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第61話 【はいしん】勇者の肖像画


 「このエリアは階段の先にゲートがあるのか…。なんて都合のいい…。それだけじゃなくて、城の外に繋がっているだろう下りの階段まで…。」


 『さっきコメントでも言ってた人がいたけど、やっぱり【はいしん】のお陰で運が良くなっているのかしら…?』


 「それはないんじゃないか?もし運が良くなるのなら、転移トラップに巻き込まれることなんて無いと思うんだが。」


 『それもそうね。ま、今はとりあえず階段を見つけられたことを喜びましょう。』


 「そうだな。それはそうと、ちょっと気になったんだが、そこにある絵を見てくれないか?」


 「絵?あっ、こんなところに飾ってあるのに気づきませんでした。これって肖像画ですかね?それに…。」


 :めっちゃ綺麗な女の人だな…。

 :鎧を着てる?

 :この子もダークエルフだな。

 :なんか大和ちゃんと似てないか?

 :確かにちょっとクールな感じが似てるかも?

 :髪色が違うじゃん。

 :確かに。大和ちゃんは銀髪で、絵の中の女の人は金髪だな。


 『ダンジョンの中に絵?…っ、こ、これは!?』


 ルーシーは次の階層のことで頭がいっぱいで、ゲートの隣に壁掛けられている絵のことなど全く意識していなかったが、その絵を見て驚愕した。


 「どうしたんだ?もしかして、この絵を知っているのか?」


 『いえ、この絵を見たのは初めてだけど、この絵の女性が私の知っている気がして…。』


 「もしかして、ルーシーちゃんのお友達ですか?」


 『い、いえ。友達なんて恐れ多いわ…。この絵の中の女性が、私の国に伝わる勇者様ととても似ているの。村の中に飾られていた肖像画も何度も見たことあるんだけど…。』


 :勇者様?

 :どういう事?

 :↑多分、配信を盛り上げるための設定だろ。

 :なるほど。


 「勇者様ですか?こんなに綺麗で強いだなんて…。でも、コメントでも言われているように、髪色こそ違いますが、本当に大和さんに似ていますね。それに、ポニーテールの紐の色も同じ青色じゃないですか!」


 「そ、そういえば青い紐で結んでいたんだったな…。でも、俺は自分はもっと明るい感じだと思っているんだが…。」


 「そうですね。なんだかこの人、少し悲しい表情をしているような…。そういえば、勇者様ってどんな人なんですか?よく物語に出てくる勇者様だと魔王を打倒したとか、女王様を救って恋に結ばれてとか…、って女の人でしたね。」


 『どんな人か…。勇者様の名前はマルシエ様。妖精女王様と2人で魔王を討伐するために世界中を旅していたらしいわ。魔王を討伐することは出来なかったらしいんだけど、各地に点在する魔王軍の主力を次々と討伐したと言い伝えられているわ。』


 「え、魔王を討伐したという訳じゃないのか?」


 『ええ。理由は分からないけど、当時世界最強と謳われた勇者様でも魔王を倒すことは出来なかったらしいの。』


 「最強の勇者様でも倒せない魔王だなんて…。どんな相手何でしょうか?」


 『魔王の姿も正確な情報は分かっていないらしいわ。でも、勇者様のお陰で世界に平和が訪れたと言われているの。そして、魔王軍のせいで疲弊していた世界を救ったのが勇者様の発明品よ。』


 「発明?その勇者様というのは、頭もよかったのか?」


 『そうなのよ!勇者マルシエ様は世界各地に訪れて、水車や井戸、それに魔道具を発明して世界中に広めたり、美味しい食べ物をふるまって、行く先々で感謝されていたって物語に書いてあったわ!!それだけじゃなくて、ペチャクチャペチャクチャ…。』


 ルーシーは、その後もしばらく凄い熱量で勇者様について語ってくれた。


 『それだけじゃなくてね、漫画も…』


 「ストーップ!勇者様が好きなのは分かりましたけど、このままだと話が長くなりそうなので、一旦ここまでにしましょう。」


 :面白い話やったけど、めちゃくちゃ長かったな。

 :それな。

 :なんか勇者様ってweb小説に出てくる知識チート系の主人公みたいやなw

 :確かにw

 :ってことは、ルーシーちゃんもweb小説とか読んだらハマりそうw


 「あ、そういえば、地球のエルフの説明をするときにweb小説が原作の漫画を見せましたけど、凄くハマってましたね…。」


 『確かにあの漫画は面白かったわね。特に主人公が地球の知識を活かして色んな発明をするところとか、美女だらけのハーレムを作るところとか…。ウフフ。』


 :なんかルーシーちゃんのイメージが…。

 :思い出しながら凄いニヤけてて草

 :美女ハーレム?

 :ルーシーちゃんって、もしかして百合…。

 :web小説読んでるときの俺みたいやんw

 :でも、確かに知識チートって憧れるよな…。

 

 『そうそう!私も昔は勇者様に憧れていたのよね~。だから、勇者様について書かれた本をお小遣いで集めたり、勇者様ごっこをしたり…。それだけじゃないわ!なんと、勇者様は私の村出身だったのよ!…ペチャクチャペチャクチャ』


 ルーシーの語りは更にエスカレートする。


『…石碑も建てられていると知ってからは毎日通ったけど、いつまでたっても妖精は現れないし、そもそも私はダークエルフじゃないし…。でもね!ペチャクチャペチャクチャ』


 「そこまでだ!勇者様のことは分かったから…。」


 『そ、そうね。ちょっと喋りすぎちゃったわね…。』


 :まだしゃべり足りないのかw

 :なんか推しについて語るオタクみたいだなw

 :勇者マルシエ様か…。まあ、こんなに綺麗でなんでも出来る人が自分の村出身だったら俺もルーシーちゃんみたいに興奮してたかもな。

 :でも、なんでダンジョンの中にそんな絵が飾られているんだろうな。

 :↑分からん。まあ、設定だと思うから、そんなに深く考えなくても良いんじゃないか?

 :あ!?

 :↑どうしたん?

 :絵の右上の文字を見てください!!

 :文字?それなら右下に書いてないか?

 :いえ、右上です!!カタカナで書いてあるように見えませんか?


 「右上の文字?カタカナですか?」


 『うーん。まだ日本語はよく分からないわね…。ヤマトは見える?』


 「あ、ああ。かなり崩したカタカナに見えるような気がするな…。」


 『そ、それで、なんて書いてあるの…?』


 「そ、そうですね…。これは…。さっきルーシーちゃんが言ってた勇者様の名前…っぽくありませんか…?」


 鎧を纏いながら、少し悲しそうな表情をした、大和に似た女性の肖像画。


 その絵の右上には、崩したカタカナで「マルシエ」と書かれているように見えた。

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