった…。
:めちゃくちゃ便利じゃね!?
:1パーティーに1人カエデちゃんが必要そうだ…。
:ホンマやな…。
「それは便利なスキルだな…。ちなみに、俺のアイテムボックスに入れるアイテムにも《縮小》を使う事って…。」
「他人のアイテムには使ったことはありませんね…。一度、セーフエリアに辿り着いたら試してみましょうか!」
「ああ!よろしく頼む!」
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そうやって、会話を交えながらマッピングを続けていくと、遂に階段を発見することが出来た。
因みに、この階層も隠し部屋の中に階段が設置されていた。
この城エリアにも慣れてきたのか、前の階層よりも楽に、次の階段を見つけることが出来た気がする。
:遂に階段発見ですね!
:また肖像画が飾ってあるぞ…。
:次はペガサスに乗ったダークエルフ?
:綺麗だな…。
:このペガサス半透明で、本物の生き物っぽくないな。
「この階層にも勇者の絵ですか…。」
「そうだな…。この城は、異世界の勇者と何か関係があるんだろうか…。」
綺麗な女性だな…、と思いながら絵画を眺めていると、絵の中にもう1人の人物が描かれていることに気づいた。
「あっ、ここに羽の生えた小さい女の子もいるぞ。」
その人物は、薄い水色のロングヘアーで、背中に羽が生えている。
そして、その背丈はとても小さく、人間ではありえないような…。
まるで、ようせ…。
『この方は、おそらく妖精族の王女様ね…。このペガサスは、妖精女王様が使われていたと言われている、能力で生み出した幻獣だと思うわ…。』
俺が妖精って言おうとしたのに…。
「妖精ですか…。それに、能力で生み出したペガサス。そう言うスキルがあるって言うことなんでしょうか…。」
『そうね。それにしても、ダークエルフと妖精の女王…。ますます、この絵が勇者様を描いた物だと考えられる要素が増えてきたわね。』
:本当だ!妖精ちゃんが描かれてる!
:小っちゃくて可愛いな~。
:こんな可愛いのに、妖精の女王様なのか。
:ペガサスを生み出すスキルか…。
ルーシーの発言からして、この絵は勇者様を描いたものだという信憑性が高くなってきたようだ。
だが、そうなると、気になる点がある…。
1つ目の肖像画を見たときから気になっていたんだが、どうして魔族がいる城に、エルフの勇者の肖像画なんて飾られているんだろうか?
今まで戦ってきたモンスターの種類から考えると、この城は魔族の城なんじゃないか?
そう考えこんでいると、カエデちゃんが、「そろそろ次の階層に進みませんか?」と、声を掛けてきた。
『そうね。いつまでもこんなところに居てられないわ!早く次の階層に行きましょう!』
「そうだな!」
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そうして、階段を下りて次の階層に出ると、そこには異様な見た目の騎兵が歩いていた。
:で、デカくないか?
:今までの騎兵と違って、頭が無いな。
:見ただけで分かる…。アイツ絶対強い。
:なんか、この鎧だけ他のヤツらとデザインが違うな…。
今までの騎兵に比べて1.5倍ほどの大きさで、頭部の鎧は無い。
まだ相手との距離があるので、俺達には気づいていないようだが、かなり強そうだ…。
恐らく、アイツがこのエリアの中層ボスだろう。
『あ、アイツは…!!』
ルーシーが、忌々し気に相手を睨みつけている。
この様子から見て、あの大きな騎兵はルーシーが敗北したという、因縁の相手で間違いないだろう…。
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