第64話 【はいしん】 魔力操作可能範囲
騎兵は残り一体。
ルーシーが最初に撃った魔法で負傷し、奥の方で待機していた奴だ。
様子を伺うと、既に回復したらしく、土属性の魔法を撃とうとしているのが見えた。
距離的に近いカエデちゃんとルーシーではなく、何故か俺の方を狙っているようだ。
魔法は1発だけのようだが、ルーシーの様な凸凹の土の塊と違って、まるで…。
「弾丸みたいな形だな…?」
:ホンマや。
;何あれ!?
:ルーシーちゃんの土魔法と違うな…。
:あんな魔法あるん!?
:↑最近、魔法特化の探索者の間で流行り始めた魔法があんな感じ。
:そういえば、俺のパーティーの魔法使いも練習してた…。
:確か、射程距離と速度・威力が上がるんだっけ。
:でも、モンスターが使うところは見たことも聞いたことも無いぞ!?
なるほど。
俺は知らなかったが、既に探索者達が使っている魔法らしい。
『ヤマト!そろそろ撃ってくるわ!』
と、考えているうちに、騎兵は弾丸のような土魔法を撃ってきた。
—ドンッ
:撃ってきた!?
:凄い音だな…。
:銃で撃った訳じゃないのに、空気を切り裂く音で…。
:ルーシーちゃんの土魔法より速くないか…?
「速いっ…!?」
想像以上に弾速が速く、一瞬だけ驚いた。
だが、不意打ちではない上に、ここまで距離が離れていれば、避けることは出来る。
—ダッ
何とか左に跳んで魔法を避けることに成功し、魔法はそのまま俺の後ろの方の地面に衝突した。
—ズドンッ
:避けた!
:良かった~。
:凄い威力だったな…。
:魔法が地面にめり込んでる…。
:こんなん当たったら、跡形も無くなるで…。
:スピードには自信あるけど、俺なら当たってたわ…。
俺が土魔法を避けてすぐに、ルーシーとカエデちゃんが騎兵のいる場所に辿り着き、交戦状態になった。
機動力のあるモンスターは、2人にとっては戦い辛いだろう。
「俺も早く追いつかないと…。」
—シュタッ
そう言って、交戦中の2人のところに駆けでした。
しかし、その瞬間、俺を目掛けて後ろから何かが飛んでくるような気配を感じて、後ろを振り向いた。
「魔法…!?」
なんと、俺の後方10mほどの距離に、火属性魔法が飛んできているのが見えた。
よく見ると、俺達が通ってきた通路から1体の騎兵がやって来ており、そいつが魔法を撃ってきたのだろう。
完全に不意打ちではあったが、何故か10mほど手前で気づくことが出来た。
思い切り地面を蹴り、騎兵に向かって駆け出す。
—スタッ
魔法は、俺の頭を目掛けて飛んできていたので、相手に近づいていくことにより俺の頭上を通っていき、俺の後方の地面に命中した。
—ドカンッ
:うわ!?
:後ろから撃ってきたのか!?
:増援?
:ていうか、完全に不意打ちだったよな。なんで避けられたんだ?
:分からん。
:音もしなかったのに、かなり離れた距離で気づいてたよな。
:うん。
:この感じ、なんか既視感があるな…。
この騎兵もハルバートを右上から振ってくるようだ。
俺は騎兵に接近し、すれ違いざまに相手の左手側に回り込むことでハルバートでの攻撃を避けた。
その瞬間、《ツボ可視化》によって、武器を振ったことで騎兵の重心が偏ったのを確認した。
隙を見逃さず、《マッサージハンド》(脚型)を発動し、騎兵の左手側から魔力の脚で馬型ゴーレムごと蹴り飛ばし、転倒させることに成功した。
:脚!?
:大和ちゃんのスキルって、魔力の腕だけじゃなくて、脚も出せるんか…。
:よっしゃ、馬と一緒に転倒したぞ!
:今のうちに!
「分かっている!」
—スタッ
相手が起き上がる前に接近する。
騎兵は俺に抵抗しようとするが、右手側に倒れてしまったため、ハルバートが馬体と地面に挟まれて動かせないようだ。
その隙に、騎兵の胸を正面から突き刺し、止めを刺した。
—グサッ
弱点を破壊された騎兵は、そのまま活動を停止し、アイテムをドロップした。
:ナイスウウウ!
:討伐完了!
:大和ちゃんは敵に突っ込んでいくから、見ててヒヤヒヤするで。
:↑でも、何とかなるやろっていう安心感はある。
「よし!ルーシーの方も片付いたみたいだな!」
ルーシーの視点を確認すると、既に騎兵を倒しこちらに向かって走り出しているようだった。
『お~い!ヤマト~!こっちは終わったわよ~!』
「3大丈夫ですか~!大和さ~ん!」
「大丈夫だぞ~!増援は1体だけみたいだ!」
俺達は戦闘を終え、その後、3人でドロップアイテムを回収しに行った。
ちなみに、《マッサージハンド》(脚型)は、俺がソロで探索していた時に使えるようになった。
昔父親にやっていた背乗りマッサージを思い出しながら、自分の背中を足で踏んでマッサージしたいと考えていたら使えるようになっていた。
まだ他にも色々な形に出来るので、「《マッサージハンド》という名前でいいのだろうか?」と思ったが、深く考えない様にしている。
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『ふ~っ。体を動かした後の食事は最高ね~。しばらくゆっくりしたいわね…。』
「そうですね。でも、いつモンスターが現れるか分からないので、気は抜けませんよ。」
俺達は、先ほど騎兵と戦った広間で、周辺を警戒しながら水龍の肉で作ったビーフシチューを食べていた。
モンスターの出現を警戒して、3人で三角形を作るような形で座り、死角が無くなるようにしながら食べていた。
『それで、さっきヤマトが言っていた、後ろからの魔法に気づけたって話だけど、魔法操作可能範囲のことじゃないかしら?』
:何それ?
:誰か知ってる?
:確か、自身を中心にして魔法を発動したり、動かしたり出来る範囲のことじゃなかったっけ?
:↑よく知ってるな。
:魔法特化の探索者なら、魔法を発動できる範囲は分かってると思うで。俺は2mくらいかな。
:↑2m?短くないか?それじゃあ、かなりモンスターに近づかないと攻撃できないんじゃないか?
:↑いや、この範囲って言うのは、発動したりコントロールできる範囲って言うだけだぞ。
:せやな。範囲を超えて魔法を撃ちだすことは出来るから、2m以上離れた相手にも攻撃は出来る。
「操作可能範囲?言葉からして、魔法をコントロール出来る範囲だと想像出来るけど、後ろからの魔法に気づけたのと何の関係があるんだ?」
『そうね。コメントでも言われているように、自身を中心にして魔法の発動、及び操作が可能な範囲のことなんだけど、それだけじゃないの。』
「他にも効果があるんですか?」
『そうよ。魔力操作可能範囲に入った他者の魔法を感知することが出来るの。カエデも心当たりがあるはずよ!探索中に、ダンジョン内の魔力の流れを感じたことは無いかしら?』
「あ!たしかに、探索者になってから魔力を感じるようになりました!でも、大和さんみたいに遠距離の魔力を感じ取るなんてことは出来ませんよ?」
『そうね。普通は、コメント欄でも言われているように自分を中心に2mくらいまでしか魔力を感じ取ることが出来ないわ。でも、エルフや魔族は、もっと広い範囲の魔力を感じ取ることが出来るのよ。大和も、元は人間だけど…。』
「なるほど!大和さんがエルフになったのは最近ですもんね。エルフの体に馴染んできたってことですかね!」
『そのようね。因みに、この効果を提唱したのも勇者様で、エルフの魔力操作可能範囲が広いのは、種族スキルの【魔力操作】のお陰だと言われているわ!それだけじゃなくて、勇者様が発見した、このスキルの真の能力は…』
種族スキルか。
確かに、エルフになって直ぐに自分を鑑定した時に増えていた記憶がある。
それにしても、ルーシーが、また勇者について話始めた。
このままじゃ長くなりそうだから、気になってることを聞いておくか。
「それはそうと、もう1点気になっていることがあるんだ。」
『なにかしら?』
「さっき戦った騎兵のことなんだが、奴らもルーシーの魔法を感知していなかったか?1発目に撃った魔法が、10mほど手前で察知されていたじゃないか。」(第63話参照)
:たしかに!
:そうか、大和ちゃんが死角からの魔法を避けたときの既視感はこれか!
:だから不意打ちが効かなかったのか。
:でも、避けきれずに負傷してるやつもいたけどなw
:多分、ルーシーちゃんの魔法の速度が速すぎて避けられなかったんじゃね?
「そうでしたね!あの時気づかれなければ全滅させられたかもしれないのに…。って、あれ?もしかして、あの騎兵もエルフ…。」
『いえ、エルフではないと思うわ。鎧の頭部に2つ穴が空いていたでしょ。恐らく、魔族に関係のある者だと思うわ。』
「魔族ですか?確かに魔族と言えば2本の角が生えているのが物語の定番ですね。」
『たしかに、地球の漫画でも魔族が良く登場していたわね。魔族は色んな特徴を持った者がいるけど、どの魔族にも共通している点が、頭に生えた角と、エルフの様に長い耳、そして美しい顔貌と、魔法の扱いに長けているという点よ。あ、あと個体によって大きさに差があるけど、背中に翼が生えているわ。他にもあったと思うけど、今思いつくのはこんな所かしら…。(あ、あと、エルフと同じく女…)』
:エルフみたいに長い耳…。
:美しい顔…。
:背中に翼…。
:正に魔族って感じだな。
:エルフに似て綺麗なんだろうな…。
:ルーシーちゃん、なんか最後に小声でボソって言ってなかった?
:さあ?
:魔族の女の子見てみたいわ~。
『誤解を与えた様だけど、エルフと似ているのは顔だけよ!それ以外は、人間のような体の魔族もいるけど、体が蛇みたいな魔族も居るわよ!だから、魔族は本当に恐ろしいんだから!』
:え、蛇みたいな体…?
:モン娘って…こと?
:そ、それはそれで…。
:寧ろモンスター娘の方がいいまである。
:ヘビってことはラミア娘?
:ラミアがいるなら、アラクネも居るんじゃね?
:ここのコメント欄には特殊性癖しかいないんか…。
『ええ…。地球の人って魔族が怖くないのかしら…。』
コメント欄の意外な反応を見て、ルーシーはドン引きしていた。
:ルーシーちゃんが引いてて草
:いや、地球人でも大半の奴らはルーシーちゃんと同じ感性だから、安心して…。
:↑地球人なら…な。
:↑果たして、日本人はどうかな。
:くっくっくっく…。
:↑なんかカッコいい事言ってる風だけど、全然そんなことないからな。
「コメント欄には、中々ディープなオタク達が集まってるようですね…。ちなみに私は、エルフと獣人推しなので安心してくださいね。でも、最近読んだ漫画の影響でスキュラもいいかもって思い始めt…。」
:良かった、カエデちゃんは普通だね。
:ん?スキュラ?確か、下半身がタコみたいなモン娘だった気が…。
:下半身がタコ!?
:カエデちゃんもディープなオタクでワロタwww
:流れが変わったな…。
:カエデちゃんも「こっち側」ってことか…。
:これじゃあ、ルーシーちゃんが安心できないじゃないか…。
:草
『ええ…。カエデもコメント欄の変態達と同じなの…。ヤ、ヤマトはどうなのかしら…?』
ルーシーは、最後の希望とばかりに大和に質問した。
「お、俺は普通だから安心してくれ!強いて言うなら、地上にいた頃の漫画とゲームの影響で、エルフが好きかな…。」
俺は、カエデちゃん達と同じように見られないため、誤解を与えないようにすることだけを考えながら、ルーシーの質問に答えた。
すると、ルーシーは何故か、顔を少し赤らめている。
「どうしたんだルーシー?顔が赤くなってるような…。」
俺が顔をちゃんと見ようとして近づくと、ルーシーは何故か顔を逸らした。
「あ、赤く何てなってないわよ!あなたが変態じゃないみたいで安心しただけ!」
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