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第63話 【はいしん】騎兵


 前方にはかなり広い空間が広がっており、そこには3体の鎧の騎士がいた。


 「あれっ?馬に乗ってるみたいですね?それに、鎧の形も今までとは違うみたいですね…。」


 :本当だ…。

 :なんか鎧の装飾も今までのやつらより豪華に見えるな。

 :騎兵か…。

 :騎兵って強いって聞いたことあるな…。

 :↑そうだな。歩兵と違ってスピードが速いから、敵の隊列の横っ腹に回り込んで攻撃も出来て有利に立ち回れると思う。

 :動きが速いってことは、今までの鎧騎士と違ってカエデちゃんの攻撃当てにくいんじゃない?

 :↑確かに…。

 :カエデちゃん基本的に上段からの振り下ろししかできないからな…。


 今までの鎧騎士とは違ってゴーレムの馬に騎乗しており、武器はリーチの長いハルバートを装備しているようだ。


 おそらく、馬の機動力を活かして相手の隙をついてくるタイプだろう…。


 しかし、一番気になるのは鎧の頭部だ。


 今までの鎧騎士達は、多少の傷はあれど綺麗な状態の鎧を纏っていた。


 だが、目の前にいる奴らの頭部には、前方の左右に穴が開いている。


 そして、穴の開き方から考えると、外部から突き破られたというよりも、内側から穴をあけたような…。


 まあ、今はそんなことはどうでもいい。


 「まだ距離はあるけど、先に弱点を確認しておく。」


 『分かったわ。』


 戦闘に備えて《ツボ可視化》を発動させる。


 眼が紅く光り出し、俺の目には相手の様々なツボが映し出された。


 —ボワッ


 「弱点は、今までと同じで胸の正面か…。」


 狙うべき場所は今までと変わらない。


 コメントでも言われているように、スピードが速い相手には、カエデちゃんは攻撃を当てるのは難しいだろう。


 幸いなことに、騎兵はまだこちらには気づいていないようだ。


 相手が動き出す前に仕掛けさせてもらおう…。


 「ルーシー、カエデちゃん。このまま気づかれないように近づいていこう。ルーシーは、もし射程範囲内に入ったら、いつも通り魔法で攻撃してくれ。カエデちゃんもいつも通りルーシーを守っていてくれ。」


 「はい。」『うん。』


 『でも、騎兵ってことは魔法の扱いに長けているかもしれないわね…。』


 「ん?どうしてなんですか?」


 『そりゃあ、騎兵と言えば機動力と長距離からの魔法攻撃が強みだって習うもの…。こっちの世界では違うのかしら?』


 :ファイヤーボール撃ってくる騎兵か…。

 :ファンタジーって感じだな。

 :どんなのか見てみたいな!

 :たしか海外のDチューバーが鎧着ながらファイヤーボール撃つ動画出してたで。

 :↑そうか。魔法撃つだけなら地上でも出来るもんな。


 「異世界の騎兵ってそんな感じなんですね…。地球では魔法を使った戦争なんてありませんから、かなりが違いますね…。」


 「なるほど。ここはダンジョンだから地球の常識が通じない可能性もある。ルーシーの言うように、魔法を撃ってくる可能性も考慮して戦おう。」


 「はい。」


 『分かったわ。それと、そろそろ射程圏内ね。作戦通り、私から始めるわよ!』


 「ああ、頼む。」 「お願いします!」


 『任せておきなさい!』


 2人からの返答を受けたルーシーは、今までの鎧騎士にも有効だった土属性の魔法を発動する。


 —ゴゴゴゴゴゴゴ…


 手のひらを騎兵に向けながら魔力を込め、ボーリング玉ほどの大きさの土の塊が複数出来上がっていく。


 —《アースバレット》!


 ルーシーが魔法を発射すると、とてつもない速度で騎兵に向かっていく。


 :相変わらずデカいんよw

 :バレット系の魔法の大きさじゃないな…。

 :10発以上発射してるんじゃね?

 :これだけの遠距離から攻撃できるなら有利に立ち回れそうだな。


 そのまま土の塊が向かっていく。


 だが、騎兵たちは直撃する10mほど手前で《アース・バレット》の接近に気づき、視線を向けたように見えた。


 —ドンドンドンドン


 《アースバレット》が騎兵の周辺に到達し、その衝撃と共に砂埃を巻き上げた。


 :凄い衝撃だな…。

 :これはヒットしたんじゃないか?

 :でも、騎兵に当たる直前に気づいてなかったか?

 :確かに気づいてたみたいだけど、あの距離じゃあ避けられないだろ…。

 :そうそう。それに、ルーシーちゃんも避けられない様に何発も同時に撃ったから大丈夫大丈夫!


 「いや、2体には避けられたみたいだ。かなり素早いな…。」


 「本当ですか…。あの距離で回避するなんて…。」


 《ツボ可視化》の効果で常に相手のツボが光って見えている俺には、奴らが回避行動を取り1体を除き《アースバレット》の直撃を免れていることが分かっていた。


 そして、砂埃中で、負傷した1体を除き2体が左右に分かれてこちらに向けて走り始めているのが《ツボ可視化》によって見えていた。


 「左右に分かれて向かってくるぞ!俺は右側に対処する!そっちは2人に任せたぞ!」


 『分かったわ!』「こっちは任せてください!」


 2人に指示を出して、俺は駆け出した。


 —タッタッタッ 


 馬に乗ってるから、かなり速いな。


 俺が走り出してすぐに、2体の騎兵が土煙から飛び出してきた。


 :ほんとだ!大和ちゃんが言った通り、左右に分かれて出てきたぞ!

 :大和ちゃんのスキルって何なんだろう?

 :騎兵の走る速度めちゃくちゃ速くね?

 :今まで出てきたモンスターの中では最速だな。

 :大和ちゃんのスピードと、ほぼ互角じゃね?

 :いや、大和ちゃんの方がまだ速いと思う。


 確かに、俺とほぼ互角の速さだ。


 今回の相手は少し手強そうだ…。

 

 「それじゃあ、そろそろ新しい武器を試させてもらおうか!」


 —カチャッ


 俺は、前回のダンジョン配信の際に翼獅子のドロップから手に入れた、オリハルコン製の刀を取り出した。(第44話参照)


 装備屋で、【闇属性】のスキルオーブを付与してもらった、あの刀だ。(第46話参照)


 :え、新しい武器?

 :透き通った緑色で綺麗だな…。

 :高そう…。

 :もしかして、この刀ってオリハルコン製じゃね?

 :前回の配信でドロップしたやつか!

 :オリハルコンって、スキルオーブで付与できるんだっけ?

 :↑そう。

 :スキルオーブは安く売ってるから選び放題だと思うけど、何のスキルを付与したんだろうか…。


 俺は、相手に向かって駆けながら、刀に付与されたスキルを発動する。


 —【闇属性】




 オリハルコン製の刀の色が、惹きつけられる様な禍々しくも美しい黒色に染まった。


 その瞬間、この階層にいる者たちの視線が敵味方例外なく、大和の刀に注がれた。


 :なんか仰々しい色になったな…。

 :恐ろしい感じがするけど、眼が奪われるような美しさも感じる…。

 :これって、刀に闇属性の魔力流してるんか?

 :いや、さっきも言われてたように、オリハルコンだから【闇属性】のスキルを付与したんじゃね?

 :↑それだったら、ミスリルに魔力を流した方が良いと思うんだが。

 :恐らく大和ちゃんは闇属性の魔法が苦手だから、スキルで補おうっていう作戦だろう。それに、闇属性の特性を考えたら大和ちゃんが使いたがるのも分かる。

 :闇属性の特性って何なんですか?

 :↑簡単に言うと、引きつける力がある。

 :物理的にも、感情的にもな。

 :なるほど、スキルを発動したら相手の注意を惹けるってことか!


 そう。


 闇属性魔法には、特殊個体の翼獅子が使ったような、魔法攻撃を物理的に引き寄せる効果だけでは無い。(第43話参照)


 その証拠に、左側からルーシー達を目掛けて走っていた騎兵が俺の方を見ているのが、ルーシーの視点から見えていた。


 隙を見せたな。


 「ルーシー!今がチャンスだ!」


 (コクン)


 ルーシーは、声を出すことによって騎兵の注意が自身に戻って来るのを警戒し、頷くことで了承の合図を俺に送った。


 もちろん、俺にはルーシーの顔は見えていないが、ルーシーの視界が上下に揺れたことで、合図を認識した。


 そして、一瞬の隙を見せているうちに早く魔法を発動することを優先して、今回は3発に留めた。


 —《アースバレット》!


 :うおお。発動が速い!?

 :一瞬で3発も!?

 :この距離なら弾速も衰えないから、いくら騎兵が速いと言っても避けられないんじゃないか?

 :いけるで!ルーシーちゃん!


 ルーシーの魔法は、再び直撃の10mほど手前で気づかれたが、騎兵は避けきることは出来ず、右側面に直撃し、鎧が変形してしまった。


 また、ゴーレムの馬も破壊することに成功し、機動力を奪う事にも成功した。


 まだ動けるようだが、馬を失ってしまえば、こちらの敵ではない。


 「カエデちゃん!ルーシー!止めを頼んだ!」


 「了解です!」『任せて!次は奥にいる奴も倒しにいくわ!』


 2人はそう言うと、前方に駆けだし始めた。


 :ルーシーちゃんナイス!

 :スピードさえなければ、後はカエデちゃんのスキルで余裕だな!

 :後は、大和ちゃんの正面と、奥にいる奴の計2体か。


 

 俺の正面から走ってきている騎兵は、左手をこちらに向けて土属性の魔法を発動した。


 —ビュンッ


 かなり速いが、ルーシーの魔法ほどでは無い。


 俺は速度を更に上げる。


 すると、敵の魔法は外れ、俺の後方に飛んでいった。


 —ドガンッ


 :走るの速すぎじゃね…。

 :騎兵より全然早いかも…。

 :そろそろ騎兵と激突するっ…。


 騎兵はハルバートを右手を上にしながら両手で持ち、上から俺に向けて攻撃して来た。


 しかし、俺は衝突する直前で横に跳び、ハルバートの届かない相手の左手の方に回り込む。


 そして、すれ違いざまに相手の胸に刀を突き刺そうとするが、左手でガードされ、そのまま左手を切り飛ばすだけにとどまった。


 —ズバッ


 :避けたっ!

 :大和ちゃんの方向転換速いな。

 :よっしゃ!片腕無くなったぞ!


 騎兵は弧を描くようにしてUターンして、再び俺に向かって来ようとしていた。


 「なるほど…。方向転換か…。」


 俺は、馬の動き方を観察し、相手の隙が生まれる瞬間を見つけた。


 そして、再び向き合い、両者ともに走り出した。


 —タッタッタッ


 左手を失った騎兵は、右手にハルバートを持ちながら駆けてくる。


 右手が無いなら、もう一度相手の左手側に回ればいい。


 そう考えて、相手に向かっていく。


 だが、相手は先ほどよりも早いタイミングでハルバートを振り出した。


 「なぜ?」と思いながら相手を観察すると、相手はハルバートの持ち手の端を持ち、リーチを伸ばそうとしていた。


 それに気づいた俺は一瞬だけ速度を落とし、相手が武器を振りぬいた後に、相手の右手側に回り、そのまま腕を切り飛ばした。


 —ズバッ


 すれ違った瞬間、すぐさま方向転換を行い後ろを向く。


 そして、騎兵の背中側から胸にある弱点まで刀を貫通させる勢いで地面を強く蹴り、一気に相手に迫った。


 —ダンッ

 

 相手は背中に刀が刺さった瞬間に、やっと攻撃されていることに気づいた。


 しかし、ゴーレムの馬は直ぐに方向転換することが出来ず、そのまま俺は騎兵の胸まで貫いた。


 騎兵は、力が抜けたように地面に落ち、ゴーレムの馬と共に活動を停止した。


 :よっしゃ!

 :うおおおお!

 :魔法でバンバン戦うのもいいけど、大和ちゃんみたいな肉弾戦もカッコいいな…。

 :もう1体討伐完了!

 :馬は人間と違って、すぐに後ろに方向転換できないから、そこを狙ったのか。

 :なるほど!

 :騎兵の攻略法メモしとかないとね…。

 :左側から来てた騎兵はカエデちゃんが粉々に潰したで!

 :後は、奥にいる1体だけやな!


 「そうだな。2人が奥の敵に向かう前に、俺も急がないと…。」


 そう、俺が言葉を漏らした途端、件の騎兵の方向から魔法を発動しているのが見えた。


 俺達が別の個体と戦っている間に、ある程度回復していたようだ。


 おそらく、土属性の魔法で俺の方を狙っている…。


 なぜ、近くにいるカエデちゃんとルーシーじゃなくて、俺なのだろうか?


 だが、ただの土魔法じゃない。


 :奥のやつ、いつの間にか回復してる?

 :土属性の魔法撃とうとしてるやん…。

 :1発だけか…。

 :でも、ルーシーちゃんのヤツと形が違うな…。

 :確かに。

 :なんか、弾丸みたいな形じゃね?

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