第43話 【はいしん】翼獅子1(特殊個体)
ミノタウロスを討伐後、俺は解体を行っていた。
(そういえば、ミスリルと言えばソロでやってた頃にドロップしてたよなぁ…。あの頃は使い方が分からなくて、アイテムボックスのスペースの関係で泣く泣く食材を優先したけど、地上に出れば武器に出来ると知っていれば…。)
しかし、今からそんな事を言っても仕方ないと考えながら、黙々と解体を進めていった。
そう言えば、ミノタウロスからドロップした〈アステリオスの斧〉は、【スタミナ】というスキル持ちの武器だった。
あの時、長距離から常に全速力で突進してきたのも【スタミナ】のお陰で疲れ知らずで動き続けられるから出来た芸当だろう。
因みにコメント欄から教わったのだが、アステリオスというのは、ミノタウロスの本名で星を意味するらしい。
確かに斧の持ち手に星のマークがついていて、意外と可愛らしい武器を持っているなと思った。
という風に、どうでもいいことを考えていると解体が完了し、解体のために発動していた《ツボ可視化》を解いた。
紅く光った眼が金色に戻り、リラックスした大和は辺りを警戒してくれていた2人に呼び掛ける。
「みんな!解体が終わったぞ!」
:お疲れ!
:なかなかの包丁捌きだったな。
:こんなに解体が綺麗な人初めて見た。
:そろそろご飯かな?
:それか、次のセーフエリアに向けて進むか…。
:ついに翼獅子か…。
『ふ~。やっと終わったのね。』
「お疲れ様です。解体中はマミーが1体現れただけでした。」
「ありがとう。カエデちゃん。」
「どういたしまして。」
『この後はどうするの?一度セーフティエリアまで戻る?それとも、このまま50層のエリアボスがいる場所まで行く?』
「そうだな。このまま50層まで行こうと考えている。視聴者数が今までで一番多くなってきているから、この状態で翼獅子と戦えば【はいしん】のステータスup効果が本当にあるのかどうか判断しやすいと思うんだ。それに、2人の状態を見てもこのまま進んでも問題ないと思うんだが…。」
「そうですね。私はまだまだ大丈夫です!」
『私も。』
「そうか。それじゃあ、一息ついてから50層目指して進もう!」
:よっしゃ!このまま見続けるで!
:今日中に翼獅子戦を見られそうだな。
:そういえば、今45層なんだっけ?速すぎないか?
:たしかに、簡単そうにモンスターを倒すから意識してなかったけど、日本ダンジョンの最高到達地点が50層だろ?
:45年経って、やっとたどり着いたのに、エルフちゃん達はこんな短期間で…。
:いや、45年で50層というのは、1つのパーティーが50層にたどり着くのにそれだけ掛かるという意味ではないからな。
:それでも、ルーシーちゃん達の攻略速度が速いのには変わりないけどな。
:それな。
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一息ついてから45層を後にした俺たちは、遂に50層の目の前に辿り着いていた。
「ついに翼獅子ですか…。私は初めて戦うので緊張します…。」
『そういえば、あの時はヤマトと私の2人で倒したんだっけ。』
「そうだな。だから、カエデちゃんも安心してくれ。」
「了解です。」
:俺まで緊張してきた…。
:遂にここまで来たか…。
:同時視聴者数かなり増えてきたな…。
:ってことは、視聴者数の恩恵でステータスも上がってる?
:それって、【はいしん】の能力の話だっけ?
「そうだな。確かに力が強くなってきている気がするな。ルーシーはどうだ?」
『うーん、そうね…。えい!』
—《ファイヤーボール》
ルーシーは、目の前に拳ほどの大きさのファイヤーボールを3個出現させ、くるくると回し始めた。
『そうね。魔法の操作性と効率が上がっている気がするわ。それに、もしかしたら魔法の威力も上がっているかも…。』
「やっぱりそうか。」
:おお!魔法を自在に操ってる…。
:すげえ。
:魔法ってこんなに綺麗なんだ。
:魔法自体初めて見た…。
:↑探索者以外の視聴者も増え始めてるな!
:このままいけば、SNSでもトレンドに入って来るかもしれんな。
:SNSでも盛り上がってんの?
:たしか、カエデちゃんがダンジョン突入前に、SNSに投稿してたから。
「それじゃあ、2人とも準備は良いか?」
『ええ。大丈夫よ。』
「私も準備万端です!」
「それじゃあ、50層に突入だ!」
:いくぞ!
:よっしゃ、いったれ!
:ワクワク。
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50層に侵入し、しばらく進むと前方に翼獅子を発見した。
それと同時に、ヤツも俺たちの存在に気づいたようだ。
:あれじゃね?
:なんか、こっちに気づいたっぽいぞ?
:こっちのほう見てるな。
:でっけー。グリフォンの何倍あるんだろ?
:うん?なんだか、俺たちが戦った個体と違うような…。
「あれが翼獅子ですか。確かにグリフォンより大きいですね。それに、翼の形状がドラゴンっぽい感じなんですね…。」
「いや、前回戦った個体は鳥類のような翼を持っていたはずだ。それに、大きさも1.5倍ほど大きく見える…。」
『ヤマトの言う通り大きいわね。それに、角が生えてる…。』
ルーシーの言う通り、翼獅子の頭には渦巻き状の羊のような角が生えていた。
:ってことは、ユニークモンスター的な感じ?
:特殊個体を引いてしまったってこと?
:えええええ!普通の翼獅子でさえ強いって言うのに…。
:っていうか、【はいしん】で運が良くなるかもって言ってたけど、この様子だと…。
:でも、魔力と身体能力は上がってるらしいぞ。
「特殊個体か…。【はいしん】の能力を判断するのに丁度いい。」
『そうね。私もこの剣の力を試させて貰おうかしら…。』
—カチャッ
ルーシーはアイテムボックスから鞘付きの剣を取り出し、背負う形で装備した。
この剣は、ルーシーが水晶の中に閉じ込められていた時に、体を貫いていた剣だった。
:え、ルーシーちゃんも剣を使うんだ?
:魔剣とかかな?
:ルーシーちゃん本当は魔剣士なのか?
:ちょっと、ルーシーちゃんには大きく見えるな…。
:それがまた可愛いんだけどなw
「それじゃあ、俺は様子を伺いながら遊撃する!ルーシーはカエデちゃんと一緒に行動してくれ!」
『了解よ!』
—タッタッタッ
俺は、《ツボ可視化》を使いながら敵に向かって走り出した。
:お、眼が紅くなったな。
:あ~、中二心が擽られる~。
:はやっ!?
:いつもより少し速度が速いな。
俺は、翼獅子の注意を分散するために、相手の視界の端に映るように走りながら近づいていく。
これで、相手は俺がいる方向と、ルーシーとカエデちゃんがいる方向の2か所に警戒しなければならない。
—グルルルル
まずは、近い方の俺に対して遠距離から闇魔法を撃ってきた。
「っ!?闇属性かよ!前回とは違う属性だな。」
:モンスターで闇属性って初めて見たかも。
:探索者では使うやついるけど…。
:マミーの特殊個体とかが使ってくるで。
:《ダークボール》は相手を引き寄せる効果があるから気を付けて!
コメント欄の言う通り、闇属性魔法の《ダークボール》は、相手を引き寄せる効果があり、紙一重で避けようとすると引き寄せられて直撃してしまうので注意が必要だ。
俺も一度だけ、油断して被弾した経験があったので余裕を持って避けることが出来た。
(しかし、闇属性でこの威力ならカエデちゃんのガードでも耐えられそうだ。)
「ルーシー!デッカイのを頼む!」
『了解よ!』
俺は、注意を惹くために相手の顔目掛けて攻撃するが、角でガードされてしまった。
—《ウォーターレーザー》!
そして、ルーシーの声を聞き、すぐさま翼獅子と距離を取る。
—グルアアアア!
:これって水龍が使ってた魔法やんけ!
:水属性も使えるんだな。
:っていうか、まだ剣は使わないのか。
:でも、めちゃくちゃ威力高くね?
俺に注意を向けすぎた翼獅子は、ルーシーの魔法を避けきれず直撃してしまう。
急所は外れてしまったが、ウォーターレーザーは翼獅子の右手を貫通していた。
しかし。
:うおおお!貫通したぞ!
:すげええ!
:あれ、でも穴が塞がり始めてないか?
:ほんとだ!
:程度の差はあるけど、基本的にモンスターは治癒能力が高い傾向にあるぞ。
:でも、治癒する代わりに魔力が減ってくけどな。
そう、モンスターによっては急所を狙うか即死させなければ、瞬時に治癒してしまう個体もいる。
—バサッバサッバサッ
ルーシーと俺の戦闘能力を警戒した翼獅子は、俺ルーシー達の両方を視界に収めるために、空を飛び始めた。
「ルーシー!頼む!」
『了解よ!逃がさないわ!』
—《サンダーランス》!
まだ翼獅子が自身の周りを強風でガードしていない隙に、ルーシーは速度の速い魔法を選択した。
:いつもより速い!
:っていうか、いつもと違って投げてるやん。
:ルーシーちゃんの投球フォームいいな。
:野球をやってみないか!
:って、そんなことより、翼獅子も闇魔法撃ってくるぞ!
ルーシーの魔法を相殺するつもりなのか、前回のように風のガードを出すことは無く、翼獅子も《ダークキャノン》を放ってきた。
しかし、
:あれ?このままだと魔法がすれ違うんじゃね?
:あ、すれちが…、あれ?
:やばい!?
:《ダークキャノン》にルーシーちゃんの魔法が吸い寄せられてる!?
:こんなのアリ!?
:《ダークキャノン》と一緒に《サンダーランス》もルーシーちゃん目掛けて飛んでくるぞ!?
なんと、2つの魔法がルーシーとカエデちゃん目掛けて飛んできたのだ。
『カエデ!』
「分かってますよ!」
カエデは片手剣でガードを試みる。
—《拡大》!
魔法をガードするため6m程まで拡大し、何とか防ぎきることが出来た。
—ドシン
あまりの衝撃で、周辺に煙が舞った。
「何とか防ぎきれましたね。」
『ありがとう、助かったわ。』
:ふ~。よかった。
:ヒヤヒヤした~。
:凄い防御力!
:言うの忘れてた。闇属性魔法の引き寄せる効果は物質よりも魔法の方が引き寄せられ易いんだった。
:↑そんな大事なことは、もっと早く言ってくれよ!
:言い忘れないでくれw
:要約すると、物理攻撃なら闇魔法の効果を受けにくいという事だな。
:要約ニキたすかる!
:↑それって要約とは言わない気がするんだが…。
:細かいことはいいんだよ!
:って言う事は、カエデちゃんのモーニングスターなら…。
「当たるかもしれないってことですね。」
:そう言う事!
:俺が言いたかったのに…。
:でも、あんなに遠くまで届くか?
翼獅子を見ると、魔法をガードしている隙に高くまで飛び上がっていた。
「たしかに、私のモーニングスターだと届かないかもしれません…。そういえば、大和さんはどうやって倒したんですか?」
「そうだな。俺の場合は…。そうだな!今回はカエデちゃんに任せよう!」
「ええ!?」
「安心してくれ。俺のスキルでカエデちゃんを翼獅子目掛けて投げつける。」
「投げつける?あ、あの魔力の手で私を投げ飛ばすってことですか…。」
カエデは、あまり気乗りしないが自分がやるしかないと考え、覚悟を決めた。
:ああ、大和ちゃんの魔力の腕か。
:そんなこと出来るん?
:眼が紅くなって魔力の腕も出せる…。何て特殊スキルなんだ?
:俺も分からん…。
「失敗したときは、俺も飛んでいくから安心してくれ。」
「それって、大和さん1人でも出来るってことじゃないですか!」
:たしかに。
:いいツッコミだ!
:反応が速い!
「う~ん…。あ、いいことを思いつきました!私は秘策があるので、自分で飛んでいきます!だから、一緒に攻撃しましょう!」
『そんなのどうやって…。』
「そろそろ砂ぼこりが晴れるぞ!俺が先鋒を務める!カエデちゃんは後から頼む!」
「了解です!」
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