第44話 【はいしん】翼獅子2(特殊個体)/カツカレー
翼獅子とルーシーの魔法による砂埃が晴れる前に、奇襲を仕掛けようとしていた。
「カエデちゃんは、俺が攻撃した後に来てくれ。それじゃあ、いくぞ!」
—《マッサージハンド》
大和は無言でスキルを発動し、砂埃の中から魔力の腕で地面を蹴り、ジャンプした。
—グルアア!?
突然、砂埃の中から現れた大和に対し、一瞬驚いた翼獅子だったが、すぐに臨戦態勢に入る。
翼獅子は、翼の無い人間であれば、ジャンプの軌道は変えられないと考え、そのまま爪による攻撃を仕掛ける。
—《マッサージハンド》
しかし、大和の背中から突然魔力の腕が伸びてきて、翼獅子の角を掴みながら大和を引き上げることで爪による攻撃を避けた。
大和はそのまま丸ノコギリの様に、縦に回転しながら翼獅子の顔から尻尾にかけて切り進んでいった。
—グルアアア!
致命傷には至らなかったが、あまりの痛みに叫んでしまう。
—ブンブンブンブン
そのとき、カエデは鎖部分が長いモーニングスターを振り回していた。
:凄い勢いで振り回してる…。
:めちゃくちゃ音鳴ってる…。
:ブンブンブンブン!
:こんなの当たったら死んじゃうよ…。
:やっぱ探索者って力強いんだな。
:でも、こっからどうやって跳ぶんだ?
鎖の勢いが増してきたころ、翼獅子目掛けて振りかぶった。
—ジャララララ
:もしかして…。
鎖の先にあるトゲの生えた鉄球が、伸びきる寸前にカエデはスキルを使用する。
—《拡大》!
すると、突然重くなった鉄球に引っ張られて、カエデが翼獅子目掛けて跳び上がった。
「おりゃああああ!」
:カエデちゃんが跳んだあああああああ!
:えええええ。
:なるほど。鉄球を一時的に重くして、遠心力で飛んでいくんか。
:跳んでった~!
:秘策って、これか。
:練習してたんやろか…。
すぐに《拡大》を解除し、大和の攻撃に気を取られた状態の翼獅子に迫る。
—《拡大》!
「おらああああああ!」
渾身の力をこめて巨大な鉄球を振りぬき、角と一緒に頭部を叩き潰した。
—バリッ
そのまま頭蓋骨を破壊された翼獅子は即死し、地面に落下し始める。
:これは倒せたんじゃないか!
:よっしゃ!カエデちゃんが決めたぞ!
:すげえ威力だ…。
:頭がペチャンコやんけ…。
:モザイク設定にしててよかった…。
—ドシン!
翼獅子はアイテムをドロップしながら地面に落ち、カエデちゃんはその上に着地した。
:綺麗な着地!
:そんなことより、アイテムドロップしたってことは…。
:討伐成功や!
:うおおおおおお!
:長年突破できてなかった階層がついに…。
:すげええええ!
:結局ルーシーちゃんは、剣使わなかったな。
:ただ突破しただけじゃなくて、戦闘方法がこうやって資料に残るなんて。
:これで、他の探索者も突破の糸口がつかめるかも。
:エルフちゃん達のおかげで、ダンジョン攻略が一歩進んだな。
:何度も言ってるけど、翼獅子討伐は2回目なんだが…。
「は~。疲れました~。」
カエデは達成感と疲れからその場に横になった。
『よくやったわね。カエデ。』
ルーシーは、カエデのもとに歩いていき、労うように頭を撫でた。
「いつも私が撫でる側なのに…。でも、小さい子に撫でられるのもいいかもしれません。」
:ルーシーちゃんの撫で撫でいいな~。
:俺も撫でてほしい…。
:何故かルーシーちゃんから母性を感じる…。
:ばぶばぶ~。
『何言ってんのよ。私の方が年上なんだから。そんなこと言うなら、もう撫でてあげない!』
「え~!ごめんなさい!もっと撫でてください~!」
ルーシーが立ち上がり逃げていくのを追いかけようと、立ち上がろうとした瞬間に少しよろけてしまった。
「あっ。」
しかし、アイテムの鑑定を終えた大和がカエデの手を掴み、立ち上がる手助けをした。
「じゃれあうのはまた後にしておくんだな。それと、よくやったなカエデちゃん。」
「ありがとうございます!そういえば、鑑定はどうでしたか?」
「そうだな。鑑定結果なんだが、Lv3ポーションが2本とLv2ポーションが3本。そして、この角が…。」
:もしかして…。
:オリハルコンだああああ!
:でたああああ!
:まじで?
:角がオリハルコンで出来てたのか。
:なんでみんな分かったの?
:この前、配信越しに鑑定眼鏡使えるって言ってたじゃん。
『オリハルコン…。スキルオーブを使っても壊れないってことね。』
「凄いじゃないですか!もしかして、これって【はいしん】の効果で運が上がってるとか…。」
「その可能性は高いな。さっき気づいたんだが、視聴者数が今までで一番多くなっているんだ。」
「ほんとですね。」
『確かに数字が今までで一番多いわね。』
:今気づいたけど、SNSでトレンドにのってる!
:ホンマや!
:順位は高くないけど、遂に認知され始めたか。
:おめでとう!
:視聴者が多いってことは、それだけ大和ちゃんとルーシーちゃんは強化されてるってこと?
『たしかに、なんだか体が軽い気がするわね。それに、魔力の通りも良くなってる。』
「俺も、身体能力が増している気がするな。戦闘直後なのに、身体的な疲れを殆ど感じない。」
「私は疲れました…。」
「それじゃあ、解体が終わったら次の階層に行って、セーフエリアで休憩しよう。」
『そうね。私もそろそろお腹が空いてきたわ。』
:そういえば、次からは未到達エリアか…。
:どんな場所だろうか…。
:寂れた異世界風の村やで。
:なんで知ってんの?
:だから、前回のダンジョン配信で…(n回目)
:この配信終わったら、アーカイブ見てみよっと。
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現在俺たちは、51階層のセーフエリアに辿り着いていた。
「ふ~。ここのセーフエリアは他に誰も居なくて落ち着きますね。」
「そうだな。このあたりからは、テントを建てずに地面にシートを敷くだけで大丈夫だな。」
:本当に誰もいないな。
:テントが1つもないセーフエリアって、違和感が凄いな。
:独り占めできるじゃん!
『ふ~。リラックス出来るわね。それで、今日の料理は何にする?』
「はーい!私、トンカツを食べたいです!」
「トンカツか。それはいいな!」
『私もトンカツって東京で食べた料理よね!翼獅子なら凄く美味しくなりそうね!』
「そういえば、前回の辛口カレーがまだ残っているんだった。今日はカツカレーにしよう!」
:トンカツか…。じゅるり。
:カツカレーか。
:至高の料理やね。
:いいな~。
:うちも今日はカツカレーだ!
:でも、トンカツの材料はあるのか?
:材料って、油とかパン粉だっけ?
:そんな感じ。詳しい作り方は覚えてないけど。
:作り方といえば、料理ニキは居てるんだっけ?
:ここにいます!よければ、今回も手伝わせてください!
『あ、料理人さんが教えてくれるって!』
「そうか!それならよろしく頼む!」
:分かりました!それでは、ステーキサイズに肉を切って、筋に切り込みを入れてください。
:料理配信始まり!
:そういえば、筋って何所だっけ?
:肉の赤い部分と白い部分の境目にあります。切り込みを入れたら、肉を叩いて塩コショウを全体にまぶしてください。
—トントントン
「よし、次はどうすればいい?」
:次は、肉に薄力粉をつけて、かきまぜた生卵に満遍なくつけて、パン粉をしっかりつけてください。
「はい、卵の準備は出来てますよ!」
「ありがとう。それじゃあ、卵とパン粉につける作業はカエデちゃんに頼もう。それと、ルーシーの方はそろそろ準備は出来てるか?」
揚げ油の準備をしてくれているルーシーに声をかけた。
『準備万端よ!』
:パン粉に揚げ油まであるんか…。
:なんでそんなに準備がいいんだよ!
:もしかして、とんかつソースもあるんじゃ…。
「もちろんソースも用意しているぞ!」
—ドドン!
大和は、おかめソースを手にして【はいしん】カメラに見せた。
:おかめソース?
:それって、確かお好み焼きのソースじゃ…。
:トンカツソース代わりに使っても美味しいぞ。
:そうなんだ。
:っていうか、お好み焼きソースがあるってことは、お好み焼きの材料もあるんじゃ…。
:それでは、準備が出来たようなので、肉を油で揚げてください。
「了解です!それじゃ、いれていきますよ~。」
—ジュワアアアア
:いい音!
:俺も久しぶりに食べたくなってきた。
:そのまま、キツネ色になるまで揚げたら一度取り出して、油を切ってくだください。そのあともう一度揚げなおして完成です。
「了解です!」
『キツネ色になるまで…。そういえばキツネって何かしら?』
「そろそろ取り出しても良いんじゃないか?キツネはこんな感じの色の動物だな。」
『へ~。茶色いのね。』
:ルーシーちゃんキツネ知らんのか…?
:珍しいな。
:どこか別の国の子なんやろか。
:いや、キツネは日本だけの動物じゃないから、あんまり国は関係ないと思うが。
:スマホで調べて見せてあげればいいんじゃね?
:でも、ダンジョンの中だと電波届かないぞ。
:そうだった…。配信が見れてるから忘れてた。
「それじゃあ、後で地面に描いてみようか?実は、結構絵には自信があるんだ!」
『え!?』
「そういえば、大和さんって字を書くのが上手いですよね!達筆というか!」(※14話より)
「そうだろう!これでも学生時代は書道をやっていたんだ!」
『え、あ、あの…。』
そのときルーシーは、以前大和が描いた、あまりにも下手くそな翼獅子の絵を思い出していた。
(※8話より)
しかし、大和自身は自分の絵に自信があるようだが、もし自分の絵が下手だと指摘されると傷ついてしまうのではないかとルーシーは考え、話題を変えようと、大きい声でこういった。
『そろそろ2度揚げした方が良いんじゃないかしら!キツネの絵は、地上に帰ったらスマホで調べて頂戴!』
「やけに声が大きいな?俺の絵を見せたかったんだが、お腹が空いたならしょうがないか…。」
『そ、そうよ!早く食べましょう!』
「よし、カレーも温まってきた頃合いだし、トンカツも仕上げに入ろう!」
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—ドン!
「カツカレーの完成だ!」
:遂に完成だ!
:迫力のあるトンカツだな。
:美味そ~。
:そろそろ、俺もご飯欲しくなってきたな。
:出前頼もうかな…。
:お腹空いてきた~。
『いい匂い!もう食べていいかしら!』
「もちろん!それじゃあ、みんなで…」
『「「いただきます!」」』
:いただきまーす!
:俺も食べたいよ…。
:飯テロ許すまじ!
:俺もカツカレー食べたいけど、年を取ると胃が…。
:↑俺も同じく。
:ハイカロリー最高!
:探索者はモンスター食って魔力を回復するから、実質ゼロカロリー。
:マジで?
:それ嘘だぞ!
:騙された…。
「う~ん。美味しいです!」
「この翼獅子のトンカツと辛口カレーの相性が最高だな!」
「そうですね!それに、苦労して倒したモンスターですから、美味しさ倍増です!」
「はっはっはっ。そうだな。ルーシーはどうだ?さっきから無口だが…。」
—ぺろぺろぺろ
隣を見ると、ルーシーの皿に大盛に盛り付けられていたカレーは既に跡形もなく、皿に残ったルーは舐めとられたのか、洗った後の様に綺麗になっていた。
—ピカ
:一瞬でカレーが無くなったように見えたんだが…。
:俺も瞬きした次の瞬間になくなったような…。
:相当美味しかったんだろうなw
:スローで見たら一瞬で食べてるところが見えたぞw
:そういえば、この配信ってスロー再生機能があるんだっけ。
『美味しかったわ。お代わりしてもいいかしら?』
「は、はい…。まだルーとトンカツは残ってますよ。ねえ、大和さん。」
「あ、ああ。美味しそうで何よりだ。」
2人は固まって、ルーシーがお代わりするさまを見つめていた。
「そ、そうだ。俺のお代わりも残しておいてくれよ。それと、これからのことを話し合わないか?」
『これからのこと?』
ルーシーは、山盛りのカレーと共に戻ってきた。
:大和ちゃんも食いしん坊だなw
:このエルフいつもお代わりしてんなw
:これからのことか。
:このまま進むんかな?
:それとも魔法金属ゲットしたから、一度地上に戻るか…。
:地上ならミスリルとオリハルコンの武器作れるもんな。
「そうだ。ちょうどコメント欄でも言われているが、一度地上に戻らないか?俺とカエデちゃんの2人分の武器が作れるだけの素材を手に入れることが出来たし、ポーションも売ってもいいくらいに手に入れられたから、武器の製造費は知らないが、払えるだけの額は手に入ると思うんだ。」
「そうですね。ポーションを売れば武器も作れますし、オリハルコン製の武器に付けるためのスキルオーブは安く手に入れられますし、いいんじゃないですか!」
『私はこの剣だけで十分だから、異論は無いわ。』
:スキルオーブって安いんだ。
:まあ、凄い効果だけど、使い道が限られてるからな。
:今のところ、オリハルコン以外に付与すると、数回使用しただけで付与された武器とかが壊れてしまうからな。
「それじゃあ、一度地上に戻って武器を新しい手に入れよう。それじゃあ、配信はここまでで終わろうと思う。それじゃあ。」
:もう終わりか…。
:次の配信はしばらく後かな。
:戻る途中の配信はしないの?
:あ、配信切れた。
:次は更に先まで進むのかな?
:待ちきれないな。
配信が切れた後、大和は2人にこれからのことを話し始めた。
「それじゃあ、今日はここで1泊してから戻ることにしよう。それと、強い武器を手に入れられれば、あの場所よりも先に進んでも余裕を持てると思うんだ。」
「あの場所って…。」
『私とヤマトが出会った場所よね。』
「そうだ。元々は今回の探索でそこまで行くつもりだったんだが、その先にはまだ進んだことが無いから、念のためにいい武器を作っておきたくてな。」
「安全に探索するためにもいい考えだと思います!」
「それじゃあ、今日は早く寝て明日に備えよう!」
「了解です!」
『了解よ。そろそろ眠くなってきたわ…。』
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