第56話 【はいしん】第2回ダンジョン配信/ラッキー?
完成した武器を受け取った俺達は、ダンジョン産のアイテムの換金やオークションで手に入ったお金を使って買い出しに行ってきた。
その後、ダンジョン探索のための買い出しに行き、前回使い切ってしまった分の調味料の補充に加えてデミグラスソースを買っておいた。
そして、買い出しを終えた次の日に、第2回目のダンジョン探索のために、ダンジョンの前にやって来ていた。
「久し振りのダンジョンですね!SNSでも告知しておいたので、今回の配信はいつもよりたくさん視聴者の方が見に来てくれると思いますよ!」
「いつもSNS関係のことをやって貰ってすまないな。」
「いえいえ。私も楽しんでますので大丈夫ですよ!これで、【はいしん】のステータスup効果と新しい武器で63階層(大和とルーシーが出会った場所。)どころかもっと先に進めますね!」
「そうだな。それに、ルーシーの故郷に繋がる手がかりも見つけなければ…。」
「故郷の両親と会えない状態ですもんね…。」
大和とカエデはルーシーの境遇を思い、しんみりとした空気になった。
『ふふっ。私のことは心配しなくても大丈夫よ!この3人でなら、いつかきっと故郷への手がかりが掴めると思っているの!それに、今までは1人だったけど2人がいてくれるおかげで寂しくないわ!』
「ル、ルーシーちゃん…。そこまで私たちのことを思ってくれていたなんて…。」
「期待に応えて、異世界への手がかりを絶対に見つけないといけないな!」
『それじゃあ、今回の探索は気合い入れていきましょ!』
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ダンジョンに入り、セーフエリアである1階層を越え2階層に侵入してから俺とルーシーは【はいしん】を使い始めようとしていた。
「それじゃあ、そろそろ始めるぞ。」
『うん!』
「せーのっ!」
【【はいしん】】
スキルを発動すると、今までとは違って既に多くの視聴者が流れ込んできた。
おそらく、前回のゲーム配信の際にチャンネル登録してくれた人達が見に来てくれたのだろう。
:ついに始まったか!
:久しぶりのダンジョン配信やね。
:ダンジョン配信は初見です!
:俺もモン狩配信から来ました!
:今日もルーシーちゃん可愛い…。
:俺は大和ちゃん派!
:やっぱり今回の配信は視聴者多くなってるな!
「みなさんおはようございます!たくさん見に来てくれてありがとうございます!」
:収益化おめでと~!
:カエデちゃんおはよ~!
:そういえば、SNSでも収益化しましたって発表してたな。
:てことは、投げ銭出来るってこと?
:D5000 ルーシーちゃん推しです!
:↑なにこれ?
:投げ銭?
:Dってなんや?
:初めて見た。普通は¥じゃない?
:D2500 俺も投げてみたけど、どう?
:やっぱり変な表記になってるな。
:スキル【はいしん】を使ってるから、独自の通貨に変換されるとか?
「そうなんですよ!つい先日収益化が通りました!これも皆さんのおかげです!本当にありがとうございます!…って、確かにスパチャの表記がおかしいですね。大和さんのスキルで確認してもらってもいいですか?」
「確かに、コメント欄を見ると普通じゃないみたいだな。え~っと、スパチャに関しては…。』
俺は、空中に表示されている【はいしん】の画面を操作しながら、スパチャに関して調べてみると、同じように隣で調べていたルーシーが声を上げた。
『あ!コメント欄のDってところを触ってみたら、文章が出てきたわ!』
「あ、本当ですね!」
カエデは隣にいるルーシーの【はいしん】画面を見せてもらった。
「えーっと、ダンジョンコイン?具現化可能、任意の通貨に交換可能って書いてありますね…。」
「Dの部分をタッチすればいいのか?…たしかにダンジョンコインって書いてあるな…。」
大和が遅れてダンジョンコインの説明を読んでいると、カエデが突然声を上げた。
「あ!ここを見てください!100ダンジョンコインで1円に交換可能って書いてあります!」
:100分の1!?
:俺のスパチャが50円になったってことか…。
:めっちゃ交換レート低いなw
:これじゃあ、配信で稼ぐのは難しそうやね。
:塵も積もればって言うから…。
:でも、ダンジョンコインって言うくらいだから、何か別の使い道があるのかもよ!
:そうだよな!なにか特別なアイテムと交換できるとか…。
「う~ん。説明を読んでも特に使用方法などは書いてありませんね…。どうしますか?」
「そうだな。使い道がハッキリするまでダンジョンコインのままで置いておくのが良いんじゃないかな?」
俺は、ダンジョン産のドロップアイテムの換金で、十分なお金を手に入れられることが分かった今は、そこまでお金に拘らなくても良いんじゃないかと思い、そう提案した。
『私はそれでいいと思うわ!』
「そうですね。今のところはお金に困っている訳じゃありませんし、このままでいきましょうか!でも、そうなるとスパチャだけじゃなくて、視聴回数からの収益もダンジョンコインになってるかもしれませんね…。」
「まあ、そこに関しては次に地上に戻ってから確認しよう。」
:ダンジョンコインの使い道も分からないままとは…。
:配信ではお金はあんまり稼げなさそうだな…。
:まあ、探索者の本業はアイテムの換金だから!
:そうだよな!実力があるから、探索者としてお金は稼いで行ける上に、配信でも100分の1ではあるけどお金になる訳だからな!
:それに、視聴者が増えるとステータスup効果で強くなるし、運も上がってレアドロップも手に入るかもしれないしな!
「そういう事だ!視聴者も今までで一番多いから、何かいいことがあるかもしれない!」
「そうですね!」
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その後俺達は、モンスターを倒しながら20階層まで余裕を持ってたどり着いた。
なにせ3人それぞれがソロでも実力のある探索者だったうえに、今回はステータスup効果がある。
さらに、ゲームで鍛えた俯瞰視点のおかげで今までより的確な指示を出せるようになっていただけでなく、俺とカエデちゃんは新しい武器を手に入れたのだ。
:ダンジョンのパーティー戦って、こんなに声出しながら戦うんだな。初めて見た。
:俺も。
:↑作戦を言ってもモンスターには理解できないから、パーティー戦では声は出したもん勝ちやで。
:そうだな。そのおかげでパーティーの連携も取りやすくなるんだ。
:へ~。俺が生まれる前からダンジョンがあるのに、知らないことが多いな。
:大和ちゃんの声が凄く聞こえやすいな。
:ゲーム配信で鍛えたおかげか、指示も的確になってる気がする。
:↑そういえば、そんな名目でゲーム配信やってたんだったなw
:そんなことよりも、トロールくんが可哀想なんだが…。
:↑俺も最初は思ったけど、ここまでくると慣れてきたw
:トロール?サンドバックの間違いじゃないですか?
今は20層にいるエリアボスのトロールとの交戦中だ。
トロールは3mほどの巨体で、怪力と高い再生力が特徴的なモンスターだ。
再生すると言っても、何度も切り続けていると徐々にその力が弱まって来るので限界があのだが、痛みを気にせずに巨大なハンマーで攻撃してくる。
これを避け続けながら長時間戦うのは精神的にも辛く、トロールの弱点の火属性魔法を使えない探索者はソロでは討伐できずに諦めることが多いらしい。
一般的な討伐方法は、近接戦闘職が切り飛ばした部位に火属性魔法を使えるメンバーが魔法を放ち、再生できないようにしながら倒すらしい。
俺がゾロで倒したときはまだ火属性魔法を使えなかったので、再生できなくなるまで切り続けるという力業で討伐した。
話を戻すと、今回はトロールの高い再生力を逆に活かして、俺たち3人は戦闘の肩慣らしをしていた。
ちなみに、ルーシーには俺の「眼」として戦闘を遠くから眺める事に専念してもらっており、トロールの動きが止まった際に火属性以外の魔法を撃ってもらっている。
「次は左腕を切る!カエデちゃんは左足を頼む!」
「了解です!」
トロールはハンマーを両手で持っているが右利きらしく、ハンマーの頭の部分を右上にして構えているので、ガードし辛い左側を重点的に狙っていく。
俺はカエデちゃんに指示を出した後、壁を伝ってトロールの左腕に近づいていき、新しく手に入れたスキル【闇属性】を付与した刀で切りかかる。
「はぁっ!」
—ガキン!
トロールは今まで再生力を過信してなのかガードすることは無かったが、何度も左腕を切られたことで学習したらしい。
俺の攻撃が防がれた。
しかし、トロールの注意が大和に向いた隙を狙って、カエデがトロールの足元に接近する。
「カエデちゃん!頼んだぞ!」
「はい!それと、新しい武器で仕留めてもいいですか?」
「そうだな!そろそろ終わりにしよう!」
「了解で…っす!」
カエデは新しく手に入れたミスリルの片手剣に切り替え、火属性の魔力を流し込む。
—ジュワァ
:あ、これって新しい武器?
:なんか色が綺麗な青から紅くなって煙が出てないか?
:めちゃくちゃ熱そう。
:ジュワッって音鳴ってたぞw
:綺麗な剣だな…。
:魔力を流しても壊れないってことは、前回手に入れたミスリルで作った武器か!
:あの透き通った青色はミスリルやな!
:これがミスリル…。
:オリハルコンよりは見かけると言っても、戦闘シーンで見るのは初めてやからワクワクしてきたわ!
:そうだよな、実物は見たことあるけど、魔力を通してる瞬間は見たことなかったわ。
トロールはカエデが接近してきていることに気づいた。
今まで何度もカエデのスキルを見ているので、自分はもうカエデの攻撃範囲内にいることを理解し、遅れながらもガードの体勢に入る。
—グゥガアア
「これは防ぎきれませんよ!」
《拡大!》
カエデがスキルの能力を使用すると、火属性魔法を帯びたミスリルの片手剣が上段から振り下ろしている途中に5m程まで巨大化した。
:ええええぇぇぇぇ!
:魔力流したまま巨大化出来るのかよ!?
:これって、少ない魔力量で大きい魔法を放つようなもんじゃね?
:そう言う事になると思う。
:カエデちゃんとミスリルの相性抜群だな。
:カエデちゃんがまた強くなってしまった…。
「これで終わりです!!拡大火属性切り!!」
—ドシン!
カエデの攻撃に、トロールは声を出すことも出来ずに押しつぶされ絶命した。
巨大化したミスリル剣が触れた地面には、焼けたような跡が残っていた。
:うわああああ!
:トロールが跡形もなくなってる…。
:これは再生どころじゃないなw
:サンドバックにされた挙句、最後には跡形もなく始末されるトロールくん…。
:涙が出そうになるわ…w
:探索者ってみんなこんなに強いんですか?ゲーム配信から見始めたので良く分からないんですけど。
:探索者全員がこんなに強かったら、こんなに探索者人口少なくなってないわw
:初心者が潜れる低階層には、金目の物がないもんなw
:うん。それに、トロールの肉を食べたいって人も居ないから売れないし…。
:基本的には、トロールの階層以降でポーションのドロップ率が高くなるって言われてるで。
『すごい威力だったわね!カエデ!』
「えへへ!ルーシーちゃんに褒められちゃいました!」
カエデとルーシーが話していると、ドロップアイテムの鑑定を終えた大和が2人の元に戻ってきた。
「ドロップはLv1ポーションだったよ!それにしても武器に魔力を流したまま巨大化できるとは驚いたよ!こんなことが出来るって、知っていたのか?」
「そうなんですよ!実は安物の片手剣で試したことがありまして。1度切りつけた片手剣ごと壊れてしまったんですけどね…。」
:なるほど、普通の武器でも試すだけやったら出来るもんな。
:っていうか、この階層でLv1ポーションドロップするってラッキーだな。
:ポーションってLv1でもいい値段で売れるんだろ?
「なるほど!そんな方法があったのか!俺も参考にして何か新しい技を生み出せないものか…。」
カエデちゃんの話を聞いて新しい技について考え込んでいると、ルーシーが突然大声を出した。
『ねえ!2人ともこれを見てちょうだい!何か光っているみたいよ!』
ルーシーが指をさしている壁際の方を見ると、確かに何かが光っているようだった。
「ここからじゃよく見えないな。そっちに行くからちょっと待っててくれ!」
—ピカッ
大和が近づこうと一歩踏み出した瞬間に、3人の足元に魔法陣が現れた。
「な、なんですかこれええええ!」
『わ、私何も触ってないわよぉぉぉぉ!』
「ひ、光が強くて目の前が見えない!」
:え、なにこれ?
:魔法陣が突然3つ現れて…。
:もしかして、転移トラップとか?
:今まで転移トラップって聞いたことないけど…。
『【はいしん】のおかげで運が良くなってるんじゃなかったのぉぉぉぉぉ!』
ルーシーの叫び声を最後に、20階層からは3人の姿が突然消えてなくなった。
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