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第57話 【はいしん】 見たことのない場所


 謎の光に包まれた俺達は、目を開くと見たことのない場所にいた。


 『あれ?ここはどこ!?』


 「うぅ…。見たことのない場所に飛ばされたみたいですね…。転移トラップなんて初めて聞きましたよ…。」


 「どこかお城の中みたいだな…。こんな場所、ダンジョンの中でも見たことないぞ…。」


 「え…!?大和さんって、63階層あたりまで攻略してたんですよね…。それなのにこのエリアを見たことが無いという事は…。」


 「恐らくここは、70階層以降のどこかという事だな…。」


 :ええ!?

 :70階層以降!?

 :そんなヤバいトラップが20層にあるのかよ!?

 :そんなところまで飛ばされたら20層のトロール倒せるぐらいの探索者なら絶望的じゃね?

 :そうか!だから今まで転移トラップが報告されてなかったのか…。

 :このトラップにかかった人達全員死んだってこと…?

 :【はいしん】のステータスup効果のお陰でラッキーな状態じゃなかったのかよ…。

 :そういえば、【地図】ニキは居ないのか?あいつならここが何層か分かるんじゃないか?

【地図】ニキ:マッピング出来てないと、何層かは分かりません…。お役に立てずすみません。

 :そうか…。

 :スキルもそこまで万能じゃないわな…。


 「とりあえず冷静に考えよう…。今回の俺達の目的地は63階層(ルーシーと出会った場所)だ。つまり、ここから地上のある方向に進んでいくわけだが…。」


 『どちらに進めばいいか分からないわね…。』


 「そうですよね…。でも、お城か~。お城という事は、出口は一番下にあるんですよね…。」


 『そうよね…。あっ!?って言う事は、階層と階層をつなぐ部分が階段になっていたりしないかしら!?』


 「うーん…。階層どうしが階段で繋がっているなんて聞いたことが無いな…。まあ、もしも階段なんてものがあれば万々歳だがな。」


 :階層どうしが階段で繋がってるなんて聞いたことないな。

 :今のところ全エリアで例外なく、階層どうしはゲートで繋がってます。

 :ゲートって、あの黒いモヤモヤのとしたやつだっけ。


 「そんな階段が存在するかは怪しいが、とりあえず前に進んで行くしかないな。」


 「そうですね。それじゃあ、右と左のどちらに進みますか?」


 「そうだな…。俺は城の構造には詳しくないから、こういう時は棒が倒れた方向に進むようにしているんだが…。」


 『私もお城は外からなら見たことあるけど、中のことは分からないから、ヤマトと似たような物ね…。』


 :誰か西洋の城に詳しい人いてないか?

 :…。

 :…。

 :…。

 :誰も居なさそうだな…。


 「う~ん…。それじゃあ、多数決で決めてみませんか?」


 『多数決?それなら3人だから、意見もどちらかに傾くからちょうどいいわね!』


 「大和さんはどうですか?」


 「ああ、俺もカエデちゃんの考えに賛成だ。それじゃあ、どんな方法で決める?目をつむってる間に左右どちらかを指すとか…。」


 『その方法でいいんじゃないかしら!』


 「それじゃあ、大和さんの提案で行きましょう!」


 「オッケー。それじゃあ2人とも目を瞑ってくれ。…準備は出来たな?」


 「はい。」『大丈夫よ。』


 「じゃあ始めるぞ?せーのっ!」


 —バッ


 3人それぞれが目を瞑った状態で行きたい方向を指さした。


 「それじゃあ、目を開けて確認するぞ…。」


 「はい。」『うん。』


 3人が目を開くと…、


 :こんなことある?

 :3人とも同じ方向かw

 :俺も同じ方向に行った方が良いと思ってたんよ。

 :以心伝心ってやつ?


 『あ、…3人とも右じゃない!?』


 「全員同じことを考えていたみたいだな…。」


 「ふふ、なんだか心が通じ合ってるみたいでいいですね!…それじゃあ右の方に進んで行きましょう!」


 「そうだな!だが、まだこのエリアのモンスターとは遭遇していないから、慎重に進んで行くぞ!」


 『分かったわ!いつも通り前はヤマトに任せるわね。』


 「後ろは私が守りますよ!でも、お城ってどんなモンスターが出てくるんでしょうか?」



-----------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------



 —ガチャガチャガチャガチャ


 周辺を警戒しながら歩いていくと、前方から金属が擦れあうような音が聞こえてきた。


 「なんだあれは?人間か?」


 「本当ですね…。なんだか鎧をまとった剣士のようですね。」


 よく見ると、カエデの言うように西洋のプレートアーマーを纏った何者かが近づいてきているようだった。


 「この感じ…。モンスターだな…。」


 『あ…。』


 :全身鎧に覆われたモンスター!?

 :お城に居そうなモンスターだな…。

 :鎧の騎士って感じ…。

 :もしかして、リビングアーマーとか?

 :↑それって確か、鎧だけで動くモンスターだっけ?

 :身長は180㎝くらいか?

 :なんか怖いな…。

 :本物の全身鎧ってこんな感じなんだ…。


 そのモンスターは、コメントで言われているように全身を覆う鎧を身に着けており、腰にはロングソードを携えていた。


 「このエリアでの初戦闘だな!ルーシーは試しに魔法を撃ってくれ!」


 『え、ええ。』


 ルーシーは歯切れの悪い返事を返しながらも、プレートアーマーのモンスターと距離が離れているうちに魔法を撃つ準備をする。


 『それじゃあ、まずは雷の魔法からいくわ!』


 《ライトニングランス》!


 ルーシーは、鎧の中にモンスターが居るのであれば魔法の効果で一瞬痺れるのではないかと考え、雷属性の魔法を選択した。


 —ドカン!


 雷の槍が鎧に当たった瞬間大きな衝撃音が響いたが、鎧のモンスターは衝撃で後ろに押されただけで、痺れている様子は微塵もなかった。


 :ルーシーちゃんの魔法が効いてない…。

 :ちょっと後ろに押されただけだな…。

 :あ、走ってきたぞ…。

 :え、意外と動きが速くないか?プレートアーマーって重いんじゃなかったっけ?

 :↑モンスターだからパワーがあるだろうし、プレートアーマーは重いけど、重量が分散されるような作りになってるから意外と機敏に動けるぞ。


 —ガシャガシャガシャ


 鎧の騎士は、ルーシーの魔法を受けて問題ないと考えたのか、まっすぐにこちらに向かってきた。


 『雷は効かないようね…。やっぱり私が知ってるモンスターに似ているわ…。』


 「え、ルーシーちゃんはあの鎧のモンスターと戦ったことがあるんですか?」


 『そうね。厳密に言うとあのモンスターじゃないけど、私に刺さってた剣の持ち主があいつに似たモンスターだったの…。』


 「ああ、俺がルーシーに出会ったときに刺さっていた剣か…。」(第3話参照)


 :剣ってなんのこと?

 :刺さってたってどういう事?

 :とりあえず、ルーシーちゃんはこいつとの戦い方が分かるってことかな?


 『そうよ!でも、私が戦った時は魔法が効かなくて手も足も出なかったわ…。』


 「ルーシーちゃんが手も足も出ないって…。」


 『でも、私が戦った鎧の騎士はもっと大きかったし、装備も違ったわ。それに、さっき攻撃した感触からして魔法が無効化されたわけじゃなさそうだから、やりようはあると思うの。』


 「そうだな!それに今回は魔法が効かなかったとしても、俺とカエデちゃんがいるから安心してくれ!そうだよなカエデちゃん!」


 「はい!」


 :ルーシーちゃんでも負けたことあるんか…。

 :魔法無効化って、ルーシーちゃんの天敵だからな…。

 :でも、ルーシーちゃんの言う通り、今回は無効化されてるわけじゃなさそうだから倒しようはありそうだな。

 :うん。それに、物理攻撃系の大和ちゃんとカエデちゃんがいるから大丈夫や!


 「それじゃあ、いつも通り俺が先行して側面から強襲する。ルーシーは他の属性の魔法も試してみてくれ!できれば盛大に砂埃が出るような魔法でな!」


 『分かったわ!』


 「私はいつも通りルーシーちゃんのそばにいますね!」


 「ああ、よろしく頼んだぞ!」


 俺は《ツボ可視化》を発動し、敵に向かって走り出した。


 —スタッ


 :他の属性の魔法か…。

 :全身鎧の弱点ってなんだ?

 :うーん。炎も効かなさそうだし…。

 :つなぎ目を狙うって言うのが鎧の弱点だっけ?

 :↑俺もそれ聞いたことあるけど、戦闘中に隙間を狙うなんて難しいんじゃないか?

 :そうなんだよな。それだけじゃなくて、中身がなさそうだから隙間を狙って突き刺しても…。

 :物理が効くなら土属性で石をぶつけるなんてどうだ?

 :いいんじゃないか?

 :それナイスアイデア!

 :ルーシーちゃん!土属性使える~?


 『もちろん土属性も使えるわよ!以前は無効化されたけど、今回ならいけるかもしれないわね…。』


 コメントを読んだルーシーは、土属性魔法の発動に取り掛かった。


 :おお、ルーシーちゃんの目の前に土の塊が出来てく…。

 :土属性の魔法ってこんな感じなんだ。

 :同時にに6個発動してる!?

 :ボーリングの弾ぐらいの大きさか?

 

 《アース・バレット》!


 土の塊が高速で鎧騎士目掛けて撃ちだされた。


 《アース・バレット》は高い物理攻撃力を誇るが、方向を変えたり誘導することができないので、ルーシーは複数発射することを選択した。


 —ガシャ


 しかし、先ほどは真正面からルーシーの雷魔法を受けた鎧のモンスターだったが、今回はボーリング玉ほどの大きさの土塊が飛んでくるのを見て危険と判断し、回避行動をとり始めた。


 だが、すべての魔法を避けきることは出来ずに2発ほど攻撃を受けたようだった。


 そして他の《アース・バレット》は地面にぶつかり、周辺に砂埃が舞った。


 —ドカン!


 :凄い威力…。

 :《アース・バレット》って、野球ボールくらいの大きさじゃなかった?

 :え、本来はそんな魔法なの!?

 :何発か鎧のモンスターに当たってたよな!

 :それだけじゃなくて、逃げようとしてたから土属性の魔法ならダメージ与えられるかもしれないぞ!

 :それにしても凄い砂埃…。


 俺はこの瞬間を待っていた。


 「ルーシー!魔法を撃つのを止めてくれ!」


 俺は敵との交戦に入ろうとして、ルーシーの魔法に当たってしまわないようにするために指示を出した。


 『分かってるわ!私も大和の視点が見えてるから大丈夫よ!』


 「さすがだな!一緒にゲームで練習した成果が出ているじゃないか!」


 俺は鎧の騎士がいる砂埃に向かって走っていき、


 —ボフッ 


 中に飛び込んでいった。


 

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