第38話 【はいしん】スキルの真価/ワニの唐揚げ
「それじゃあ、結論から話そう。俺とルーシーのスキル【はいしん】の能力についての事なんだが…。」
『うん…。』
「おそらく、この能力は視聴者数などに応じて、使用者の総合的なステータスを上げることが出来る能力なんじゃないかと思っているんだ。ルーシーは心当たりはないか?魔法の威力が思ったより強くなっていたりとか。ゴブリンキング戦の時とか…。」
『魔法の威力か…。そういえば、ゴブリンパーティーだけを倒すはずだったのにゴブリンキングまで倒してしまったわよね!たしかに想定よりも威力が高くなっていたわ!でも、【はいしん】にそんな力があったなんて…。』
ルーシーは、嬉しそうでありながらも悲しそうにも見える表情で、そう言った。
…何故か、俺はこの時のルーシーの表情が印象に残っている。先に自分が持っていた能力について知らなかったことを悔しいと感じているだけではない。それ以外の何かがあるような気がしたが、俺は何も聞かなかった…。
「それが本当なら、大和さんも強くなってるってことですか?」
「ああ。俺の場合は、さっきの水龍戦で確信を得たんだ。そのぐらいの時間から視聴者が増えてきたんだが、少し身体能力が上がっているのに気づいたんだ。それと、これは憶測でしかないが、俺たちの運も上がっている気がするんだ。」
「運ですか…?あ、もしかしてリザードマンとクロコダイル・ファイターのドロップが良かったのも…。」
「まあ、これに関しては、視聴者が一番増えていた水龍からは、普通のアイテムがドロップしたから何とも言えないんだが、運がいいというだけだから絶対にいいものがドロップするという事はないと考えている。」
「それじゃあ、これからどんどん配信していって、視聴者さんを増やしていけば、大和さんとルーシーちゃんは益々強くなって、レアアイテムも手に入れ易くなるんですね!という事で、今見ている皆さんも、これからもご視聴よろしくお願いします!」
「まあ、まだ確定したわけではないんだけどな…。でも、視聴者のみんなは、これからも見てくれると嬉しい。視聴者数が増えるほどパワーupを実感し易いはずだ。まあ、思い違いだったらガッカリなんだが…。」
:もちろん配信見続けるで!
:俺も視聴するだけで力になれるなら!
:まだまだ視聴者数は少ないから伸びしろあるぞ…。
:そういえば、大和ちゃんとルーシーちゃんは英語しゃべってたから、海外の視聴者ももっと増やせるんじゃね?
:うおー!おれも配信を見て一緒に戦うぞ!
:↑いや、お前はゴロゴロしながらスマホでDチューブ見てるだけだろw
:でも、それだけで大和ちゃん達の力になれるかもしれないなら、いいんじゃないか?
「ありがとう、みんな。それじゃあ、俺の話はここまでにして、そろそろワニの肉の漬け具合も確認しないか?」
:あ、忘れてた!そろそろ30分経ちます。
:あと1分だな。
:ん?やっぱり大和ちゃんさっきから一人称が俺になってないか?
:確かに!
:違和感の正体はそれだったのか!
:でも、美人でクール系だから似合ってるんだよな…。
:それな。素は俺っ娘なのかな?
:俺っ娘、長身、銀髪、クール系、刀使いダークエルフか…。
:いいな…。
:属性多すぎで渋滞してます~。
:確かに違和感はあったけど、口調とか思い切りの良さ的に、俺の方が似合ってる気がする。
コメントを見たカエデは、エルフの耳が敏感だったことを忘れ、大和の耳に口を近づけ小声で話しかけた。
「うひゃ!」
突然耳にカエデの息が当たった大和は、思わず変な声を出してしまった。
:え、大和ちゃんってそんな声も出せるんか…。
:かわいいw
:やっぱりエルフは耳が弱点なんやな。
:カエデちゃんが攻めって…こと?
:てえてえ。
「あ、大和さん、すみません!ちょっと話したいことがあるんで、ミュートにしてもらってもいいですか?」
「ああ。分かった…。ミュートにするぞ…。」
:俺も聞きたい~。
:あ、音だけ聞こえなくなった。
「それで、カエデちゃん。耳に息を吹きかけてまで話したいことって何なんだ?」
「すみません…。でも、今はそれよりも一人称についてですよ!」
「そういえば、思わず素がでてしまったな。」
「でも、幸いコメント欄では好評なので、俺っ娘としてやっていきませんか?もしかしたら、その方がウケて視聴者数を増やせるかもしれませんし…。」
「そうだな。視聴者が増えるのは俺としてもうれしいし、一人称も俺の方がやっぱり楽だな。」
「そうですね。最初のころは女性が俺って言うのは違和感があると思ったんですけど、その方が似合ってるかもしれません。」
『そうね。ヤマトはその方が合ってると思うわ。』
「ルーシーもそう思うか。それじゃ、そろそろミュートを解除してもいいか?」
「はい、大丈夫です。」
:お、ミュート解除された。
:何話してたん?
「えーっと、大和さんに関してですが、見ての通り実は俺っ娘なんです。でも、その方が似合ってて、視聴者の皆さんもうれしいですよね!」
:嬉しいですよねってw
:説明が雑すぎるw
:誰もが俺っ娘好きだと思うなよ。まあ、俺は好きなんですけどね…。
:大和ちゃんなら似合ってるし良いと思う!
:また、この配信の楽しみが増えちまったよ…。
「それじゃ、この話は終わりにして、クロコダイル・ファイターの唐揚げに取り掛かりましょう!」
:お料理配信再開やな!
:ワニの唐揚げか…。モンスターだから美味いんだろうけど。
:そういえば料理人ニキまだいてる?
:見てます!それでは、まず鍋に油を入れて火をかけてください。油を熱している間に、肉の汁気を取ってから片栗粉をまぶしてください!
「お、料理人さんありがとう。それじゃあ、ルーシーは火の準備をしてくれ。カエデちゃんは一緒に片栗粉をまぶしていこう。」
『魔動コンロなら任せなさい!』「分かりました!」
:やっぱり魔動コンロいいな。
:モンスターさえ倒せばエネルギー補給の元が手に入るもんな。
:唐揚げ楽しみ~。
:そろそろお腹空いてきた…。
『鍋の方は良い感じになってきたわよ!』
「ありがとう。それじゃあ、カエデちゃんは準備できた肉から上げ始めてくれ。」
「了解です!」
—ジュワァァ!
『へ~。唐揚げって、こうやって作るんだ。こんなに油をたっぷり使う料理って初めて見たわ。』
「ふふ。ルーシーちゃんがこの前食べたトンカツも油をたっぷり使って調理するんですよ!」
『そうなんだ。こんな調理方法誰が思いついたのかしら。不思議ね~。』
:なんか、お母さんに料理を教えてもらう子供みたいw
:ほほえましいなw
:唐揚げ作るところ見たことないんやな。
『も~!誰が子供よ!』
:それでは、そろそろいい感じに揚がってきたので、1度油から出しましょう。
:せやな。今は料理に集中や!
:うん!美味しそうな唐揚げやな!
『は~。そうやってはぐらかす…。』
ルーシーはそう言うと、プイっとそっぽをむいた。
:ごめんやで、ルーシーちゃん。
:それでは、2度揚げをしていきましょう。
:プイっとしたルーシーちゃんも可愛い…。
「2度揚げをすると美味しいって聞いたことあります!それじゃあ、もう1度揚げてっと…。」
—ジュワァァァ!
:いい音だね。
:うまそう。
:ワニのはずなのに美味しそうに見えてきた!
:そろそろいい色になってきたんじゃない?
:はい。そろそろ取り出しても大丈夫です!
「分かりました!それじゃあ、取り出していきますね!」
『おおお!美味しそうじゃない!』
「うん!なかなか期待できそうだな!それじゃあ、裏で用意しておいたお米と一緒にいただくとしよう!ちなみにダンジョン産の野菜も用意しておいたからな!」
「ありがとうございます!やっぱり唐揚げはご飯と一緒に食べたいですよね!」
『わーい!』
:準備がいいな。
:ああああ。俺も女の子の手料理食べたい~!
:俺もエルフちゃんが作った料理食べたいわ…。
:普通にうまそうだな…。
「それじゃあ、いただくとしよう!」
「いただきます!」『いただきます!』
—もぐもぐもぐ
3人はお腹が空いていたのか、一斉に食べ始めた。
『美味し~!』
「ほんとだな。なんというか、凄くジューシーで味も良い。いくらでも食べられそうだ。」
「ほんとにジューシーですね!それに、普通の唐揚げと違ってモンスターの肉だから魔力のお陰で最高に美味しいです!こんなに美味しい唐揚げは食べたことありませんよ!」
:美味しく出来上がってよかったです!タレにつけ込んだことによって、水分が中に残ってジューシーな唐揚げに仕上がってます!
:さすが元料理人志望!
:モンスターってそんなに美味しいんだ…。
:モンスター食べるために探索者になりたくなってきた…。
『お代わりしてもいいかしら!』
「いいぞ。俺もお代わりしようと思う!」
「ルーシーちゃんだけじゃなくて、大和さんもですか!」
:大和ちゃんも食いしん坊なんだなw
:2人とも結構食べるんだな。
:そりゃあ、これだけ美味そうなら仕方ないよ…。
:エルフって野菜ばっかり食べてるイメージだったんだけどな…。
「この唐揚げすごく美味しいな。ご飯もお代わりしたくなってきたな。」
大和は、なんだか最近お腹が減りやすくなってきたな…、と思いながら夕食の時間を楽しんだのであった。
「おもしろい!」「つづきが読みたい!」と思ったら
下の☆☆☆☆☆から作品への応援お願いいたします!
また、ブックマークもしていただけると励みになりますので、よろしくお願いします!




