第36話 【はいしん】クロコダイル・ファイター
本来は25層に出現するはずのクロコダイル・ファイター。
しかし、理由は分からないが、俺たちのいる23層にまでこいつはやってきた。
「それじゃあ、3人でいくぞ!」
「はい!」『了解!』
探索者はよっぽどの突出した能力が無い限りパーティーでモンスターと戦闘する。
その理由は単純に、人数を多くするほど総合的な攻撃力を上げることが出来るからだ。
また、それだけでなく、囮役や防御担当、攻撃担当など、個々に役割を持たせることによって効率的かつ安全な戦闘を行うことが出来き、ダンジョンの探索能力を上げることが出来る。
そして、モンスターは人間の言葉を理解していないので、戦闘中にバレることなく仲間に支持を出すこともでき、連携を取りやすいという事もパーティーで戦闘する事の利点になっている。
「ルーシー!けん制を頼む!」
『オッケーよ!』
ルーシーは、すぐさま魔力を流し込み、20mほど先に迫って来ていた相手に、普段よりも小さい雷の魔法を放った。
—《サンダースピア》!
:いつもよりは弱い目。
:いつも言ってるけど、発動までが速すぎるんよ。
:この配信に慣れてしまってるから分かりにくいけど、これが普通のサイズだから!
:このサンダースピアは全然小さくないぞ!
—グアアアア!
ルーシーの魔法は、クロコダイル・ファイターに命中し、多少のダメージを与えることには成功したが、痛みに怒りを覚え、こちらに向かって走り始めた。
:怒ったんじゃね?
:走って来るぞ!
:あんな巨体に体当たりされたら、ひとたまりもないぞ…。
近くまでクロコダイル・ファイターが迫ってきている。
:おいおい、かなり近くまで来てるって!
:早く避けないと!
:いや、カエデちゃんなら大丈夫なはず…。
わざと相手を引き寄せて、ルーシーと俺は、片手剣の腹を相手に向けて構えているカエデちゃんの後ろに隠れた。
—《拡大》!
—ドスン!
クロコダイル・ファイターが、俺達目掛けて巨大なハンマーを振り下ろした。
しかし、カエデちゃんの6mほどまでに巨大化した片手剣によるガードで、いともたやすく防がれてしまった。
:おお、ガードとしても使えるんだ。
:第0回目のダンジョン配信で多用していたな。
:片手剣がこんなデカくなるんか…。
:そりゃ、ほとんどの敵の攻撃は防げるやろな。
デカくなった片手剣のせいで、俺たちのことが見えなくなっているであろと考え、俺はクロコダイル・ファイターの上に飛び上がった。
—スパッ!
目線が下を向いているうちに、俺は両目を切りつけて視界を奪い、そのまま肩の上に飛び移った。
—ウガアアアア!
「視界を奪ったぞ!」
「ナイスです!」
《拡大》解除!
大和の声を聴いたカエデは、片手剣の大きさを元に戻した。
—ドシン!
すると、支えが無くなったハンマーが地面に落ち、そのままクロコダイル・ファイターはバランスを崩し前のめりになり、顔から地面に転び落ち始めた。
「下から胴体を狙います!」
咄嗟にカエデがクロコダイル・ファイターの上半身が倒れ落ちてくるであろう地点に回り込み、下から剣を構えた。
「頼んだ!俺は首を狙う!」
俺は、敵の肩の上から飛び上がり、首を撥ね飛ばす。
—ズバッ!
:大和ちゃんナイス!
:また首狙いだよ…。
:このダークエルフ殺意高いなw
:ん?
:なんか口調に違和感が…。
倒れそうになるのを持ちこたえようとしていたクロコダイル・ファイターだったが、大和による一撃でカエデ目掛けて転倒する。
「もらった!」
《拡大》!
—グサ!
そのままカエデがスキルを使い、3mほどの大きさになった片手剣がクロコダイル・ファイターに突き刺さる。
カエデの攻撃が止めとなり、クロコダイル・ファイターはもう動くことは無かった。
:あんな強そうなやつを3人で…。
:ちゃんとしたパーティー戦って初めて見たけど、こんな感じなのか。
:戦闘中息が止まってたわ。
:確かに、ダンジョンの戦闘ってちゃんとした動画自体少ないからな。
:ダンジョン配信なんてこのチャンネルでしか見れないから、探索者でもなければ一生拝むことも無いかもな。
:まだ視聴者少ないけど、これはすごいことになりそうやで。
:あ、アイテムドロップしたんじゃね?
:ホントだ。
「2人ともお疲れ!」
「いい感じに連携できましたね!」
『私はちょこっと魔法を使っただけで、あんまり役に立ってないんだけど…。』
「そんなことは無いさ。あの魔法のお陰でヤツは冷静さを失って、俺たちは戦いやすくなったんだ。魔法攻撃はダメージを与える以外の役割もある。」
『そうだったわね。私の魔法も役に立ててよかったわ。』
「そうですよ!そういえば、アイテムがドロップしたみたいですよ。」
カエデに言われて戦闘跡の方を見ると、ポーションの小瓶が落ちていた。
「本当だな。え~っと、鑑定眼鏡をかけて~っと。」
:眼鏡タイムきました!
:鑑定のお時間です。
:なんだあれ?
:ポーションだな。
:ずっと眼鏡かけててほしい。
:眼鏡っ娘好きが現れ始めたな。
:え!?これって…。
:↑どうしたん?
:いや、画面越しに鑑定してみたんだけど…。
:鑑定も画面越しで出来るのか!?
:おれも出来た!
:それじゃあ、エルフちゃん達にも鑑定できるってこと!?
:いや、この配信内の人物には鑑定は通じなかった。
「これは…。Lv3ポーションだな。」
『こんな浅い階層でLv3はラッキーね!』
「このあたりの階層ならLv1かLv2ポーションがドロップするのが普通なんですけどね。」
:おー!おめでとう!
:これって結構高く売れるんだよね?
:そうだな。腕くらいなら再生するはずだから、いい値段になる。
:かなり運がいいな。
:今のところ見つかってる最高レベルは4だけど、3でもかなり貴重だからな…。
:エリア3~4はカエデちゃんの言う通り、普通はLv1~Lv2がドロップするはず。
:エリア3~4って、21階層~40階層までだっけ?
:そうやで。
「このポーションは売らずに持っておきたいんだが、2人はそれでも大丈夫か?」
「もちろん大丈夫です!」
『高く売れるみたいだけど、私たちの目標はダンジョンの最深部だから持っておきたいわ!』
:やっぱり売らずにとっておくのか…。
:まあ、攻略を目指すなら売れないよな。
:おお!ダンジョンの完全攻略目指してるんか!
:でも、ダンジョンが出来て40年くらいで、まだ50階層までしか到達してないんだぞ?
:いや、第0回配信では、大和ちゃんとルーシーちゃんだけで60層超えてたらしいぞ?
:↑え、あのアーカイブ長すぎてみてなかったけど、そんなところまで行ってたのか…。
:俺も、ギルド公式配信から来たから見てなかった…。
:配信の序盤から60層以上のあたりから始まるから見てこい!
:それに、エルフだから寿命も長いはず。だからいつかは攻略できるんじゃないか…。
:探索者は一般人よりも老化が遅いらしいけど、エルフなら寿命のゴリ押しでいつか…。
:俺が生きてるうちにダンジョン攻略されるところ見たいけどな…。
コメントを見ながら、視聴者が増えてきたなと感じていた。
それと同時に、「人間からエルフになった俺の寿命は果たしてどうなるのだろうか」と、なんとな~く思いながら、「もし長生きできるなら嬉しいし、攻略にも有利になるのならいいかな~」とぼんやり考えていた。
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